07 王女様との旅(キース視点)
評価ありがとうございます。
自分の小説に評価をつけてもらえるってこんなにうれしいんですね。
ブックマークも二桁になってかなりびっくりです。
頑張りますです!
マティス村に着くとあらかじめ決めてあった宿に飛び込む。
宿の人間が使いをやれば、程なくぞろぞろと軍指導者や冒険者ギルドの教官が宿の一室に集まった。
「レナード、王女様はどこだよ」
指導者の一人の熊親父がレナード様の胸を叩く。
「アリノーリア様はお部屋で寝ておられる。部屋に見張りはつけたから大丈夫だ」
「けっ。王女様の顔が見れると楽しみにしていたのによぉ」
「可愛いんだろうなぁ。妃殿下と陛下の娘だもんなぁ」
でれっとした顔はギルドのハゲじじいだねぇ。
「今日は無理だが、明日の出発前ならお顔が見れるだろう。でも、近寄るなよ。泣かれるぞ」
レナード様が注意すると全員ががっくりと肩を落とす。ここ、強面しかいないしね。
でも、アリノーリア様が強面ぐらいで泣くかな。
今日一日で泣いたのはレナード様が追っ手に向かった時だけ。ここにいる面子でも大丈夫かもしれない。
「とりあえず報告だ。追っ手は七人。うち五人は死亡、二人は逃亡した。今晩来るかどうかは不明だ」
レナード様が静かに告げた。一国の王女を追いかける追っ手としては少なすぎだねえ。新王の関心の薄さがよくわかる。多分、城の妃殿下の見張りに人員を割いているんだろうな。
もちろん、アリノーリア様の護衛が我々二人というのも少なすぎる。が、囮部隊にかなりの人数を割いたわけだし、一応偽装していたわけだから人数が多くては意味がなかったわけだ。
「マティス村で夜襲なんて、ありえんだろうがな」
熊親父が笑っているが、目は鋭さを増した。
マティス村は魔の森に近い分、実力者が揃っている。
前王陛下ご崩御の時にも駆けつけられなかったことをみな悔やんではいるが、魔の森から魔物が溢れ返ってしまわないように監視する義務も彼らにはあるのだ。
マティス村からは離れなれない制約があるのが彼らの弱点だが、防御という意味ではこれほど心強い村はない。
「馬車は切り離した。商会には連絡したが死体処理と合わせて引き取りを願いたい」
「構わん。まぁ、あのあたりも野犬が出るからな。明日まで残っているかはわからんが」
ハゲじじいも笑っている。怖い怖い。
「目的地はベルゼネブだったよな。本気で逃げに逃げるな。最短で行くのか」
「いや、予定変更だ。カリナに寄る」
「カリナ……神殿か。加護が見つかったのか」
「アリノーリア様が追っ手を氷で攻撃した後に気を失った」
「それは、まぁ……」
部屋の空気が重くなる。私も何も言葉にできない。
「王女様が何をしたというんだ。何もそんなに背負わせなくても……」
誰かが漏らした言葉が部屋を満たした。
加護持ち自体が悪いわけではないのだ。
加護持ちになると、精霊から頼みごとという名の仕事を任される。大抵は簡単で、どこの地方の町に住んで欲しいとか、何年か旅行に行ってほしいなどだ。
普通ならば加護持ちと判れば大喜ぶ。神殿が最低限の生活を保証してくれるからだ。例え故郷を離れても人並み以上の生活が送れることを喜ぶのだ。
逆に貴族の跡取りなどで土地を離れたくない上に、生活に困っていない場合は加護の有無を調べないこともよくある。
もともと加護の四属性全てに対して加護があるかどうか調べるのは困難なのだ。
加護があるかどうかは各属性の神殿に行き、精霊に祈りをささげて受け入れられるかどうかでわかる。
神殿はそれぞれの属性が強い場所にある。国に二つずつぐらいしかないので、個人では一つの属性神殿に行けるかどうか、という話になるのだ。
だが、今回みたいに神殿にも行かないうちに加護がわかる場合もある。それは、加護が強いことを示す。
精霊からの仕事は難しくなり、より過酷な地域に行くことも珍しくない。
アリノーリア様が赤子にも関わらず加護がわかったということは、非常に精霊の加護が強いことがわかったということ。
このままアリノーリア様が無視すると精霊に嫌われる可能性もある。嫌われると精霊の呪いがつき、許しを得るまでその属性の災難がつきまとう。さらに許しを得るためには試練があると聞く。
さすがに数年の猶予はもらえるだろう。普通赤子のうちに旅などしないんだから。でも、このまま無視を続けるのは危険だ。いつか行かなくてはならないなら、さっさと済ませた方がややこしくないとは思う。
ただでさえ、アリノーリア様は前王陛下のご息女として政争の要因。父親は死亡、母親とは生き別れ。
本当ならばただ両親の愛情を一身に受けて健やかに育っていただきたいのに。
報告会が終わり、私はアリノーリア様のいる部屋で休憩、レナード様は隣室で荷物の整理をしていた。
夜も更けてからアリノーリア様が目を覚ました。
お話をして、お世話をすればあっという間にまた寝入ってしまった。
魔法を使った後遺症みたいなのはなかったようだ。
「……落ち着きすぎているとは思わんか?」
アリノーリア様が再び寝てからレナード様が私に話しかけてきた。
話し声で起きてはいけないので隣室だ。見張りは別にお願いしてある。
「ええ。普通じゃありえませんね。情緒が欠落しているとか?」
眠気覚ましのお茶を飲みながら憶測を吐露した。レナード様の前にもお茶は置いてあるが、生真面目な彼は手をつけない。
「妃殿下と共に幽閉されていたはずだが、もしかしたら放置状態だったのかもしれないな」
あの妃殿下が我が子を放置するなどありえないと思うが、新王に奪われて閉じ込めていた可能性も……
「ありえます。泣くと折檻されていたなら異様に泣かないのもわかります」
「目には知性の色が見えた。きっと先ほどの話は理解していらっしゃる……すでに精霊に守られていらっしゃるのかもしれないな。身を守るために賢くならざろうえなかった……」
報告会だら気が重くなったのに、更に気が重くなる憶測が出る。
「でも大人扱いもできませんよ」
「当たり前だ。三歳ぐらいの子に話しかけるようにすればいいだろう。そもそもお互い子育て経験などないがな」
レナード様は子育て経験の有無に引っかかっていらっしゃるようだが、今は非常時だ。
「……我々ではいたらないかもしれませんが、できる限り愛情を注いであげましょう」
「ああ」
経験はなくても、血のつながりはなくても、きっと大丈夫だと信じなくては始まらないのだから。
次の日の出発前には、マティス村の強面達がアリノーリア様を見学に来ていた。
宿屋の食堂にいかつい男がずらりと並ぶ様は異様なんだけど、その顔がだらしなくなっているので混沌としている。
アリノーリア様はご飯を食べるのに必死で気付いておられなかった。
レナード様がスプーンだくうとアーンと口をあけ、口に入れればニコニコと食べるアリノーリア様。
ポロポロとこぼすので、布巾で口元を拭うとえへへと照れていらっしゃいらした。
「可愛すぎだろう」
「やべぇ、あのほっぺは凶器だ」
「レナードばかりずりぃ。俺も一緒に旅してぇ」
「俺、金がたまったらアリノーリア様と旅するんだ」
「何そのフラグ」
「でもアリノーリア様、ベルネゼブに行くんだろ? 訓練終わってベルネゼブに行けば会えんじゃね?」
「「「その手があったか」」」
……ベルネゼブへの移動願い増えそうだね。向こうではそんなに間近で見れるかわからないよ。
「まんまー」
「え、おかわりですか。ちょっと待ってくださいね」
アリノーリア様は昨日ほとんど食べてなかったからかすごい勢いで食べている。
私の分のパンをちぎってスープにひたし、スプーンにすくって差し出すとスプーンごと奪われた。
アリノーリア様、かなり食い気あるんだねー。食べてくれないよりいいんだけど。
まぁ、とりあえず怪しい行動をとる人間が多かったので、気付かれなくて良かった。
食事の後、アリノーリア様の成長を支えるため、マティス村の女衆に子育て豆知識ノートをもらった。
女衆もかなり不安みたいで、なるべく女を旅に同行させるように話していた。
正直、いつ荒事があるかわからない状態で戦闘ができない女性を連れ歩くのは危険だし。
情報を漏らさない安全な人物を捕まえられるかどうかは疑問だ。
ベルネゼフまで行けば、女性の手も借りれるだろう。後一月の辛抱だ。
女衆にちょうどつかまり立ちの時期だと話すと、休憩を細かく取り歩く練習やおむつを外す練習をさせるように助言をうけた。
ドキドキはするが、私たちがアリノーリア様の親代わりだ。気合いいれて頑張っていこう。
マティス村での一方的な涙のお別れが終わり、三人の旅が始まった。
設定としては、私とレナード様が商人仲間。アリノーリア様が私の娘だ。
私が不義理をして出来た子で、女に押し付けられたということだそうだ。
ちなみに設定を考えたのはレナード様の上官。絶対悪ふざけだ。そうとしか思えない。
レナード様の髪が赤、私が金、アリノーリア様が水色なので、まだ髪色の近い私とアリノーリア様が親子なのはいいんだ。でも押し付けられたって。死に別れた女房とかの方がマシなんだけど。
敬語もこれからはなし。愛称で呼んで、レナード様も同僚として接するように言われた。
商人を名乗るので行商人として荷物を運ぶ。マティス村で新しい馬車を用立ててもらい、馬も交換してもらった。
手探りのことも多い日々でしたが、追っ手もなく、穏やかな日々が続いていく。
「今日の夕方には湖が近い町に着くよー」
お手玉で遊びながらアリィと話す。
アリィがお手玉を投げるがうまく投げれない。
ぶふっ。
笑うのを我慢する。何故前に投げているはずなのにお手玉が後ろに落ちているのだか。
三回目にして私の手元にお手玉が戻ってきた。
やってやったぜ! という達成感に満ちた顔。可愛すぎる。
馬車には絵本やおもちゃが増えた。ついつい買いすぎる同僚パパたちの気持ちがわかるなあ。喜んでくれるのが嬉しすぎる。
「沢山水があって魚もいっぱいだから、明日は魚料理が食べられるかな?」
アリィは目を輝かせている。魚、お好きなんだよね。なかなか川魚は食べさせにくいので食事に出せないけど、たまに魚を出すとかなりおかわりをされる。
透き通る肌に繊細な水色の髪だったので、最初はお人形のように接するべきかと悩んでいたが。
歩く練習や体を動かす練習で日に日に逞しくなってきた。日に焼けて透き通る肌は元気な幼児の肌へと変貌している。
いたずらはしないものの、アリィも普通の子どもなんだと微笑ましくなるね。
「アリィも食べれるといいねえ」
ぶんぶんと首を縦に振るアリノーリア様は可愛らしすぎる。
神殿に着けば、やはり加護持ちだとわかった。
アリィが水にしばらく触れた後に倒れてしまい、我々は神殿に止まることになったのだ。
嫌な予感とともに。
キースさんでした。
アリィの中ではマティス村は単なる通過地点ですが、一応色々ある村でした。
本当はもっとオヤジたちにアリィちゃんを愛でてほしかった!!!
でも、見ているだけー。
ここのオヤジを今後アリィがいるところに引っ張ってくる予定はありません。
さ、次はモーさんだ。




