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そばにいてね  作者: ニシン兄


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1/11

やっと着いたその場所は...

初めまして。ニシン兄と申します。最初に、私の作品に興味を持ってくださったこと、心より感謝申し上げます。

この作品は、記念すべき初めての作品です。小説を書くことはおろか、本を読むこともあまりしてこなかった私が、ふと物語を書いてみたいと思い、慣れないながら書いてみた物語です。

文章構成や、シナリオの展開、登場人物の描写など、様々なご感想やアドバイスを頂けますと幸いでございます。また、少しでも応援してくださる方がいらっしゃいますと、うれしく思います。

では、前書きはこの辺にしておいて、物語の世界へ、行ってらっしゃいませ。

気が付くと、さっきまでいやでも目に入ってきたビル群が消えていた。代わりに、見慣れない木々がこれでもかと私の視界を埋め尽くしている。胸を締め付けるようなシートベルトが、快適な睡眠を邪魔してくる。今すぐにでも外したい。


(でもつけてなきゃ!!)


せっかくのキャンプだ。こんなことで警察に止められるなんて絶対あってはならない。なんて真面目になっているのは、今起きたばかりの私だけだろう。


彼女たちの声が私の耳に入り、頭の中でどんちゃん騒ぎをしているようだ。車内の相変わらずの盛り上がりには感服するが、目覚ましのアラームにしてはあまりにも楽しそうで、いつまでも聞いていたくなる。


それにしても、よくこの状況下で爆睡できたものだと自分に感心する。


山道に入ったのだろうか、車が右へ左へ何度も揺れる。山道を通るということで、レンタカーは小さいものを選びたかったが、荷物が多いため結局大きい車を借りることになった。傷こそないが、とにかく揺れる。トランクに積んだ荷物が、ごつごつと壁に当たっているのがわかる。おそらくすでにたくさん傷がついていることだろう。車を返すときに確認されないといいが。


この道は幅も狭く、とても舗装されているようには感じない。タイヤが石を砕きながら進んでいくのがわかる。パキっと枝を折る音も聞こえる。砕かれた石が小さくなって車に当たる。もうきっと傷だらけだ。


(車を返すときは、他人のふりでもしていようかな。)


こんな道、私は絶対運転したくない。でも運転している彼女はむしろ楽しそうで何よりである。やはり旅行はこうでなくては。目的地に到着するまでの時間、さらに言えば計画を立てている時間から楽しいのである。とはいっても、これと言って計画と呼べるものが何もないのは内緒。これもまた学生らしさなのだ。


私たちは今、とあるキャンプ場に向かっている。サキが見つけてくれた場所だ。彼女は過去にも、家族や友達とのキャンプを経験しており、今回のキャンプも結構彼女に任せっきりだ。でも個人的にはそれが一番うまくいく方法だと思っている。まぁ結局、どんなふうになろうが、友達と楽しくキャンプができれば、間違いなく楽しいのだ。


「お、おきた?(ミユ)」


私が起きたことにミユが気付いた。


「むっちゃ寝てた…(私)」


正直どれほど寝ていたのかわからない。だが疲れがたまっていたのだろう。


今でこそ夏休みの私たちだが、つい先週までは大学のテスト期間で猛勉強中だった。ちょっとした自慢だが、私はまだ一度も自身の単位を落としたことがない。その誇りもあってか、いざテスト期間になるとかなり無理をして勉強する。


今回のキャンプは、そんな激闘を乗り越えた私たちに、自らが贈る最大のご褒美なのだ。


目を覚ましたのはいいが、目の前の景色がまた私を眠たくする。窓の外を見ても大きな木々が立ち並んでいるだけで、代わり映えしない。これならまだ寝ていたほうが良かったかもしれないと思っていたその時、


「ナオの寝顔超かわいかったよ(サキ)」


しっかりと彼女に寝顔が見られていたようだ。


「ちょっと!!(私)」


私はとっさに言い返した。まったく、運転に集中してほしいものだ。


(まぁでもかわいかったのであれば何よりである。)


「もうすぐで到着だと思うから、もう少しの辛抱かな(レナ)」


レナは私たち四人の中でも一番まじめだ。しかもただまじめなだけではない。頭がよくて博識で、達筆で器用で優しい。あと何といってもかわいい。


(個人の感想です。)


要するに、私たち三人のお世話係というのが手っ取り早い。キャンプに関してはサキに任せているが、レンタカーの手続きや日取りなど、旅行全体でみるとほぼレナが考えてくれている。持つべきものは友だと感じる今日この頃だ。


そんなことを思っていると、また車が大きく揺れた。そのたびに大はしゃぎする二人と、それを楽しそうに見る私とレナ。いつもの四人組だ。


何気ない会話をしていると、車の速度が落ちるのを感じた。


ピー、ピーっと音を立てながら、ゆっくりと後退しはじめる。


外を見てみると、さっきとは違い広い道が広がっていた。そう思った時だ。エンジンが切られ、車の揺れが完全におさまった。それと同時にサキの言葉を聞いて、私の頭に疑問が浮かぶ。


「はい、じゃあ、降りてー(サキ)」


とりあえず、シートベルトを外した。同時に体が外に広がるような開放感を感じる。車のドアを開け、私はその広い道に降りた。そうするや否や、固まっていた体を思いっきり伸ばす。するとどことなく冷たい空気が、私を歓迎するかのように体に流れ込んだ。都会はもちろん、田舎でもないこの場所はまさに自然そのものだった。見渡す限りが大きな木々で覆いつくされ、風と共にその木々が揺れている。何も私たちの会話をさえぎらない。


トランクからリュックを引っ張り出すと、揺れる車内でどこかにぶつけたのか、大切なテディベアのキーホルダーが汚れていた。この子は私が小さかった時からの相棒だ。指先で軽く汚れを払うと、私はこの子の顔を見つめた。小さいころからの癖だ。でも相変わらずこの子は無表情。


(もう少し笑ってくれてもいいんだぞ相棒!!)


リュックを背負い、荷物を確認する。忘れ物がないことを確認すると、トランクを閉めるために左手を上に伸ばす。


「あぁ、そうだった…。(私)」


完全に力の抜けた私の左手が落ちてくる。トランクは横に開いていた。


(慣れないな…。)


バン!!トランクの閉める音だけがその場に響く。このやろう!!と言わんばかりに、少し強めに閉めてしまった。


サキが車のキーを閉め、ピっと音が鳴った。改めてその場を見てみると、私は無意識に眉間にしわを寄せていた。そこは、決して広い道ではなかった。ただの…駐車場だった…。


キャンプ場までは少し歩く必要があったため、三人ともとりあえずサキについていく。そこにはまさに登山道があった。運動不足の私の前に現れたそれは、登る前から私にため息を吐かせた。さらに、すでに上のほうで、サキとミユが軽々しく登っている。おそらく彼女たちの荷物が軽いのだろう。ちなみに私の荷物は重い。


(皆のお・も・い・が詰まってる。なんてね。)


さすがに口にはしなかった。


目の前では、レナが私にペースを合わせながら歩いてくれている。さすがレナだ。


しかし最後に登山をしたのはいつだっただろうか。久しく山を登っていない私が足を一度踏み出すと、その後はなかなか足が動かない。肩に食い込むリュックの重みが、一段と私の足の運びを遅くする。私はぶら下がっている相棒をぎゅっと握りしめた。


皮肉にも絶好調のお日様が、私の体をこれでもかと照らしている。スポットライト(日光)を当てられた悲劇のヒロイン(私)は、いつでも白馬の王子様を待っている。


(クソ!!シンデレラめ!!)


額からボタボタと汗がたれる。乾ききった喉が、自分の汗でさえ欲している気がした。我ながら年を取ったものだ。


(現役女子大学生)


しかしそんな私の背中を、冷たい追い風がおしてくれる。すると上のほうから声が聞こえた。


「あとちょっとだよ!!頑張って!!(サキ)」


「うおー!!(ミユ)」


三人の声援もあって、少しずつ足が軽くなったように感じた。


「待ってろよー!!キャンプ場!!(私)」


あたりが木々に覆われているせいか、どれほど登ってきたのかもよくわからない。上を見上げると、サキとミユが足を止めている。


(あとちょっとだ!!)


そう思うと、不思議と重たい足が、少しだけ軽くなったように感じた。三人に追いつき、ようやく到着したかと思うと、サキが両手を高々に上げて言った。


「着きましたー!!(サキ)」


自然に下を向いてしまうほど疲れた私だが、顔を上げるとしばらくその場をじっと見ていた。目の前にはきれいな野原が広がっていた。


そこは、キャンプ場にしてはあまりにも何もなさ過ぎた。来る途中も看板一つ見なかったし、何より以前に人が来た痕跡が全くない。過去を感じない...。


それでも自然と引き込まれるような場所だった。なかでも、これまで見えなかった景色が私の目をくぎ付けにする。


「絶景だね(ミユ)」


「うん(私)」


疲れが吹き飛んだと言えばうそになるが、登ってよかったと心の底から思った。


目の前の絶景に夢中になっている私の耳に、誰かが荷物を動かす音が入ってくる。音が聞こえたほうに視線を向けると、レナが一人、着々と準備を始めていた。私も自分が持ってきた荷物を出し、準備に取り掛かろうとしたが……、


その瞬間、自分の体から血の気が引くのを感じた。私が持っているはずのテントのポールが見当たらなかったのだ。リュックの中を見渡し、手を突っ込む。


(ない、ない!!)


自分のリュックをひっくり返した。トングや虫除けスプレーが中から落ちてくる。もう一回取りに帰るなんて、考えただけでも嫌になる。というか私の体がそんなことは絶対に許さない。残った体力をすべて使い切る勢いで、私は両腕を何度も上下に振った。しかし私の勘違いではなかった。


「ない…(私)」


血の気が引いて、顔が真っ青になるのを感じた。その場に崩れ落ちそうだった。すると、スゥーっと私の背中を冷たい風がなでるように吹き、レナの淡々とした声を私の耳に運んできた。


「ここにあるよ?(レナ)」


「え?(私)」


声が聞こえたほうを見ると、そこにはすでにテントのポールがしっかりと並べられていた。妙に体が冷え、鳥肌がった。レナが先に取り出してくれたのだろうか。さすがレナだ。


(いつの間に…)


でももう一度山を登らなくて済んだと思うと、途端に安心感をおぼえ、胸をなでおろす。


「でもこんな場所よく見つけたね。穴場的な感じ?(ミユ)」


「まぁ、そんなとこかな。知る人ぞ知る名スポット。今日は私たちの貸し切りでーす!!(サキ)」


「イェーイ!! サキ、マジナイスゥー!!(ミユ)」


二人の相変わらずなテンションを見ていると、いつの間にか私も笑顔になっていた。


しかしこんな場所を見つけたサキには本当にびっくりしている。こんな素敵な場所だからこそ、私たち以外人がいないというのはなんというか、これほどまでに不気味なものなのかと感じてしまうのだ...。


「ほ、本当に誰もいないね……(私)」


「でしょー?最高じゃん!!(サキ)」


もちろんせっかく貸し切り状態なら、贅沢に使いたい。かなり大きいテントを持ってきている。広々としたキャンプが楽しめそうだ。


そんなことを思いながら、各々準備に取り掛かると、レナがギターを取り出した。高そうなギターだ。


(知らんけど)


この旅行の計画を立てていた時から、レナがギターを演奏してくれることになっていた。胸が高鳴る。このキャンプにおける、私たちの一番の楽しみだ。


「待ってましたー(サキ)」


サキもミユもいったん作業を止めて、レナの前で座った。レナも持ってきたキャンプ用の椅子を取り出し、腰を掛ける。


「温かい眼で見守ってください(レナ)」


とお決まりの枕詞をおくと、彼女はギターに指をかけた。普段のやさしいレナはそのままに、ギターを持つ彼女の真剣な表情には、音楽に対する彼女の真面目さがこれでもかとにじみ出ている。


「それでは(レナ)」


そう言うと彼女は、ニコッとこちらに笑顔をみせる。


ズキューン!!


(ウ゛ッ!!)


心臓を撃ち抜かれた。自然と口から息が漏れる。


(生きた人間の顔にしては、あまりにも美しすぎる。)


体の力が全部外に漏れていく。同時に私は確信した。この表情が、これまでに幾千もの男子を撃ち落としてきたことを。二人も撃ち抜かれたのだろう。その場が静寂に包まれた。


すると彼女はゆっくりと手を動かした。柔らかくもはっきりとした音色は、その場を一瞬にして包み込んだ。彼女のギターの音だけが、生きた音としてその場を包む。


目をつぶると、そこはもう彼女のステージだった。一音ずつ弦をはじいているのが音と同時に伝わってくる。でもそれだけじゃない。流れるように彼女の指が弦に触れたのだろう。いくつもの音が、和音となって同時に私を包み込み、リズムを刻んだ。


しっかりとした前奏に完全に浸ったかと思うと、スッとギターの音が消え、その場はまた静寂と化した。前奏が終わったのがわかる。それが意味することはただ一つ。彼女の歌声が、もうすぐそこまで迫っている。脱力した体が一気に身構える。


(くるぞ…)


すると、そっと柔らかなそよ風が、私の緊張した体をほぐすかのように吹いた気がした。


彼女の歌声だ。


それは優しくて、繊細で、音で、風で、雰囲気で、すべてだ。そこにはただ、彼女の歌声だけが響いていた。ずっとこうしていたいと思った。テントのことも、夕飯のことも、どうでもよくなるくらいに…。


気づけば彼女のライブは終わっていた。でもいつ終わったのかわからなかった。どれほど時間がたっただろうか。永い眠りから覚めるかのように、私は重たい瞼を開く。一瞬だった。そう思ったのは私だけではなかったはずだ。


「そろそろテント立てないと(レナ)」


折りたたまれているテントの本体部分を、レナが荷物から引っ張り出す。まだ余韻に浸りながらも、テントを設営する準備を始めた。


キャンプに行くと決めたあと、四人で一緒に買いに行ったテントだ。お店にはたくさんのキャンプ道具があり、テントに限らずあらゆるものが私たちの目を引いた。


ちなみにこのテントはサキのおすすめで、かなり大きい。緑色でそこまで派手じゃなく、持ち運びもしやすいとのこと。しかし、組み立てにはやや時間がかかることを気にしていなかったのは、何とも彼女らしい。私の持ってきたテントのポールを、緑の本体とつなげて、なんかいろいろとやらないといけない。設置場所は、もちろん一番いい景色が見られる場所。


「うーん、ここだね。(サキ)」


サキが一流の画家にでもなったかのように、片眼を閉じて指で長方形を作ると、その‘‘額縁‘‘に絶景を収め、彼女なりのテントのベスト配置を探している。


「いや、こっちかな(サキ)」


経験者の血が騒ぐのか、ここまで真剣に考えているサキの姿も珍しい。私からするとどちらも一緒に感じるが言わないでおこう。


「よし、ここだ!!(サキ)」


テントの位置が決まると、サキは我先にと折りたたまれたテントを自分の決めた場所へと持って行った。


「よし、じゃあ次はこれも持って行かないとね。重たいから二人で持とうか。(レナ)」


テントの端に置く重りだ。レナの言った通り、これはかなり重たい。正直使わない人も多いと思う。実際、テントの中には荷物だって置くわけだし、テントの四つ角に杭を打って固定することもできる。というかしっかり固定もするつもりだ。ただサキの経験では、それでもテントが飛ばされそうになったことがあるみたい。もはやよっぽど悪天候の中キャンプをやったとしか思えない。でも彼女の場合なら、そんなこともやってそうなのがまた良い。


そんなことを思いながら、乱雑に置かれた荷物のもとへ向かう。そこにあった重りを一つ、試しに一人で持ってみようとしたがすぐにやめた。重りを持ち、腰をゆっくり上げようとしたタイミングで分かった。体が地面に引っ張られた。自分の腕が、重力ではない何かに引っ張られるような感覚だ。


近くでは、未だレナのライブの余韻に浸りながら、絶景に目を奪われているミユがいたが無理もない。


普段は都会で大学生をしている私たちにとって、レナのギターとそばに広がる絶景は、とても同じ世界だとは思えないほどにきれいだった。


ミユには申し訳なかったが、テントの設営が進まないため、重りを一緒にテントまで運ぶことにする。


「ミユ、一緒に持って。(私)」


「いいよー。(ミユ)」


呼ばれたことがうれしかったのか、喜んでこっちに来る彼女を見てさらに申し訳なくなった。


「これ、かなり重たいから気を付けて。(私)」


「任せなさい!!(ミユ)」


二人で重りの両側に立つ。一人で持とうとしたときの反省を生かして、私は自分の足、腰、腕そして肩すべてに意識を向け、気持ちの準備を整えた。


「それじゃいくよ。(私)」


掛け声とともに重りを持ち上げた。しかしミユのほうに重りが傾く。


「お、重たい!!ナオ、ヘルプ!!(ミユ)」


ミユがなかなか重りを持ち上げられない。一度おろして全身の力を抜く。そしてもう一度試す。


「せーの゛!!(私)」


またもや重りがミユのほうに傾く。


「ぬぎぎぎぎ、ナオ!!ヘールプ!!(ミユ)」


「いや、私もここ持ってるんですけど?!ミユ頑張って!!(私)」


しょうがないので半ば引きずるようにして‘‘持って‘‘いくことにした。お互い蟹股で、しかもミユはもう持っているのかも怪しい状態でテントまで向かっていくその様に、二人とも笑いを堪えることができなかった。


私はこういうのが大好きだ。皆で協力しながら汗をかき、くだらないことで盛り上がる。近頃は一人キャンプが流行っているそうだが、私は絶対に認めない。皆と来てよかったと心の底から思う。


しかしテントにつき、一息ついたその時だった。目の前の光景を見て私の笑顔は一瞬にして消えることになる。私とミユが持ってきた重りは四つ目だったのだ。すでに三つの重りがしっかりとテントの四つ角においてあった。


そしてさらに、私はあることを思い出す。私は確かに見た。この重りはすべて、ミユのカバンに入っていたことを…。


(ミユが…駐車場から…運んだ…?)



ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

第一章はこれにて完結です。いかがでしたでしょうか。(少し長すぎましたね。)

様々なご感想、アドバイスなどお待ちしております。あと、応援していただける方は、ぜひともお願いいたします。第二章も現在制作中です。どうぞお楽しみに。

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