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末っ子転生王子のもふもふ精霊無双〜厄介払いで送られた辺境領で精霊たちを撫で回していたらみんな神級になっていた〜  作者: 戸津 秋太
二章 領主着任編

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第40話 中級精霊

 八の字に開いた僕の足の間から、六色の光の柱が立ち昇る。

 その光はベッド上の天蓋を突き破り、天井をすり抜けていくように見える。


「わわっ、わっ」


 足の間で固まっていた精霊さんたちのもふもふが、まるで洗剤の泡みたいに増していく。

 そのもふもふに押される形で僕はさらに足を広げ、遂には限界を迎えて後ろに倒れてしまった。


 仰向けにベッドに横になった僕の体に、六色の光がもふっ、とのしかかる。

 いつもと違うその重みに違和感を抱いていると、徐々に光が収まっていった。

 そして――。


「み、みんな……?」


 そこにいた精霊さんたちは、また一回り、大きくなっていた。


「もしかして、またせいちょうしたの……?」

「チュン!」「コン!」「キュイ!」「ワン!」「キュイ!」「ニャァ!」


 心なしか、大人っぽくなった鳴き声が返ってくる。


 精霊さんたちが成長するのは、これで三度目。

 一度目は小さな毛玉さんが大きくなって、キュートなあんよを伸ばした。

 そして二度目は、みんながもふもふ動物の姿に変化して、鳴き声で僕と話してくれるようになった。


 そして今、みんなの姿が一回り大きくなって、その見た目は子猫や豆柴、小兎から、〝豆〟と〝子〟がとれる姿へと変わっている。


「お、おおきぃ……」


 三歳児の僕の体と同じ大きさの精霊さんたちにのしかかられて、全身がもふもふと温もりで包まれる。

 わけもわからない状況だけど、この上なく幸せで、なんだか息が詰まりそう。


 ……というか、実際に息が詰まってる、くるし、くるしい!


 身悶えつつも、精霊さんたちを突き飛ばせないでいると、部屋の外が慌ただしくなる。

 扉が開かれ、燭台の灯りが差し込んできた。


「失礼いたします! 若様! 今の光は一体!」


 僕のことを〝若様〟と呼ぶのは、元々このニール公領に勤めている人たち。

 聞こえてきた甲冑音からして、見回りの兵士さんだろう。


 なんとか精霊さんのもふもふから顔だけを出し、扉の方を見ると、予想通りそこには兵士さんがいた。


「あ、なんでもな――」

「!? なんですかその獣たちは!?」


 ……えっ、見えてるの?





    ◆ ◆ ◆





 いつもなら朝ごはんの時間。

 僕は自室で、疲れた様子のサイラスさんと向かい合っていた。

 昨夜の騒ぎを色々と対応してくれていたらしい。


「それじゃあ、しょうかいするねっ」


 ローテーブルを挟んで二脚配置されたソファ。

 一方にはサイラスさんが一人で座っているけど、僕の方には精霊さんたちがぎゅうぎゅう詰めで座っている。


 まずは、大人っぽくなった柴犬さんに膝の上へ来ていただく。


「この子はコムギ!」


 元々黄色が主体の色味をした毛並みは、成長したことで深みを増している。

 より名前に近い、小麦っぽい感じになったのは、偶然だけど嬉しい。

 小麦のように豊かにのんびりと過ごしてほしい、という意味を込めている。


 次に、ハヤブサみたいな立派な鳥さんになった元・小鳥さんをお招きする。


「この子はハヤテ!」


 さらにもふもふになりながらも、流線美を感じさせるすらりとした毛並みの鳥さん。

 緑色は毛並みに沿うようにグラデーションがあって、まるで高速で移動した時の景色の移り変わりのよう。

 名前には何にも縛られず、自由に過ごしてほしい、という意味を込めている。


 お次はカワウソさん。


「この子はミナモ!」


 カワウソさんの変化は全体的に少ない。元のフォルムのまま、一回り大きくなった。

 ただ他の子と同じように、水色の毛並みは色々な青みを帯びていて、深さで色の変わる水面みたい。

 この間、川の水面をゆらゆらと楽しげに流れていた姿からとった。


 さらに続くは兎さん。


「この子はユキ!」


 小兎さんから立派な兎さんになった。

 元々、白くて綺麗だった毛並みはさらにもふもふふわふわのキューティーフォルムに変化。

 雪のような触り心地で本当にもふり甲斐がある。

 六人の中で一番安直な名前になったけど、その姿からこれ以外の名前が思いつかなかった。


 立派になったといえば小狐さん。


「この子はグレン!」


 小狐さんも立派な狐さんへ姿を変えた。

 赤かった毛並みは他の子同様に複雑な色味が増し、なんというか、本当に炎みたいなかっこいい色合いになっている。

 他の五人の中でも、しゅっとした顔立ちがイケメンだなぁと思ったから、かっこいい名前にしたんだけど、正解だった。


 そして最後は、子猫さん。


「この子はクロヒメ!」


 子猫さんもまた、立派な猫さんになった。

 手足や尻尾がさらに伸びて、体も大きくなっている。

 ユキさんと同じように、黒い体もさらに真っ黒になっている気がする。

 お姫様みたいに我儘ででもしっかり者だからクロヒメ!


「かわいいでしょ!」

「は、はぁ、いえ、その……」


 六人を紹介し終えて僕は得意げに胸を張る。

 みんなの名前を考えるのは大変だったけど、その分満足のいく名前を考えてあげられた気がする。

 が、サイラスさんはなぜか微妙な表情を浮かべていた。


「へ、へんだったかな?」

「いえいえっ、そんなことは。とても良い名前だと思います!」

「で、でしょ〜」


 サイラスさんの返事に安堵しつつ、にへらと表情を崩す。

 そんな僕を見て固まるサイラスさんは、しかしすぐに居住まいを正して話し出す。


「どうして突然、シリル王子の周りに中級精霊が現れたのでしょう」

「どういうこと?」

「《精霊眼》を持たない私や見回りの兵士たちにも見えるということは、精霊の位階が中級以上であることを示すのです。ずっと傍にいたのならまだしも、突然屋敷に現れるなどということは……」


 うん? なんだかサイラスさんは勘違いしているみたいだ。


「このこたちは、ずっとそばにいたよ?」

「ど、どういうことでしょう」

「このこがおっきくなったの、ちょうどさくやのことだからっ」

「……?」


 困惑するサイラスさんへ、僕は精霊さんたちについて改めて説明する。

 小さな毛玉さんが大きくなり、そして動物の姿となって、また今の姿へ成長したことを。


 話を進めるにつれて、サイラスさんの目は大きく見開かれていく。


「小さな毛玉が大きく……そして個体としての姿を持ち、それがさらに成長……。まるで微精霊が下級精霊となり、そして今まさに中級精霊になったかのよう……」


 ぶつぶつと呟くサイラスさん。


「――まさか、シリル王子は精霊を成長させることができるのですか……!?」

「どうしてそうなるの?」


 だって僕、精霊さんたちを撫でているだけだし。

 僕が赤ちゃんからこうして三歳児として成長したみたいに、精霊さんたちも大きくなってるだけでしょ……?

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