25 呪い持ちの行方(水の精霊視点)
ようやく月曜日更新でございます。
この部分書くかどうか迷いましたが、話が固まっているところからでも書いていかないとまた滞るわーということで上げました。
貧乏くじをひいたんでしょうね。
一人、また一人と彼女から去っていく精霊たち。
彼女は気付いていないのです。その選択には破滅しかないことを。
彼女は貴族の娘でした。
水色の真っ直ぐな髪。白い肌。優しげな眼差しは数多の男を虜にしていました。
彼女は王となる男に嫁いだのです。彼女の美貌を考えればおかしくありませんでした。
それは彼女が加護持ちでなかったら。それも四つ星でなかったら、こんなことにはならなかったのに。
彼女が幼いうちより、何度も何度も水に関する合図を出してきました。
朝に彼女が起きる前に空の水差しに水が入れておいたり、彼女が湯浴みの際に水を急に波立たせてみたり。
加護持ちと魔力循環が出来ない状態で出せる合図など、大したものはありません。私の魔力を削って合図を出すのですから。
彼女が結婚することになり、焦った私は彼女の寝室で彼女をびしょ濡れにしました。
これでいい加減水の神殿に行ってくれるだろう。私の警告に気付いてくれるだろう。
そう思ったのですが。
「私は神殿に行く訳にはまいりません。私は彼を愛しているのだから!」
彼女は加護に気付いていたのに無視をしていたのです。そのことに愕然としました。私の警告が意味をなさないなんてと。
呆れた他の精霊たちは彼女のもとを去りました。
そして、力を使い果たした私は。
呪い持ちとなった彼女に呪いを振りまく使命が与えられました。
彼女にはまず子どもができない呪いをかけました。妃が子どもが産めなければ放逐もありえると城のものが話しているのを聞いたからです。
子どもがいなければ、旅行で各地を巡ったりとかがないだろうかとも期待しましたが、彼女は頑なに水の神殿がある土地には行こうとしませんでした。
次に王を狙うことになりました。彼が死ねば土地を離れるだろうと考えたからです。
彼女に惚れていた領主に呪いをかけ、反逆するように仕向けました。もちろん反逆が成功するように呪いもかけてあります。
その間に違う使命が啓示されました。彼女に子どもを産むようにするというのです。子どもが出来ない呪いはすぐさま解き、彼女は妊娠しました。
反逆は彼女の出産直後に起こすことになりました。彼女が彼の庇護がなくなり、神殿を頼ることを期待して、です。
産まれた子どももまた加護持ちでした。納得すると共に絶望を感じます。彼女はもう用済みなのですから。
彼女は城から逃げ出しませんでした。でも、幼い彼女が損なわれては困ります。彼女には無事に加護持ちになってもらわなくては。
赤子が産まれて一年後、無事に赤子は王都を出ました。
けれど、彼女は王都を離れません。
どれほど災厄を振りまけば気が済むのでしょう。
呪いの力は、この地の水の加護の力を使うのです。そう、王都の水の加護は日に日に落ちています。水の加護がなくなれば、この地は干からびるというのに……
もう、王都に魔物でも出なくては離れられないのでしょうか?
ひと月、ふた月が過ぎ、もうダメがと私が嘆いていた時。
「王妃様。お迎えにあがりました」
むさ苦しい風貌の男が彼女を迎えにきました。
がっちりとした体。大して清潔にしていないだろう服装。髪は生えていないのに、口元には黒い髭が生えていました。
「こんな夜分に淑女の部屋に忍びこむなど、恥を知りなさい!」
彼女は金切り声を上げましたが、男は肩をすくめただけでした。
「別に迎えにきたくて迎えにきたんじゃないんですがね。王女様が水の加護持ちとなりました。ついでに王妃様が呪い持ちじゃないかって疑いがかかりましてね。国の一大事だってことで、神殿までご足労願おうってことになったんですわ」
「呪い……持ち……ですって?! 私が?!」
「王女様の守護精霊の見立てらしいっす。今回の南領の若僧……領主の反乱の件にも不自然なことが多すぎる上に、最近の王都では急速に水の加護が無くなっているそうで。まぁ、色々考えてそうだろうって話に」
ああ! 気付いてくれたのですか!
あの赤子が私達を救ってくれたのです。
これで、これで呪い持ちから解放される!
「嫌よ! 私は王都を離れないわ! あの人がいた町なんですもの!」
彼女の言葉にザッと寒気がするのを感じました。まだ災厄を振りまけというのかという怒りや憎しみと、どうしようもない彼女に対する虚しさと。
しかし、男は鼻で笑っただけでした。
「攫ってでもカテナ神殿にお連れするように命令を受けていますんでねー。下級貴族である俺には逆らえん命令でしてねー」
そう言うとさっと彼女の口に布をあて眠らせてしまいました。細い彼女には抵抗する隙も与えられませんでした。手際がよすぎです。
男は肩に彼女を担ぐと、天井に向かって話し出しました。
「えーっと、呪い持ちになった精霊さんよ」
目線は全く合わないが先ほどの口調より優しさがこめられていました。
私は驚きながらも、彼の目線の先に移動して、彼の顔を覗き込みました。
少し疲れた顔をしながらも、苦笑を浮かべた顔にさらに驚きました。
「今まで一人でよく頑張ったなぁ。まぁ、俺なんかじゃ役立たずだろうけど、一緒にいるから」
それだけ言うとさっさと窓から外に出ていってしまいました。
今から彼女には贖罪の日々がやってきます。
でも、今までよりはきっと希望が持てる日々がくるはずです。
結構最初から、悪役はおかあちゃんでした。
恋に溺れる女性の気持ちはわからないではないですが
ちゃんと現実見えてない女性はよろしくないですよね。
お母ちゃんの後日談は今のところ書く予定なしです。
次はアリィちゃんに話に戻りますー。




