私の目の前に当たり前のようにやってきた...。
私の作品に興味を持ってくださりありがとうございます。第八章です。お待たせいたしました。
今回も、短めの文章で区切りながら描写をしてみました。(長文が続くと、疲れますよね)
それでは物語の世界へ行ってらっしゃいませ。
彼女に包まれながら、私はそっと目を閉じた。
瞼の裏で踊る一人ぼっちのバレリーナは、やさしい笑顔を浮かべながらも確かな強さを持っていた。
かつて一人ぼっちだった私は、こんな笑顔ができただろうか...。
自信を持っていただろうか...。
瞼が思い。
持ち上がらない。
というよりも、目を開こうとしなかった。開いたとて、目の前はもう暗闇だからだ。
瞼の裏に広がる暗闇のほうが、よっぽど明るかった。
私を包む灰の勢いが徐々に落ち着いてきたのと同時に、私は彼女に対する心の底からのアンコールの準備をしていた。
彼女の舞いが、完全に終わりを迎えようとしていたその時だった...。
地面に叩きつけられる衝撃で、私の瞼が跳ねる。
地面に沈みかけていた灰が、一斉に宙に戻るのを感じる。
しかしそれは、決して待ち望まれたアンコールの始まりではなかった。
一度は退場したバレリーナが、ステージのハプニングに驚いて、慌てて飛び出してきたかのようだ。
私の体はとてつもない風と地響きによって、その場に放り投げられた.
何かが突然目の前に現れ、同時にさっきまであったすべてが突然消えてなくなった...。
すると、耳が引きちぎれそうになるくらいのサイレンが、静寂を完全に破壊した。
「ブオォォォォ!!(???)」
その瞬間、私の脳裏に嫌と言うほど焼き付いた存在が、暗闇の中で姿を現したのがわかった。
鈍い音を立てながら、そこにある木々がなぎ倒されていくのを感じる。
地震が来たかのような地面の揺れが、両足から体に流れ込み、内側から私の体を破壊しようとする。
そこにもう、火の明かりなど残っているわけがなかった。
一瞬にして破壊された彼女の舞台は、ただの暗闇と化した...。
私の宝物が、また一つ消えた瞬間だった。
目の前の理不尽に、なすすべもなく逃げ出そうとしてしまう体を、私はグッと抑えた。
私のできる最大限の"抵抗"だった。
震える手で、手元に飛んできていた灰をギュッと握りしめた。
逃げ出そうともその場にとどまろうともする両足の迷いが、より一層私の体を震わせる。
そんな体は、前から吹いてくる生暖かい吐息のようなものに圧され、後ろに倒れそうになる。
踏ん張る。
必死に踏ん張る。
生暖かい風が、大量の灰を飛ばしてくる。
私の視界を狭める。
それに逆らうかのように、飛ばされたはずの灰が暗闇のほうへ向かっていくのを感じる。
「ブオー!!グルルルル!!(???)」
とっさに耳をふさいだが、あまり意味はなかった。とてつもない怒りだけが、しっかりと私に伝わってくる。
「ブオー!!(???)」
耳が引きちぎれそうだ。地面の振動を体が受け止めきれず、私はまた地面に叩きつけられた。痛みを感じ、こんな状況下でも自分がまだ生きていることを再認識した。
また地面に叩きつけられた。
痛い...。
地面の揺れが収まらない。灰が勢いよく舞っているのを肌で感じる。地震が起きているかのような感覚を覚えながらも、私は必死に体を起こした。
うっすらとだが、"あれ"が必死に灰を振り払おうとしているように見えた。
まるで今のうちに逃げろと言わんばかりに、大量の灰が暗闇に向かっていくのを感じる。
バキ!!
ミシミシ!!
音が鳴ると、
ドゴーン!!
大きな音を立て、また地面が大きく揺れた。
大きく吹き飛ばされた木々が、私のすぐ横を一瞬で通過する。
その勢いが、私の頬を軽く切り裂く。
とうとう私は、その場にいることを諦めてしまった。
その瞬間。足が、手が、必死に動き始めた。
「ブオー!!(???)」
耳を引きちぎりたくなった。
暗闇の中で"あれ"の存在だけが音となってその場を支配する。
ただひたすらに足が動き続ける。前を見ても後ろを見ても、一寸先は闇。どうせ闇なら、"あれ"がいない闇に進みたい。
なんども後ろを振り返ってしまう。
(私たちが一体何をしたっていうの…?なんでお前がここにいるの…?これ以上私から何を奪うっていうの…?なんで…なんで…)
頭の中で、自分の気持ちが猛スピードで流れる。
"あれ"まだ舞い続ける灰に気を取られているようだった。
というか、"あれ"はまるで私に興味を示さない...。
突然現れては、私の宝物だけを奪っていく。
そう...私の宝物を…"あれ"が奪っていく...。
そう自分に言い聞かせたときだった。
(なんでミユを突き落としたの?)
’’彼女‘’の言葉が、再び脳裏をよぎる。
逃げる私を引き留めようとする。
しかし今の私には、‘’彼女‘’と話をしている余裕などない。ただひたすらに、目の前の闇へ向かって足が動き続ける。
"あれ"がまだすぐそこにいるのを感じる。
すべてを破壊していくのを感じる。
目の前の木々の間を、手探りで進んでいく。もはや自分がどこにいるのかもわからない。
地面の振動が弱くなってきたのを感じ、かなりの距離を走っていたことに気が付く。
どれほど走っただろうか...。
手も服も靴も、全てが山道の中でボロボロになっていた。
"あれ"は私を追いかけて来ていないみたいだ。
しかし私の足は止まらない。"あれ"を完全に感じなくなるまで、私は目の前の暗闇を進み続けた。やみくもに、がむしゃらに。
しかし同時に、大切な宝物もまた、暗闇においてきてしまっている事実が、私を苦しめる。
その苦しみから逃げたいという本能が、より一層両足の動きを加速させた。
進み続けると、私の前を阻む木々がなくなっていた。
開けた場所に出たような気がした。
ただの暗闇だ...。
スゥーっと私の首をなでる冷たい風に、懐かしささえ感じる。
本当に冷たい風だ。
気が付かないうちに、私の体はオーバーヒート寸前まできていたらしい。
静寂につつまれたその場所では、私の足音だけがコツコツとなっている。次第にその音も弱くなっていく。
さっきまで混乱していた呼吸が、ゆっくりと落ち着きを取り戻しつつあった。
そう感じた瞬間、スッと体の力が抜け、ゴツっと地面に両膝が落ちる。かろうじて両手で自分の体を支えるも、両腕がぶるぶると震えている。
さっきまで無尽蔵に動き続けた私の足は、もう再び動きそうにはなかった。
ボタボタと汗が垂れる。
体中の水分が、一気に外へと流れ出ているかのようだ。
大きく息を吸い、ゆっくりと吐く。今できるのは、本当にこのくらいだ。
立ち上がることはおろか、このまま倒れてしまいそうだ。
いっそのこと、倒れてしまったほうが楽かもしれない...。
唯一私の耳だけが、私のかすかな呼吸を拾う。
目をつぶって、私は何度も深呼吸をした。…。
しかし何かがおかしい。
前方から別の誰かの足音が聞こえる。
走っている。慌てて何かから逃げているような。
同時に、息切れしながらも、必死に呼吸をしているような、ハァハァとした息遣いも感じる。
今さっきの自分のようだ。
しかしその息遣いに、私は心当たりがあった。
目の前の暗闇から、何かがこちらに向かってくる。
でもそんなことがあるだろうか...。ミユもサキも、楽しい時間もすべて"あれ"が奪っていったのに。
彼女はサキと一緒に、私とミユを待っていたはずなのに。
もうあの場所にはいなかったのに。
本当に、本当に、本当なのだろうか。
誰にせよ、何者かが目の前の暗闇からこちらに向かってくるその事実を前に、私の体は完全に硬直する。
「誰…?(私)」
暗闇の向こうにいる誰かに向けて、私の喉から一言だけ言葉が漏れた。
するとその足音もすっと消え、怯えるように震えた声を、冷たい風が運んできた。
何度も聞いたことのあるその声に、私は言葉を失った...。
声に続くように、彼女の姿がうっすらと暗闇から姿を現す。
私は言葉を失った...。
読んでいただき誠にありがとうございます。
反省点
シナリオの展開をもう少し丁寧に描いていきたいと感じている反面、主人公の視点で描いている今作において、あまり客観的な表現を使わないで描くことの難しさを感じております。どうしても主人公の心情や、視界など、限定された表現が続いてしまっているのが、現在の課題です。
ご感想、アドバイス、お待ちしております。少しでもこの作品が良いと感じましたら、応援よろしくお願いいたします。励みになります!!。
第九章も現在制作中です。お楽しみに!!




