第028話 大脱出
ある日のこと、この牢屋で一番古株の剣闘士だったライオットが卒業した。
代わりにやって来たのはおっさんの守護役の一号だった。
一号はやって来ると、いつもみたくおっさんの前で敬意を払う。
「い、一号、待ってたよぉ!」
おっさん大歓喜、すると一号も笑顔で――ズン! と鋭くした手で自分の腹を刺して自害した。
「おおおおおお!? 一号ぉおおおおおおおおお!」
「私でしたら大丈夫です才蔵様」
と言われても、一号はお腹からおびただしく血を流している。
メ、メディック! メディック!
一号はなおもお腹から手を抜かず、むしろまさぐっている。
ヒ、ヒィ! とおっさん一号の行動に恐々としていれば。
「才蔵様、ここから脱出しますよ」
「え!? は!? それより一号頭大丈夫!? ってこれは……」
一号から差し出されたアイテムボックスを見ておっさんはすべてを理解した。
向かいの牢屋にいた二人組はいぜん混乱しているみたいだ。
数時間後、奴隷剣闘士を収容していた牢屋から大きな破壊音があがる。
その音を察知した生きた骸骨の看守が駆け付けるが――斬! と骨を断ち切られる。
おっさん達は強靭な戦闘力を持つ一号を筆頭にコロッセオへと走り抜けた。
しかしそこはおっさん、他の剣闘士が軽々と向かう中、息を切らしている。
向かいの牢屋にいた女剣闘士がおっさんに手を差し伸べていた。
「だらしないおっさんだな!」
「す、すまない」
手のひらを合わせると、彼女はこう言ったんだ。
「初めて触れ合えたな」
思いのほか彼女の手のひらは熱くて、その台詞におっさんはつい頬を染める。
一号は自分の得物である大剣で首尾をになっていた。
「コロッセオを抜けたら東に向けて走り続けてください!」
りょ、りょ!
コロッセオの東にはそれ以上の建物はなかった。
どうやらここは吸血鬼の支配地の端部だったようで、東に向かうと仲間がいるらしい。
巨大なコロッセオを全速力で抜け出たあとは、おっさんバスをクラフトした。このバスはガソリンで動く代物だけど、一回分の走行ぐらいの燃料は最初から積まれている。
おっさんの手を取るようにしていた女剣闘士達を乗せ。
次に前を走っていた他の剣闘士も拾い。
右よし、左よし、前よし、後ろよしってな要領で発車オーライ!
不意に、暗雲から翠色の小雨が降り始めた。
小雨が降る向こう側の空は、奇遇にも暗雲が割れていて。
雲の隙間から降り注いでいた陽光によって虹を作っている。
捕らえられていた剣闘士はその光景を希望の眼差しで見る。
ふと車内を鏡越しに確認すると、剣闘士の肩を賢者が抱いていた。
「お役目、ご苦労だった」
「エグゼ様!」
おっさんの声に他の剣闘士がざわつく中。
行く先の方角に、手を振るアネッタやシーラの姿見えた。
おっさんは二人の姿に安堵するよう、ホーンをプァンと鳴らす。
数分もすれば彼女たちの所に着いて、剣闘士のみんなを降ろした。
入口にシーラが佇んでいて、おっさんは再度ホーンを鳴らして。
「ご乗車ありがとうございました、次の停車駅は楽園でございます」
シーラは笑顔でおかえりなさいとおっさん達を出迎えていた。




