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そばにいてね  作者: ニシン兄


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7/11

彼女は舞う

大変お待たせいたしました。第七章です。

今回から、後書きにて個人的な反省点も記述しております。気になる方はぜひ目を通してみてください。

それでは、物語の世界へ行ってらっしゃいませ。

炎の中、もはや原型をとどめていない"肉"を"焼いている"彼女の姿は、やっぱり彼女っぽくはなかった。


いつもならもっと楽しそうに話しながら、笑顔で失敗もしながらやるのが彼女だ。


しかし、しっかりと焼かれた彼女の顔では、もはや確認できないだろう...。


衰えることを知らない目の前の炎が、彼女の右手を完全に焼き切る。トングが落ち、掴んでいた"肉"は完全に灰と化し、炎の中に消えた。"右手"は、かろうじて、まだ彼女の"腕"にくっついている。


すぐそばには、まだ焼かれていない生肉が夜空の涎でべとべとになったまま放置されている。


そのうちの一枚は土がこびりつき、妙にへこんでいる。


まるで、誰かに靴で踏んずけられたような跡が残っている...。


そんな光景を見たまま、呆然とその場に立ち尽くす私は空っぽだった。


頭も、心も...。


胃袋からの悲痛な叫びが聞こえた。空っぽなのだ...。


胃袋には目がない。目の前の状況など関係なく、こいつは好きな時に悲鳴を上げる。しかしわざわざ止めようなんて思わなかった。どうせ止まらないからだ...。


炎の中で、彼女の姿が、徐々にそれではなくなっていくことに気が付く。


「待って...」


口から言葉が飛び出る...。


空っぽの体が、何かを言うためにとりあえず用意したかような言葉だ...。


それでも、彼女がまだ彼女である間に、お別れを言わなければならない気がした。


彼女がもう肉を焼かないと察したのか、夜空は急に涙を流し始めた。


これまでとは違い、その涙に打たれる炎は、瞬く間に弱弱しくなっていく。


ともし火から姿を現した灰の塊を、夜空の涙がさらに崩そうとしている。


どんどん崩していく...。


炎に守られていた灰の塊は、夜空の涙を受け止めながらドロドロになってその場に沈んでいく。


「待ってよ...」


小さな小さな、本当に小さな心の底からの叫びは、無慈悲にもかき消された。


自分しかいないその空間の中で、いったい誰がこの気持ちを受け取ってくれるというのだろうか...。


ずっと一人だったはずなのに、これからも一人であり続けることに絶望するのはなぜだろうか...。


いや、私は久しく、一人ぼっちではなかった...。


ずっとずっと、皆がいた...。


私は、皆でキャンプをしにここに来た。


皆で楽しんで、笑って、一生の思い出の一つを作りに来た。


全部、皆がいたからやろうと思った。私一人では一つもできなかった。


だから今度は、私が彼女のそばにいてあげようと思った。


(そばにいるよ...)


前へと足を踏み出した。最後まで、そばで見届けてあげようと思ったからだ。


一歩を踏み出したその瞬間、反射的に私は左手で顔を隠し、思わず目を細めた。びしょ濡れになり、重りのように体にのしかかっていた服が、軽々と持ち上がった。髪が重力に逆らってなびく。夜空も驚いたのだろうか、流していた涙が、不思議なほどにピタリと止まった。


私は細めた視界で、そっと目の前の光景を確かめるも、眉間にしわを寄せ、視界はさらに細くなる。


そして...


私は大きく目を見開いた。


先ほどまで地面に沈みかけていた灰の塊が、この空間を自由に舞っている。


鳥籠の中に入れられていた白鳩が、平和の願いと共に解き放たれたかのような光景だ。


灰色の桜並木で、一斉に花吹雪が起こったかのようだ。


彼女がまるで、私を包み込んでくれているかのようだ。


抱きしめているかのようだ。


その場を包みながら、私を包みながら、私の服に、肌に、舞っている灰が付く。


消えかけの彼女が見せた、私に対する執着なのか。


私を一人にさせないという気遣いなのか...。


彼女に抱きしめられた私は、気が付けば初めて彼女と出会った頃の記憶に浸っていた。


昔の私は人と話すのが得意じゃなかった。私と話たところで、相手は楽しくないだろうとずっと思っていた。だから私からは、誰にも話しかけることがなかった。そんなふうにしていたからか、周りの人たちも私に話しかけるようなことは無かった。


(本当に一人ぼっちだったな...。)


しかしそんな私に、話しかけてきたもの好きがいた。彼女は、満面の笑みで私に話しかけてきた。幼いころから習っていたバレイの話を延々とされたことは、一生忘れない。正直最初は変な人だと思った。もちろん、当時の私がひねくれていたのだ。せっかく私に声を掛けてくれた人に対して、そんなことを思ったのだ。ただし、本当に不思議だった。なぜ私に話しかけてくれたのか、当時はまだわからなかった。


(ひねくれ者だった...。自分が大嫌いだった...。)


真っ暗だった頭の中で、ぽつんと光がともった気がした。彼女は孤独だった私を、底なしの沼から引っ張り出してくれた。当時の笑顔が頭に浮かぶ。同時に、大粒の涙が私の頬を伝って落ちる。


(『ねぇねぇ、よかったらさ、一緒にグループワークしようよ。私まだ誰もメンバーいないんだよね。』って…その子はさ…私…本当に…)


体が震える。言葉にしようとしても、震えた喉に言葉が一つずつ引っかかる。


「絶対…もっといたのに…私…ひとりだったから…誘ったん…でしょ...?(私)」


灰を握りしめながら、過呼吸になりながらも、私は一言ずつ大切に言葉にした。でも彼女は何も答えない。うんともすんとも言わない。そんなことはわかっていた。だからこそ、思っていることを全部言葉にしてあげたいと思った。


「ありがとう。ほんと…あ゛り゛がどう゛…サキ…(私)」


どうやらフィナーレを迎えているかのようだ。広く、高く、彼女が舞う。


「ごめんね…すっごく待ったよね...でももう大丈夫だから…私…(私)」


彼女の舞いが、私を包んだまま見守っている。結局最後まで、私のほうが見守られているのだ。


もうすぐ完全に終わってしまうだろう。


私はただ、その場でそっと見守ることしかできなかった。


最後まで見届けようと思った。


いっそのこと、一緒に自分もこの場で舞って、全力で崩れ落ちてしまえばいいとさえ思った。


でもそれが、彼女のこれまでの舞いを台無しにすることくらいわかっている。


彼女が安心してこの舞台で終われるように、私は不器用ながらも、必死に笑顔を作って見せた...。

読んでいただきありがとうございます。いかがでしたでしょうか。

活動報告でもふれましたが、今作品は今月の中旬から月末にかけての完結を目指しております。

最後まで全力で書きますので、応援よろしくお願いいたします。


反省点

今回から個人的な反省点も書いていく試みです。(無視していただいても大丈夫です。)

今作は、少し表現の仕方がくどいかもですね。(自分でも読み返してみましたが、表現が読んでて疲れるかもですね。)

また、相変わらず展開が急で、「よくわからん!!」となる読者様もいらっしゃるかもしれません。

また、各章の長さも、現在悩みどころです。

第七章は少し短かったでしょうか。それともこのくらいの長さがちょうどよいでしょうか。(個人的には少し短めな印象。)

とりあえず、いったん私の勢いで書いてみますね。

最後まで見守ってくださる方はぜひともお願いをいたします。

様々ななご感想、アドバイスなどもお待ちしております。

第八章も現在制作中です。お楽しみに!!

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