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そばにいてね  作者: ニシン兄


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2/11

楽しいキャンプは夜からが本番...

私の作品に興味を持っていただき、ありがとうございます。

こちらは第二章でございます。第一章がまだの方は、ぜひともそちらからお読みください。

それでは、物語の世界へ行ってらっしゃいませ。

スゥーっと冷たい風を感じた。体が敏感になっているのがわかる。さっきまでの汗が一瞬にして冷や汗に変わった。自然と後退りをしてしまう。必死に見間違えだと自分に言い聞かせる。もちろんミユに直接聞くなんてことは、私にはできなかった。聞いてはいけない気がした。


つばを飲み込み、目をつぶった。両手で頬っぺたをギューッと押さえつけると、手にはべっとりと冷や汗が付く。ゆっくり深呼吸をして目を開けると、テントからサキの声が聞こえてくる。


「えっと、次は…(サキ)」


サキがテントの取扱説明書を見ながら、着実にテントを完成させつつあった。和気あいあいと作業を進める反面、ここにきて思いのほかテント設営が難しいことに気が付く。


「あれ?それ反対じゃない?(レナ)」


「あー!!!!(サキ)」


「やり直しだね(ミユ)」


夢中になっていたためか、さっきまで明るかったはずの空も、気が付けばオレンジ色に染まり、その色も少しずつくすんでいく。同時に、冷たい風がより一層強くなっているのを感じる。


それでも取扱説明書とにらめっこしながら、なんとかそれっぽくはした。まぁ、四人が満足すれば良いのである。


「よっしゃー!!完成!!(サキ)」


なんとか立てたテントにみんなの荷物を入れる。これで一息。今夜の寝る場所には困らなさそうだ。


「やっとできた...。(私)」


テントが完成するや否やどっと疲れを感じた。そのせいか、自然と口から声が漏れる。楽しいことに夢中になると、こういうことがよくある。


しかし休憩しようとしたのもつかの間、レナが夕食の準備を始めないかと提案する。


「お腹もすいてきたし、夕飯の準備しますか。(レナ)」


「飯だー!!(ミユ)」


確かにそろそろ夕飯の準備をするべきだろう。さすがレナだ。彼女がいなかったら、今頃三人とも休憩し、気が付いたら真っ暗になっていただろう。バーベキューがないキャンプなんてありえない。


しかし私は完全に素人のため、できればただ食べる係に徹していたい。肉や魚の焼き加減とか、何から焼くとかそういうのは全部経験者にお任せしたい。しかしこんな場所で食べ物を焼くには火が必要だ。つまり火おこしをしないといけないのだが…


「んじゃ、ナオ、火おこしよろしくー!!(サキ)」


「へ?!私?!(私)」


「私やミユは、こういう作業は不器用だから無理じゃん?レナには私たちと食材を運んでもらいたくて。それにナオって器用じゃん?(サキ)」


「まぁ、やっては見るけど…(私)」


サキに先手を取られてしまった。してやったりの笑顔を見せながらサキは私に言った。彼女はこういう時の頭の回転は本当に早い。


私は仕方なく、事前に準備をしておいた火おこしキッドを出し、テントのそばでただひたすらに火おこしを始めた。しかしなんだか瞼が重い。時間ももう遅いし、早く火をつけたいのだが...。


にしても山の気候は本当にわからない。日もかなり沈み、このままではあっという間に真っ暗になってしまう。それに、さっきから冷たい空気が私の体にまとわりついて離れない。まるでここから動くなと言われているみたいだ。そう思うと同時に、手元が少しずつ狂い始める。さっきまでできていた動きがうまくできない。そんな時だった。今まで木々を揺らしていた風が急にやんだ。その代わり、背中の一点だけを冷たい風がそっと撫でていく...。


「火つきそう?(レナ?)」


心臓が跳ねた。


(今の誰?)


だがすぐに気が付く。レナが心配して声をかけてくれたのだ。でもなぜだろう、とても彼女の声には聞こえなかった。


「だめ。全くつく気配がない。(私)」


「交代しようか?ナオ、疲れてるでしょ?ずっとナオがやってるくれてるもんね。(レナ)」


私が疲れていることを察したレナが、火おこしを代わりにやってくれると言う。確かに私は疲れている。おそらく顔にも出ていたのだろう。でもレナも疲れているとは思う。でも彼女は全く疲れを見せていない。私に気を使ってくれているのだろうか。だとしたら…さすがレナだ…。私はお言葉に甘えて、レナに交代してもらうことにした。


「ありがと。でも無理しないでね。確か懐中電灯とか、灯りつけるだけだったら他でもできるし、ただお肉が焼けないから、どっちみち火はつけないとだね。(私)」


気付けば私は火から少し離れていた。その場にいるのがなぜか落ち着かなかった。自然に顔が下を向く。そこには、いつの間にか大きくなった自分の影。


テントのそばで夕焼けに染まった絶景を見ていると、どことなく虚しさが込み上げてきた。するとパチパチっと音が聞こえた。レナのほうを見てみると、どうやら順調に火おこしができているようだ。さすがレナだ…。


火おこしの音を聞いていると、少し心が落ち着く。


パチパチ、パチパチ、パチパチ、パチパチ、


バキ!!


とっさに後ろを振り返った。


(今の…なに…?)


つい先ほどまで木々で覆われていたはずのそこは、今は暗闇と化していた。


火おこしの音ではない。木の枝が折れるような音がはっきりと聞こえた。それと同時に火のパチパチという音が急に遠くなった気がした。耳の奥で、自分の呼吸だけがやけに大きく響く。


おそらくだがサキとミユだろう。自分にそう言い聞かせる。でもなぜか、いつものように自分を信じることができなかった。


バキっバキ、


音は続いた。


(サキとミユだ。そうだ。絶対そうだよ。もう、相変わらず好きなんだからこういうの。)


手が震えている。その場を離れたくても、なぜか足がしびれたように動かない。


バキッバキっバキッ…


ドス!!


あまりにも重たい地面の震えが私の膝を伝って心臓まで響く。


バクバクと音をたてる心臓が、私の声をせき止める。


すぐそこには相変わらず火おこしをしているレナがいる。


(助けて…)


バクン!!


心臓が破裂したようだった。


「わぁー!!(サキ)」


「あっははははは(ミユ)」


何が起こったかわからなかった。ミユがお腹を抱えて笑っている。苦しそうだ。


「むっちゃびっくりしてる(サキ)」


「へ?あ、あ…なんだー、もー、びっくりした。マジで無理なの私こういうの(私)」


全身の力が抜け、私はその場に崩れ落ちた。横ではミユも崩れ落ちている。お腹を抱え、必死に呼吸をしている。苦しそうだ…。


どうやらレナには二人が見えていたようで、あえて私には教えなかったようだ。


「ははははは、まんまとやられたね、ナオ。大丈夫?(レナ)」


でもレナだけは私を心配そうに見つめ、脱力しきった私に手を差し伸べてくれた。


「それとジャーン!!火が付きました!!(レナ)」


どうやらレナが順調に火おこしをしてくれたみたいだ。暗くなった空の下で、ただ一つ小さな光がそこにはあった。


自然とその光をみつめてしまう。なんだか安心する。相変わらずパチパチと薪が小さな音を立てるも、久しぶりにこの場所に静寂が戻った気がした。


気が付けば、そこはたった今ついたばかりの火だけが照らしていたのだ。風も吹かず木々も静止したまま、まるで時間が止まっているかのようだ。そんななか、目の前で必死に燃える火はまだ小さく、すぐに消えてしまいそうだった。必死に燃えている。この暗闇を照らそうとしてくれているのかな。


(頑張って)


ふと頭にそんな言葉が浮かぶ。そういえば、必死に山を登った自分、テスト勉強を頑張った自分、一人暮らしとなり、ホームシックと戦った自分。いろんな自分を、目の前で必死に燃える火と重ねていた。


いつの間にか、ミユたちの笑い声がなくなっていた。まるで急に音量を下げられたみたいだ。自然と口からため息が漏れた。私はいったいどうしてしまったのだろうか。


サキが肉を準備し始めていたが、そんなことにも気が付かなかった。ここの作業はさすが経験者だと感じさせるほどスムーズだった。普段のサキとはまた違うキリッとした表情で、必要なキッドを素早く組み立てていく。あまりにも手際よく、ただただ肉を焼き始める彼女はあまりサキっぽくなかった。


いつもならもっと楽しそうに話しながら、笑顔で失敗もしながらやるのがサキだ。私はどことなく、そんな彼女が見られるのだろうと期待をしていた...。


しかしそんな彼女はどこにもいなかった。思えば、彼女がキャンプをしているところを見るのはこれが初めてだ。彼女の新たな一面が垣間見えたのだと思う。とはいっても、この静けさにはなかなか慣れない。


というか、彼女たちはさっきまで笑っていたはずなのだ...。


おそらくだが、みんな疲れが出てきているのだろう。朝も早かったし、移動も長かった。サキは運転もしていたのだ。疲れていてもおかしくはない。そんななか肉が焼ける音が聞こえ始める。


「おー、ちゃんと焼けてる!!(ミユ)」


「まだついたばっかだから、火を絶やさないようにしないと。(レナ)」


身も心も疲弊しきった私は、これまでにないほどの空腹感を感じていた。そこにサキとミユが運んできた食材が並ぶ。


「諸君、いっぱい食べてくれたまえ。(サキ)」


ジュー!


ジュワ―!!


ジュオー!!!


香ばしい香りが私の鼻から一気に体に流れ込む。肉汁がたれ、大きな火柱が立つ。


ブオー!!!!


その火柱が瞬く間に肉を茶色に染め上げる。


「うお―!!最高!!(ミユ)」


サキは手慣れた動きで次々に肉をひっくり返し、また大きな火柱が立つ。


ブオー!!!!


脂が爆ぜる音が鼓膜を叩く。


バチバチ!!


すると火柱に照らされたサキの顔が、一瞬だけ、ドロリと解けた影を作った気がした…。

読んでいただきありがとうございます。いかがでしたでしょうか。

個人的には、第一章よりも少し短くし、読みやすくしたつもりでいます。(実際どうなのかはわかりません。)

今後も読んでみたいと感じた方は、高評価をお願いいたします。また、ご感想、アドバイスなどもお待ちしております。

第三章もお楽しみに!!

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