表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そばにいてね  作者: ニシン兄


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/11

闇への逃亡

この作品に興味を持ってくださり、本当にありがとうございます。こちらは第五章です。

現在、様々な表現方法を模索中です。

それでは物語の世界へ行ってらっしゃいませ。

どれほど時間がたっただろうか、それは目覚ましのアラームのようだった。


「ナオ―、ナオー、ナオー、ナオー、(???)」


録音されたかのように何度も同じ声が暗闇に響き渡る。ずっと鳴っていたのだろうか。アラームというのは、いつも、どんな時も、決して心地いいものではない。たとえそれが、私の大切な、親友の一人の声だったとしても。


永い眠りから目覚めるかのように、私はスッとその場に立ち上がった。空っぽになった私の体は、驚くほどに軽かった。


耳障りなアラームに背を向けると、私は自然と、暗闇の中山道を登り始めていた。足が軽い。かつて、こんなに何も感じずに山道を登ることができただろうか。


涙が頬を伝って顎から落ちる。震える唇は、言葉を発することを許さない。いつもなら肩に感じるはずの重さもなかった。


無意識に、いつも肩にぶら下がっている相棒を握ろうとして、空を掴む。


「はぁ...(私)」


こういう時、私はいつも相棒と一緒だった。相棒にいろいろと聞くのだ。もちろん相棒は何も言ってくれない。ナオならできると言わんばかりに、じっと私を見つめるだけ。でもそれが、私に勇気と自信を与えてくれた。誰よりも私を信じてくれる存在。何も言わなくていい。ただただ、聞いてくれればいい。そばにいてくれればいい。


でもそんな相棒ですら、もう私のもとにはいない。いや、私がおいてきてしまったのだ。


(怒っているかな。悲しんでいるかな。うん、私だったら悲しい。すごく悲しい。相棒、どうしたらいいかな…私…)


しかし同時に、頭の中で、私の思考に何者かが意義を申し立てた。


(悲しい?あれはただのキーホルダーだ。感情なんてない。)


ほかでもない。私自身だ。でも‘‘彼女は‘‘私ではない。


(私は今、もうなにも背負っていない。誰も、何も気にしなくていい。私は自由だ。そうでしょ?)


(違う…私は…すべてを失った…。友達も、相棒も…。)


(失った?じゃあミユはなんで私の元からいなくなったの?なぜ一緒に山道を登らなかったの?なぜ彼女を、突き落としたの?)


頭の中に現れた‘‘彼女‘‘は、まるで私が答えられないことがわかっているかのように、淡々と質問を続けた。


(私は確かに彼女の声を聴いた。きっと彼女は今もあの暗闇の中で私を呼び続けている。彼女に背を向けて、淡々と山を登って、それなのに彼女のほうから、私のもとを去ったっていうの?)


頭が割れそうだ。


(ねぇ、どうなの?)


‘‘彼女‘‘の言葉が頭をかき乱し、そのたびに脈を打つかのような激痛が私の頭を破壊しようとする。


(まさか今からサキとレナに会いにでも行くつもり?会えると思ってるの?ミユを見捨てておいて、堂々と彼女たちの前に立っていられるの?ねぇ?)


‘‘彼女‘‘の言葉でぐちゃぐちゃになりそうな頭が、逃げるように口から言葉を吐き捨てた。


「黙れ…(私)」


その言葉でさえ、もはや私の意志ではなかった気がする。


(逃げるな。私と向き合え。)


「黙れ…(私)」


(じゃあ、自分で黙らせてみたら?無理でしょ?逃げるから。絶対逃げる。逃げ続ける。)


「……」


邪魔だった...。 ‘‘彼女‘‘の言葉のように、私の行く手を大きな木の枝が阻んだ。少し屈めば、通れる隙間があったのかもしれない。


でも邪魔だった。


屈まなくても、両手でどけることもできただろう。


でも邪魔だった。


両手に握られた枝はすでに折られていた。両手が痛む。左膝が痛む。私が折った枝はもう死んだだろうか。どうでもいい。


邪魔だった…。


いつの間にか‘‘彼女‘‘の声が聞こえなくなっていた。いや、もう耳を傾けない。


私はまた淡々と山道を登っていく。自分の足音だけがその場に響き渡る。頭が壊れたのか、痛みももう感じない。足が私の体を勝手に運んでいく。一歩踏み出すと同時に、バキっと大きな音を立てる。


気が付けば、足元には大量の木の枝が落ちていた。歩きにくい。


(邪魔...)


強く足を踏み込み、一本一本の枝をしっかりと踏みつぶしていく。


スゥーっと髪の毛が前に揺れると、後ろから風が吹いたことがわかる。どれほど登ったのだろうか。ひたすらに枝を踏みつぶしながら登っていく。


テントにいた"あれ"はいったい何だったのか。考える気力なんてあるわけがない。ただただ足が、私の体を運んでいく。


そろそろ枝を踏み続けるのにも飽きてきた。暗闇の中、自分の体がどこへ向かっているのかわからない。


荷物も何もないのに、一歩一歩が地面に沈んでいくのがわかる。さっきまで軽かった両足は、今では重りをつけられたような感覚だ。


まるで、地面が私をこの先に進ませないようにしているかのようだ。


空っぽになった体が、思いっきり重力に引っ張られる。大量の汗を吸った服が、ずっしりとした重みとなって、私を地面に押し付ける。


いっそここに座り込んでしまえば良いのかもしれない。しかし、この暗闇に取り残されるという恐怖が、かろうじてまだ私に残っているのからだろうか。それとも、この暗闇の先で、サキとレナに会えるかもしれないという期待が残っているからだろうか。なぜか私の両足は、この理不尽な重力に逆らい続けている...。


とはいえ、どこまで進んでも目の前は闇だ。先を見渡そうとしても、どれだけ続いているのかもわからない。


自然と下を向いた頭は、もう上を向けそうにない。うっすらとだが、両肩から無気力にぶら下がっているだけの両腕と、その先についてる両手が目に入る。ためしに握ってみようとするも、そっと指が動くだけ。


その時初めて、私は視覚的に自分の感じている寒さに気が付いた。


口から漏れ出す吐息が、私の体温を奪っていくように感じる。理不尽な重力に逆らい続けた両足も、ようやく大人しくなってきた。暗闇の中で、目的も希望もない歩は、ようやく終わりを迎えようとしていた。


すると私の髪がスゥーっと後ろから前へとなびいた。


強めの追い風だ。私の体は驚くほど軽々しく、その追い風に圧され、前方へと押し出される。そんな体を、必死に両足が受け止め続ける。


右、左と、一本ずつ足が体を受け止めるたび、地震が起きたかのような衝撃が全身を襲う。限界を迎えた両足は、自然とうっすらと見える木々に向かい、全身を預ける。ようやく私の歩みは止まった。暗闇の中に立ち並ぶ木々、その中の一本に、全てを預けた。


髪がさらに強くなびいた。もたれかかっていた木に、体が勢いよく押し付けられる。私を前に進ませたその追い風は、今は私を木に押し付けている。


風が吹いてくる方向に顔を向けると、私の呼吸が完全に奪われる。


私はただ、風がやむまでその場で待つしかなかった。


いや、やんだところで、どうすれば良いのかなんて知らない。


どうしようもなくなった。というか、初めからどうすればいいかなんてわからなかった。


するとそっと瞼が下りてきた。あとは両足の膝が曲がってくれれば、もう私はこの場から動けなくなる。


未だ吹き続ける風の音を、私の耳が律儀にも拾い続ける。


ブオー!!


ビュー!!


ブオー!!


決してそよ風では出せない音だ。まるで、すこし遠くで怪物が吠えたような、そんな音だ。


(怪物が吠えたような...。)


重たい瞼がパッと開いた。折れそうになっていた膝は急に力み、寸前でとどまった。


("あれ"がくる...。)


読んでいただき、誠にありがとうございます。いかがでしたでしょうか。

一つ一つの文章が長くなりがちなのが、個人的な課題です。

皆様からの感想やアドバイスをお待ちしております。

第六章も投稿予定ですのでお楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ