↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/27

06 王女様救出 (レナード視点)

気がつけばお気に入りに入れていただいていたようで。

感謝感激でございます。

つたない文章ではございますが、ちょっとずつ頑張っていきたいと思います。


 前王陛下が亡くなって一年ほど。

 国は荒れに荒れたと言っていい。

 元々我が国は自治領をまとめ上げているだけの国だ。各々の領に兵がいるし、国王はまとめ役であっても大きな権力はなかった。

 それをあの男が壊したのだ。前王陛下の考えも理解せずに妃殿下に懸想しただけ。


 妃殿下は王女様と共に幽閉されている。公には産後の体調不良だと発表されたが、誰が信じると言うのだ。



「レナード。話がある」


 東領での反乱の知らせがあった。

 ため息をつきながら鎮圧のために準備をしていた時に、上官が話しかけてきた。


「なんでしょう」

「とりあえず俺の部屋に来てくれ」

「わかりました」


 着いていった上官の部屋には侍女がいた。鋭い目でこちらを睨んでいる。


「待たせたなマリー。こいつがレナードだ」

「お手を煩わさせて申し訳ありません」


 全く申し訳ない気持ちはこちらに伝わってはこないが、侍女は頭を下げた。


「レナード。お前は今でも前王陛下に忠誠を誓っているか」

「もちろんです。あの男など、略奪者でしかありません」


 奪うだけ奪って、国を窮地に追いやっているのだ。あの男に忠誠を誓う奴など、懐具合しか気にしない奴だけだ。

 東領の反乱も鎮圧など馬鹿馬鹿しい。しかし、国をこれ以上混乱させないためにも皆歯を食いしばって行くのだ。


「妃殿下のために命をはれるか」

「もちろんです」


 答えは簡潔だ。今ではあの方のために騎士であるといっていい。

 侍女は俺をまっすぐに見据えた後うつむいた。


「……信用しましょう。誰かを信用せねば何もなせないのですから」


 侍女は固く手を握り締め、そう漏らした。

 俺を信用していないとか、そういうことではないのだろう。

 きっと歯がゆい。そういう気持ちが見える。 

 気持ちを落ち着けるように何度か呼吸をした後、侍女は顔を上げた。


「王女様を逃がして欲しいのです」


 その後、上官とマリーと逃亡作戦の打ち合わせが始まった。

 しかし、何も王女様の一歳の誕生日に逃げ出さなくてもと思ったが、誕生日だからこそだと押し切られた。

 さらに妃殿下はお逃げにならないと。王女様のためにも自分は残るそうだ。

 別動体が妃殿下を逃がすように扮するとは聞いた。あちらはまさしく死地になるだろう。



 作戦当日、商人が箱に王女殿下を入れて馬車で城を出たはずだ。

 倉庫で王女様を受け取り、同僚のキースが別の商人に扮して荷と共に王都を出ている。

 俺は王都の外で待った。

 王都の西には林が広がり、さほど見通しはよくない。

 林を走る街道には大型の馬車が行き来できるように空き地がところどころにある。

 その一つで休憩しているかのように座ってのんびりとしている。

 王都では襲われる可能性が低いため、目立たぬように後から合流するためだ。

 何度も普通の商人の馬車を見送りながら、ひたすらに待った。

 またガラガラと車輪の音がした。


「あれ、レオか?」


 車止めの空き地に馬車が止まる。

 偽名で俺はレオ、キースはカインとなっている。俺を見てレオと呼ぶのはキースだけだ。


「おおカインか。カナーンまで行くのか?」


 俺は驚く演技をしながらキースに近づく。

 カナーンはこの門から出てよく行く町の一つだ。もちろん目的地ではない。


「ああ。レオはどこまで?」


 御者台の上からキースは話しかける。俺はため息をついた。


「王都で何か仕事があるかと思ったら、どうも乗り遅れたみたいでな。文無しで干上がりそうだ」


 同情を請うように、げんなりとする。東領の制圧部隊にあやかろうとしたのに出遅れた傭兵、という設定だ。


「相変わらずだな。カナーンなら何か仕事があるだろう。護衛として乗せてやるよ」

「ありがたい」

「ま、報酬は飯代だけな。宿は取らないから」

「そこまで贅沢は言わん。助かる」


 昔馴染みを助ける口実としての会話を終え、俺は馬を馬車に寄せた。


「この馬車、二頭だてにもなるんだ。ちょっと待ってろ」


 キースはそう言うと俺が連れた馬を素早く馬車につなぐ。


「ほら、じゃあ飯代代わりに働いてもらおうか」


 偉そうに笑いながらキースは御者台を叩いた。御者をしろということだ。


「ふん。わかった」


 俺は御者台に座り、馬を走らせた。

 キースが幌馬車の中に入り、あたりを警戒する。俺は面倒くさそうにしんどそうに馬車を走らせる。

 しばらく進んだところで少しスピードを上げた。本当ならば全力で走りたいが、このぐらいならば誤魔化せる速さのはずだ。



「キース、追っ手は見えるか」


 目視では人影が見えない。偽名をやめ、普段通りに話しかける。


「今のところは大丈夫です。しかし、門番がすんなり通しすぎでした。怪しいかと」


 キースが忌々しそうに吐き捨てた。賄賂のことだろうな。俺もいくらか払ってやり過ごした。あの男が王になってからろくなことがない。


「後方の見張りを引き続き頼む。弓はあるか」

「ありますけどね。下手なのは知っているじゃないですか」


 嘘つけ、あれで下手とよく言う。

 的に射るだけならキースよりも弓が上手い奴はいるが、キースは相手を揺さぶるのが上手い。今回は殺せなくてもマティス村まで逃げ切ればいいのだから、キースの腕で充分だ。


「ないよりマシだ」


 皮肉をこめて睨むと、腹黒な笑みを返された。信用は出来るやつだが……まぁいい。

 と、ガタガタと後ろで音がした。


「! アリノーリア様! 目が覚めましたか!」


 キースがバタバタと箱を開けた。

 泣きもせずにただ箱を鳴らしたのか……王女殿下は怖がりなのだろうか。


「アリノーリア様、大丈夫ですか?」

「ママ……」


 キースが王女を抱き上げた。

 馬車を操りながら、横目で王女殿下を確認する。

 なんて小さい。人形のような小ささに驚く。

 それに本当に妃殿下によく似ていらっしゃる。水色の髪はまだ肩にも届かないが、さらさらと風に揺れて美しい。

 キースはしっかりとアリノーリア様を抱きしめた。


「お母様とはしばらくお会いになれません。まずはアリノーリア様を安全なところにお連れするように申しつかっております」


 王女殿下はきちんとキースの話を聞いているように見える。が、一歳の幼子がそんなこと出来るのだろうか。


「私はキースと申します。今、前で御者をしているのがレナードです。私たちが一緒にいますからね」


 アリノーリア様は泣かない。母恋しさに泣くのが普通ではないのか? それとも、緊張で泣けないのだろうか。


「アリノーリア様、馬車を飛ばしますのでもう少し中に……きた!!」


 キースが叫ぶ。すぐに馬車の速度を上げた。


「目視騎馬が五、弓二、槍三!」


 一部隊だけだな。予想通りか。

 新王が手放したくないのは妃殿下のみ。追っ手を差し向けるにしてもこちらは少ないと読んでいた。

 一部隊ならば逃げ切れる。


「弓構え! アリノーリア様は箱に!」


 キースがアリノーリア様を箱の中に戻す。


「アリノーリア様、しばらくお待ちください!」


 大人しく言うことを聞いてくれるかと心配したが、大人しく箱につかまって周りを見ていた。

 キースが弓を射る。一人脱落か。全く、頼りになる。


「レナード様、そろそろ!」

「わかった! 牽制しろ!」


 片手でたずなを操りながら、片手を箱の中に突っ込む。


「アリノーリア様、失礼します!」


 問答無用で王女殿下を抱き上げたが、嫌がる素振りもなく俺にしがみついた。

 抱けばさらに小ささを実感した。何故こんな小さな幼子を狙わなくてはならないんだ!


「しがみついていてください!」


 ぎゅうと俺の服を握り締める王女殿下を肩に乗せて、馬に飛び乗る。


「キース!」


 馬にいきなり乗ったせいで速度が落ちる。


「今、いき、ます!」


 キースがもう一度だけ弓をひき、もう一頭に飛び乗った。

 まとめて持っていた手綱の一つをキースに投げる。


「離すぞ!」


 剣を抜いて振るい、馬車と馬を繋いでいた革紐を斬る。

 馬車はバランスを崩し、ガタガタとわき道にそれる。

 後ろにいた追っ手は馬車を避けるように馬を操る。今は三騎か。


「新手がニいます!」


 キツいな。王女殿下を庇いつつ五人は倒しきれない。


「キース、アリノーリア様を!」


 キースに王女殿下を投げ渡す。キースはもちろん受け止めた。


「レナード様!」

「村まで走れ! アリノーリア様を頼む!」

「……わかりました!」


 一人なら怪我はあれど何とか出来る。

 マティス村には協力者がいる。村まで行けばこのぐらいの人数は問題でないのだ。

 キースを前に行かせるように馬を後ろにつけると、王女殿下と目が合った。

 不安そうな、心配そうな。そう、俺が足止めに残ると理解しているような。

 やはり王女殿下には何かある。しかし何よりも今は身の安全が第一だ。

 安心させるように精一杯笑顔を浮かべて、馬の速度を落として敵を見据えた。


「う゛ぁぁぁあああ!」


 アリノーリア様が泣いていた。




 負けるわけにはいかない。

 追っ手の残りは槍が二、弓が一。新手はまだ遠い。

 矢が散発的に飛んでくるのを剣で叩き落とす。



 追っ手とにらみ合い、槍の間合いに入ろうとした瞬間──




 突然俺の周りに光るものが浮かび上がった。


「なっ!」

「避けろ!」


 追っ手が慌てて距離を取るが間に合わず、きらめいたソレは真っ直ぐ三人の追っ手の顔や目をえぐった。


「ぎゃぁぁあ!」


 追っ手がたまらず血に濡れた顔に手をやる。俺は黙って一番近い追っ手の首を切り裂く。


「ぐぅっ!」


 一人が落馬した。後の二人にも近づき、首を切り裂いた。


「新手は……」



 道の向こうで新手二人はきびすを返して逃げ帰っていった。残るのは三人の死体だけだ。

 これで王女殿下が逃げ出したことは向こうに知れるが、深追いするよりさっさと逃げる方がいいだろう。俺も急いで二人の後を追った。




 マティス村に着く前にキースに追いついた。早足の馬に揺られてアリノーリア様は眠っていらっしゃる。


「追っ手の残りは始末したが、新手の二人は逃げた」

「そうですか。今晩もう一度襲撃がありますかね」

「どうだろうな。マティス村で襲撃をかけるほどの気概があるやつがいるのか」


 そう、マティス村まで行けばと話していたのはマティス村が異常だからだ。

 普通魔物は不毛な土地に現れる。不毛な土地の多くはこの国の西から北が面している。

 が、このマティス村の近くにある魔の森は著しく土と風の精霊が少なく、魔物が沸くのだ。

 昔は忌み嫌われていた魔の森。それを前王陛下は逆に新兵や冒険者の修行場にすることに決めた。

 村には冒険者ギルドと共に訓練所があり、教官になるべく上位の冒険者も軍の指導者も滞在している。

 寂れて王都への通過地点でしかなかった村は、今では訓練所を支える従業員となった。

 村全体で前王陛下への忠誠は計り知れないため、王女様に襲撃など許すはずがない。



 しかし……


「先ほどの攻撃魔法、あれはキースではないな」

「はい。あの後すぐにアリノーリア様が気を失いました」

「……加護だろうな」

「おそらく。氷でしょうか?」

「ああ、そうとしか考えられないな」

「……水の神殿に寄りますか」

「さほど遠回りにもならないだろう。無駄足にはならない」


 キースはため息をついた。

 加護持ちが神殿に行くと仕事を任されると聞く。

 ただでさえ赤子な上に逃亡の身だ。どんなことを言われても無茶にしかならない。

 それでも、神殿がアリノーリア様の盾になる可能性があるならば行く価値がある。

 今はとにかく無事にマティス村に着かなくては……


レナードさんでした。

レナードさんだと業務日誌っぽいっすね。

文章硬いので次はキースさんにお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。