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第021話 賢者の石のレシピ


 そして千年祭は始まった。


 地下帝国の空に煌めく光が舞い踊り。


 街の路地には千年祭を祝う声がいくつもあがっている。


 おっさんは先ほど巫女様伝えでさずかった裏レシピを確認している。


 これまで閃いたレシピの裏面を一つ一つ確認していくと。


==========================================

レシピ名:賢者の石

必要材料

・精霊樹の苗床

・クレセリア川の水

・人間の心臓

==========================================


 賢者エグゼ様が求めていた、賢者の石のレシピがあったんだ。

 それは奇遇なことにホムンクルスのレシピの裏面だった。


「あの、よろしいでしょうか?」


 思わず体が痺れた。


 おっさんはこの世界の再生を頼まれていたけど、まさかこんな展開が待っているとは思わなくて。


 おっさんは何でも屋の机の下で小さく拳を握りしめる。


「あの、才蔵さん」

「あ、はい、失礼しましたいら、シーラとミリアか」


 おっさんの妻子が最初のお客として来店する。

 ミリアはおっさんの様子がおかしいことを察したのか。


「何かあったのおっさん?」


 紅い瞳を丸くさせて、ふと聞いてくる。


 おっさんはにんまりと笑い返すと。


「キモ」

「なんてこと言うんですかミリアは!」

「で、何かあったの?」

「んー、賢者の石の手がかりを得れた」


 横で聞いていたシーラがその名前に目をはっとさせる。


「本当、なのですか? だとしたらすぐさまエグゼ様に知らせないと」

「エグゼ様は今頃ノーム様に謁見しているんだろ? 後にしようじゃないか」


 したら、ミリアは体躯が小さいのをいいことに机の上にお尻を乗せる。


「こらこら」

「賢者の石の手がかりか、あれは机上の空論じゃなかったのか」


 ミリアの言葉にシーラは感応していた。


「確かに、私の故郷でも噂こそはあれど、誰も何も知らなかった」


 そ、そうなの? だけど、とおっさんは先ほどのレシピを二人に見せる。


「けどホムンクルスのレシピの裏に、賢者の石のレシピがあったんだ」


 ほら、よく見てと差し出すと二人は顔を寄せ合って目を細める。

 シーラはレシピに載っていた材料を確認していた。


「精霊樹の苗床に、クレセリア川の水に、人間の心臓ですか……」

「精霊樹って何のことかな?」

「精霊樹というのは、一見は百聞にしかずですね。こちらに来てください」


 シーラはおっさんを手招きして、三号の店に向かった。


 三号はシーラの顔を見て深々とお辞儀する。


「シーラ様ですか、よくぞお越しくださいました」

「精霊樹というのは、これですね」


 と、シーラは青々とした新緑をつけた小さな苗木を指す。


「その昔は私の故郷の森にしか生息してなかったのですが、まぁ色々あって流出しまして、今では世界のどこでも見つけることができます」


 三号はシーラの言葉に付け加えるよう口を開いた。


「精霊樹、またの名を世界樹と言います。一つ銀貨一枚になります」


 おお!? これで材料の一つは確保できた。

 クレセリア川の水は常備しているし。


 とすると、三番目の材料が一番ネックだな。


 人間の心臓、人類がほぼ全滅したこの世界だと、まず手に入らない。


 シーラはおっさんの両手を握り閉めて。


「馬鹿なことは考えないようにしてくださいね?」

「馬鹿なこと?」

「自分の心臓を提供するような、自殺行為は止めてって言いたいのです」


 はは、そんなまさか。


「おっさんはまだ死ねないの、シーラとミリアの二人を幸せにする義務があるからね」


 ミリアはおっさん達を見て、唾を吐いた。


「惚気るな、っぺ」

「どうしたんだよミリア? 最近のお前は悪態が目立つぞ」

「当然だろ、猫をかぶっていたんだから」

「いきなり本性表さないでくれる?」


 おっさんが引き気味に言うと、またわっるい笑みを取るんだ。


「……私に名案があるぞ」

「名案? どうせ悪だくみだろうな」

「ほざけ、まぁどうしようもなくなったら相談して来ていいよ」


 ほうほう、心に留めておこう。


 んで、二人は千年祭をどう過ごすというのだろうか?


「シーラ達は千年祭をどう過ごす予定なんだ?」

「色々見て回りたいですね、才蔵さんは?」

「おっさんは何でも屋としてキリキリ働くよ」


 まぁ、飽きたら店を畳んでお祭りを楽しもうかな。


 シーラはおっさんの優柔不断さをよく知っているから、がんばってと笑顔で告げていた。


 ミリアはシーラの手を引っ張り、さっそく連れまわしたいみたいだ。


「ちょっと待ってミリア、彼に挨拶を」

「おっさんじゃあねー」


 二人は手を振りながら祭りの喧騒に紛れ込んでいったよ。


 ……世界の再生、それは俺みたいな姑息な人間には到底無理に思えた。

 今年で三十半ばになるが、俺は自分の非力さをよく知っているし。


 自分の器量もこの上なく理解しているつもりだ。


 そんなおっさんが、世界の再生の手がかりである賢者の石とやらを、もしかしたら作れるのかもしれない。あまりにも話が巨大すぎて実感がぜんぜんしないけど、なんとなく握りしめた拳に力が入るんだ。


 さぁ、ということで始めようじゃないか。


「何でも屋でーす、貴方のお悩み是非聞かせてくださーい」


 千年祭を記念して通りを笑いながら行きかうドワーフ。

 しかし中には悩んでいるドワーフもいるかもしれない。


 おっさんはそういった庶民的な悩みを一つずつ解決していき。


 いずれそれが世界の再生? に繋がればいいなって思うんだ。


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― 新着の感想 ―
ミリアは最初からわりと不快な態度でいたような? なぜ、大事にするか意味が分からないくらい最初から傲慢不遜だったよね? おっさんは頭がおかしい描写を繰り返してるから 変だと思ってないのかと思ってたら ち…
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