23 初めまして叔父さん
お久しぶりですこんにちは!!
すいません、年末の忙しさ+一回書いたのが全部消えたので凹んでおりました。
今も大掃除中なのに、おせち作んなきゃいけないのに現実逃避気味に投下。
お気に入りを解除しないでいただいたお礼も兼ねて更新させていただきますー。
しばらく街中を走った馬車は、大きな広場に到着した。
石畳の広場を囲むように塀がある。塀は階段状になっていて、観客席のように見える。
多分正しく観客席なんじゃないかな。でも本当の理由は見晴らしがいいから警備用だろう。
太陽が正面にあるから向こうが西。私たちが来たのは東から。広場から見て西から南、そして東にかけて塀があり、北側に建物があった。塀にはいくつか通路があって、スタジアムの出入り口みたいにも見える。そうか、野球場に似ているんだ。
多分この塀はあの建物を守るためのものでもあるんだろう。普段は集会とかの観客席として。有事の時は通路を封鎖して塀となるんだ。
馬車はほどなくその建物の前についた。石造りの建物は四階建て。他の建物よりも大きく、柱も太い。同じ赤色から思い浮かべたのは前世の東京駅だが、あれほど繊細な感じはない。芸術的というより実用的。繊細な彫刻も嫌いじゃないけど、武骨な感じも嫌いじゃない。
馬車から降りると、すぐに建物前にいたお兄さんが馬車の手綱を持ってどこかに行ってしまった。厩に行ったんだろうか。
案内に現れたのはお姉さん。事務員さんって感じがする。小麦色の髪を一つにくくってシャツとロングスカートの姿。黒縁眼鏡があれば完璧だろうな。
「ご案内します」
キリッとした口調でちょっぴり無愛想。いかん、つり目にキュンときた。
『アリィは守備範囲広いな』
『アリきゅんは惚れっぽいねえ』
精霊たちの言葉は聞き流す。
玄関扉は大きく開け放たれていた。私はレナードさんに抱っこしてもらい、室内に入る。
「ふわぁー」
『アリきゅん、感激〜?』
『うん、スゴいねぇ』
玄関の天井にはシャンデリアがあった。ろうそくじゃなくて、石が光るやつだ。ほこりが見えない。あれは、一体どうやって掃除するのだろうと庶民的な感想を抱いてしまう。
玄関はさながらダンスホールのようだ。正面には大階段があり、大階段は左右に別れてぐるりと室内バルコニーが出来ている。
バルコニーの下にはいくつか扉がある。今は全て閉じられているが、全ての扉に彫刻がある。
床にはもちろん赤絨毯だ。踏んだ人がいないのではないかと思うようなフカフカさは上から見ても分かる。
「三階に参ります」
お姉さんはそう言うとしずしずと階段をのぼっていく。おお、階段の欄干にも薔薇の彫刻があるよ〜。スゴいねぇ。
二階に上がればラウンジになっているようで、赤い絨毯に簡単なテーブルセットが置いてあった。
続いて三階に上がれば普通の廊下が真っ直ぐ続いている。
廊下の窓は開け放たれていた。そよそよと吹く風が気持ちいい。
ほどなく大きな扉の前についた。重厚な扉もまた彫刻が施されていた。何となくだけど、目に付くところだけは華美にしてませんかね? 今の廊下なんて特に何もなかったのに……
「お連れしました」
お姉さんはその扉をノックした後開いた。両開きの扉を両方開いて入りやすいように扉を支えてくれる。
「ようこそ、ベルゼネブへ」
扉をくぐればすぐに男の人が挨拶してくれた。
応接セットに今まで座っていたのだろう。ソファの前に立って、三人の人間がこちらを見ていた。
「初めまして。僕がベルゼネブの領主のレオナルド・カティーナ辺境伯だよ。」
爽やかな二枚目のお兄さんがにっこりと笑う。二枚目だけど線が細いというかもやしというか。押しが弱そうな雰囲気がするな。
隣いる女性もニコニコとしている。
「妻のエイダよ。可愛いお客さんが来てくれて嬉しいわ」
ウェーブがかかった小麦色の髪が風に吹かれてふわりと揺れた。優しい若奥様、そばかすまでかわいいとかなにそれ。うわぁ、レオナルドさん爆発しろって男性から思われてそうだなぁ。
二人とは少しだけ距離をあけて立っていたおじさんがニカっと笑う。
「ギルド長のベンだ。領主と一緒に挨拶なんて変かもしれんが、一応この町の上役になるんでな。新しい加護持ちが来たら会うことになってるんだ。よろしくな」
『よろしくお願いします、親分!』
『またアリィのいらん癖が出たで』
『ああ、好きそうじゃな』
思わず念話で挨拶しちゃうと、精霊たちがまた突っ込みを入れてくる。
『頭ツルツルなのがいいのかなぁ?』
『いやこの御仁、なかなかの修羅場を越えて来ておる。そういう猛々しさが良いのではないか?』
『むさ苦しいおっちゃんなのにネー』
『いいじゃないかぁ! 男の渋みが増す四十代! そろそろ加齢臭が気になるお年頃! 外ではバリバリ仕事しながら、家に帰ってから細かいシャンプーの種類を気にしてみるギャップの可愛さ! 歴戦をくぐり抜けてきた筋肉も夜のビールに耐えきれず、ついてしまった腹周りの贅肉! それを風呂に入ってつまんで年かなぁと哀愁漂ってたりしたらもう!』
力説してみた。
『アリィ、やめてくれ』
『妄想逞しいのぅ』
『アリきゅん、具体的だねぇ。でもこのおっちゃんはシャンプーは気にしなくない?』
『うむ』
いいんだもーん。そういうシチュエーションに萌えるというだけだもーん。
こちらの念話など聞こえていないだろう大人たちの話はすすんでいく。
「この場を設けていただき、ありがとうございます。私はレトニア王都騎士団に所属しておりました、レナード・アルセットです」
「私は同じく王都騎士団に所属しておりましたキース・マニエットです」
「こちらにいらっしゃるのが亡きレトニア王国ヤール国王陛下のご息女である、第一王女アリノーリア・レトニア様です」
この名乗りには慣れないが、今はただ黙って聞くだけだ。
「うん……。姉にそっくりだ」
レオナルドさんが私の顔を覗き込む。真剣な眼差しの中に複雑な感情が渦巻いているのが見える。
「国王に害されないうちに王妃様がアリノーリア様だけをベルゼネブまで逃げるようにと指示を受けやって参りました。辺境伯にはアリノーリア様の保護をお願いしたく」
「うん。話はわかった。とにかく一度座って落ち着こう。君、お茶の用意を」
「かしこまりました」
先ほどのお姉さんが部屋のすみに置いてあったお茶器でお茶を淹れ始めた。
私達はさっきの応接セットに座る。大きめのテーブルには三人分のお茶があり、その前にレオナルドさんたち三人は座った。夫婦で長椅子に。ベンさんだけ一人がけに座る。
こちらはちょうどレオナルドさんたちの正面にあたる長椅子のようなソファにレナードさん、私、キースさんの順で座る。もちろん私の背中の後ろにはクッションを重ねてくれている。
「アリノーリアちゃんはジュースかしら?」
「じゅーちゅー」
「まぁ、賢いわねぇ。じゃあジュース用意しましょうねー。お菓子も食べるー?」
「あい!」
「まあああ!」
「エイダ落ち着いて」
「分かってるわレオ。アリノーリアちゃんは可愛いわね!」
「エイダ、落ち着いてないから」
『アレ、アリきゅんの同類だよねー』
『ほんまやな』
エイダさんときゃあきゃあやっているうちに、お茶の用意をしてもらった。
「アリノーリアちゃん、いっぱい食べてね」
「あい〜」
私はご機嫌で答えながら、クッキーを手にとった。プレーンなクッキーは赤子の口でもすんなり食べれた。とはいえ、歯はまだ四本なのでちびちびしかかじれないんだけどね。
「さて、では詳しい話に入ろうか」
「はい。では私から説明にさせていただきます」
レナードさんが立ち上がろうとしたけど、レオナルドさんが目線だけで座ったままでいいと合図する。レナードさんは浮かしかけた腰を落ち着け、少し咳払いをした。
「一年ほど前に前国王陛下が崩御されたのはご存知かと思います。その間王妃様とアリノーリア王女様は幽閉されてました。ですが、二ヶ月前の東領の反乱に乗じて王都を抜け出してまいりました」
「幽閉か」
「はい。逃げ出した直後に刺客に襲われた際、水の加護が発現しましたのでカテナ神殿に行き、加護を受けました。アリィ」
レナードさんが私の顔を覗き込む。
『あ、これってモーさんたちの出番かな? 出ていいと思う?』
『ええやろ。あの三人も加護持ちやし』
『あ、そうなんだ』
「あい〜」
私が返事をすると、モーさんたちはテーブルの上に並ぶとクルリとその場で一回転した。
「「「四人……!?」」」
やはり精霊が四人もいるのは驚きらしい。微妙に三人の顔がひきつってる。
「挨拶が遅れてすまんな。契約した順番で自己紹介させてもらうわ。カテナ神殿で契約したモリッツや。アリィが子供やさかい、まだ仮名しかつけとらへんけど堪忍な。ま、よろしゅう頼むわ」
「次に契約したのがわしじゃな。仮名をリュクセルと言う。よろしくの」
「はいはーい、アイリスだよ〜。おっさん連中に囲まれた紅一点! 頑張るのでよろしく〜」
「カエサルと申す。この中では一番の新参者ゆえ至らぬこともあろうが、精進する故よろしく頼むのである」
空気を読んでか読まずか、四人はさっさと自己紹介を済ませてしまった。
誰一人、私のつけた名は言わない。いいもんいいもん。
「あらあら〜。アリノーリアちゃんは四人と契約するなんて凄いわねぇ」
「実体化が四人……」
「あー、すまない。僕も精霊の挨拶をしたいところだけど実体化できるほどすごくないんだ。僕は土の加護持ちだよ」
「俺も二つ星だからな。火の加護持ちだが、精霊の実体化はできん」
「じゃあ、私の精霊だけお願いするわね。シリィ〜」
エイダさんが呼ぶと、ふわりと風が吹いて、エイダさんの膝の上に小さな緑の小鳥がとまっていた。
「初めましてお客人。エイダの守護精霊のシリィです。領主館内に基本的にいます。よろしく」
それだけ言うと小鳥は姿を消した。
『あれ? また消えたよ?』
「う?」
「今のは姿見せただけなんだよ〜。うちらみたいにずっと実体化しとくのは大変だからね〜。アリきゅんはすごいんだよ〜」
『なるほど〜』
アイリスの説明にレナードさんとキースさんもなるほどと頷いた。
「で、だ。その嬢ちゃんがそれだけ凄いってことは」
「うちのアリきゅんは四つ星なんだよ〜」
「四つ星……」
「あらあら〜。じゃあ使命もすごいのかしら〜?」
エイダさんの一言に呆然としていたベンさんとレオナルドさんも、ハッと気を取り直してこちらを見た。
いや、見られても私は話せませんがな。
ため息をついたモーさんは肩を落として、でもよく通る声で言った。
「アリィの使命は、ベルゼネブに湖を作ることや」
「「「は?」」」
ようやくベルネゼブの人たちと会えました。
後1~2話は大体出来ているので、手直ししてあげます。
来年は週一ペースをあまり崩さないでいけたらいいなぁ。
ではでは。良いお年をー。




