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末っ子転生王子のもふもふ精霊無双〜厄介払いで送られた辺境領で精霊たちを撫で回していたらみんな神級になっていた〜  作者: 戸津 秋太
三章

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第51話 要衝

「フィーニス帝国は、この中央大陸で最も隆盛を誇る大国です。『帝国に逆らうと国がなくなる』――というのは、戦乱の時代にある小国の王が遺した言葉でございます」


 翌日。今日は一週間に一度の、お休みの日だ。

 馬車で森林へ向けて移動している間、サイラスさんは昨日の話の続きをしてくれる。


「このニール公領も、帝国との間に走る山脈がなければ帝国領になっていただろうと言われております。そんな帝国の強さの理由は大きく二つ。一つが帝国の守護精霊です」

「せいれい!」


 思わず席を立ちそうになる。

 僕の反応を予想していたように、サイラスさんは苦笑いを浮かべた。


「以前も申し上げたように、守護精霊は契約者の前以外では滅多に姿を現しません。そのためどのような姿をしているかは定かではございませんが、ただ一つ、はっきりしていることがございます。それは帝国の守護精霊が二柱いるということです」

「ふたはしら……つまり、もふもふがふたり?」

「もふもふかどうかまでは……」


 そりゃそっか。


 そういえば、オブライエン王国にかつて存在した守護精霊は火を司り、国中に作物の生育を促進する加護を与えていたらしい。

 守護精霊が去ってからは各地で作物の生産量が減って、貿易や自給に影響がでたとか。


 一人だけでもすごい守護精霊が二人もいたら、確かに強い国になるだろう。

 いいなぁ……もし二人とももふもふだったらもふもふサンドイッチじゃないかぁ……。

 帝国のまだ見ぬ皇帝さんが羨ましい……。


「そしてもう一つの理由が、帝国の進んだ魔道具技術です。魔道具については、お話しいたしましたか?」

「うん、まえにほんでよんだよ。このばしゃもまどうぐなんでしょ?」

「仰るとおりです」


 魔道具は、魔術としての能力を宿した道具のこと。

 細かいことはまだ勉強していないけど、原理としては魔術と同じ。

 魔術の発動に必要な媒介として、魔法陣のような文字図形を魔鉱石に刻み込み、魔力を注ぐだけで特定の現象を引き起こせるようになっている。


 この馬車の揺れが少ないのも、車体にそうした魔道具が取り付けられ、御者が魔力を注いでいるんだ。

 ちなみにかなり高いそうで、一般の人間が乗り回すようなものではないらしい。


「帝国の優れた魔道具を備えた兵団は精強で、並の兵力では対抗できないのです。そして件(くだん)のテルミヌス伯爵は、かつての戦争で多大な戦果をあげた魔道具を作り出し、成り上がった家系。現当主は魔術的才能にも恵まれ、数年前に上位精霊との契約を為したのです」

「そ、それで、そのせいれいさんは!?」

「塔に上がった報告書には、土の上級精霊と。容貌については報告が上がっておりませんでしたが、その精霊が為したであろう精霊魔法の報告は――って、シリル王子?」

「……なんだ、わからないのかぁ」


 がっかりだ。

 どんなもふもふさんか、サイラスさんは知っていると思ったのに。


 ……いや、待てよ。


「でもこんどのしゅくえんでそのひとがきたら、せいれいさんにもあえる?」

「個人契約を為した精霊は、基本的に契約者から離れることはありませんので、そうなるかと。……ですが、帝国の方が王国のパーティーに出席するとは思えません」


 そういえばそんなことを言っていた。

 うーん、こうなったら僕の方から会いに行くしかないかな。


「……恐れながらシリル王子。まさか、会いに行こうなどと、お考えではありませんよね」

「えっ、う、うん、あたりまえじゃん」


 サイラスさんがじとぉとした目で見てくる。


 流石の僕もそんなことはしない。

 他国の領地に勝手に入ったら大問題だ、それぐらいの分別はある。


 ……あるからそんな目で見ないでってば!


「……安心いたしました。帝国を悪戯に刺激したくはありませんから」


 胸を撫で下ろすサイラスさん。

 その姿を見て、僕はふと思った。


 このニール公領は、王国の北方に位置する、いわゆる辺境領の一つだ。

 どうして僕が王宮を追い出されたのか、その理由はよくわかっていない。

 だけど僕が王宮にいると厄介で、それで王都から遠く離れたこの領地へ飛ばされたのだと、ずっと思っていた。


 でも今の話を聞くに、帝国と接するこの場所はオブライエン王国にとって要衝の一つのはず。

 それを僕なんかに任せていいのだろうか。


 よぎった疑問を口にすると、サイラスさんは目を見開く。


「流石はシリル王子でございます。私どもが候補地を探す中で懸念していたことにお気づきとは」

「こうほち?」

「っ、い、いえ」


 首を傾げて復唱する僕に、サイラスさんは口早に説明する。


「先ほど帝国との間に走る山脈がなければ、この地も帝国領になっていた――と申しましたが、シリル王子は恐らく、地理的に解釈なさったのだと思います」

「うん」


 だって山があると攻めるにしても、越えるだけで大変だからね。


「僭越ながら。今私どもが向かっている森林は、どのようにして生まれましたでしょう」

「それは、せるわーれさんが、まもののひがいから、まちをまもるために――……あっ」


 脳裏によぎったのは、かつてサイラスさんが読んでくれた伝承。

 伝承には、オリーゴの北側に広がる大森林は山脈から降りてくる魔物の被害から防ぐために、妖精族(エルフ)が精霊と共に作り出した聖域とあった。


 セルワーレさんは「森林は元々この地に存在したのだよ」と話していたけど、魔物から町を守っていることは事実。

 つまり。


「北方の山脈には魔物が多く棲息しております。いかに帝国といえど、その危険地帯を抜けてまで、こちら側へ攻め入ってはこない――ということなのです」

「なるほど……」


 地理的にも、そして環境的にも攻められない。

 だから他国と国境を接する領地なのに、僕に与えられた……ということか。


 納得していると、馬車が森林の入り口で止まった。

 今日はこれからセルワーレさんの洞窟を使わせてもらっての魔術の鍛錬だ。

 領地経営で忙しいけど、精霊さんを守れるように強くもならないと。


 もちろんその前に。

 セルワーレさんをたっくさんもふるけどね!

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