↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/27

21 規格外(レナード視点)

みなさんこんにちは。遅筆のゆうげです。

じりじりとお気に入りが増えてくれるのがうれしいです。

ptが150ですって、大御所様からしたら端ポイントかもしれませんが、すごいすごいと喜んでおります。

さて、今回は少しまた時間を飛ばしますー。



「またか」

「またですねぇ」

「あぃ……」


 アリィは怒られたと思ったのか、上目遣いでこちらを見つめている。


「アリィ。怒ってないよ。大丈夫」


 キースがアリィの頭を撫でている。少しホッとした顔はやはり赤子が浮かべるには似つかわしくない。

 ベルネゼブまで後数日となった。そして旅の随行人……いや、随行精霊は四人になった。

 複数の精霊と契約しているだけでも驚きだというのに……一体アリィは何人の精霊と契約する気なのだろうか。


「名前はなんていうんだい?」

「カエ、という名をいただき申した。よしなに頼む」


 カエという名の水色のカエルは地面にひれ伏した。


「いやいや、そこまでしなくても」

「礼儀を失しては主に申し訳がたたぬ。気になされるな」

「また個性的なのがきたねぇ」


 キースはそう言いながらモリッツに目を向けた。モリッツも頷いている。


「カエルのカエや。最初ゲロゲロ言うとったんを止めた結果や」

「さすがだねモリッツ。君がいてくれて本当に助かるよ」


 アリィ以外の全員が頷いた。アリィは膨れた顔でどこか遠くを見つめている。


「カエのままでもいいかもしれないけど……カエサル、カエリッツ、うーん」

「カエサルでよい。良い仮名を与えてくれて感謝する」

「いいじゃーん。良かったねカエっちー」


 カエサルの隣で翼をはためかせているのは、アリィにアッちゃんと名付けられたアヒルだ。仮名はアイリス。


「アイリス。それがしはカエっちではなくカエサルという仮名を」

「えー、カエっちいいじゃん。かわいいしー」

「おなごのようななよなよした言い方は好かん」

「じゃあみんなはカエサルって呼べばいいでしょー。あたしはカエっちって呼ぶしー」

「ふん、アヒル風情が偉そうだな」

「うわ、カエルのあんたが言う? もういいもん、カエっちなんてもう仲良くしてあげないんだから」

「姦しいのは好かん。貴様の声が聞こえん方が清々するの」


 二人の言い合いに慌てたのはアリィだ。二人の頭を撫で、必死に説得をしているようだ。

 いきり立っていた二人はみるみる悲しげな顔に変わっていった。

 しばらくするとアリィはホッとしたようにニコニコしだした。

 ある意味見慣れた風景にため息しか出ない。




 ベルネゼブまでの道に村は少ない。

 カテナから離れるほど畑が少なくなり、木が少なくなり、草原が少なくなっていった。今いるところは既に荒れ地と言って差し支えない。

 薪すら手に入らないため、今の馬車には薪がかなり積んである。

 すでに夜。アリィは馬車の中で眠りについた。精霊たちもアリィのそばで眠っているはずだ。

 持ってきた薪で焚き火を起こし、近くの石に腰をおろす。キースは道中で集めた草を編んで縄を作っている。俺は剣の手入れをしていた。同じ様に集めた草で魔物の血を拭き取る。川があまりないため、草で拭き取るしかない。


「今日は僕から見張りをする番ですし、そろそろ仮眠を取ってくださいね」


 キースはコップに茶を入れて俺に渡してきた。これを飲んで早く寝ろということだろう。


「すまんな」

「ついでです」


 キースは笑いながら自分のコップをかかげた。俺が黙ってコップをあてると、ガンと鈍い音がする。

 銀など高いものではもちろんない。鉄と銅を混ぜて作ったコップは騎士団の時に買ったものだ。長い付き合いのせいで傷が増えた。

 騎士団で遠征中の食器類は自分で持っていく習慣がある。キースもまた似たようなコップを持ち、コップの底には名が刻まれているはずだ。


「ベルネゼブに着いたらどうするつもりだ?」


 キースに尋ねた。キースは苦笑して首を傾げる。


「辺境伯に雇っていただくか、冒険者に鞍替えでしょうね。レナード様こそどうされるんですか?」

「同じようなものだろうな」


 茶を飲んだ。甘くて苦い、しかもピリッと辛い。木がないこのあたりは夜は風が強く冷える。冷えすぎないように生姜を入れてあるな。


「で、どうしたんです?」


 キースは笑いながら、何故今更なことを聞いたのか尋ねた。

 ベルネゼブに着き、アリィの叔父である辺境伯にアリィの保護を頼めば俺たちの成すことはない。

 だが、キースもベルネゼブに着く前に話しておきたいことがあったのを察したのだろう。



「アリノーリア様は、渡り人ではないだろうか」



 旅の間、ずっと思っていたことを口にした。

 赤子とは思えないほど落ち着いた様子。話の聞き方、理解力。全てに違和感がある。

 キースは微笑みすら浮かべながら頷いた。


「そうでしょう」

「お前もそう思っていたか」

「まぁ、あれほどの落ち着きを見せられれば」


 渡り人。

 誰もが知っているおとぎ話だ。

 ベルネゼブを興した勇者は渡り人だったという。

 幼子の寝物語にある勇者は、様々な功績をあげている。

 他の世界で生きてきた彼を神が連れてきて、この世界で生まれ変わらせた。勇者は幼い頃から大人の意識を持ち、豊富な魔力を用い魔物を圧倒し、この世界にない知識で様々なものを伝えたという。

 そう、このコップもそうだ。もともと食器は軍でまとめて持っていたものだったが、魔物との戦いでいつ飛び出していくかわからないため、常備袋を作るようになったという。

 常備袋には最低限の食料や食器、剥ぎ取り用のナイフなどが入ってる。

 何より勇者の功績で素晴らしいとされるのは料理だ。貴族から庶民に至るまで様々な料理を伝えたと聞く。

 昔は豆スープと黒パンという貧乏食が主流だったらしい。コンソメすらなかったというのだから勇者がいなければと思うと恐ろしい。

 全て伝聞でしかない。百年も前の話だ。


「で、アリノーリア様が渡り人だったとして、どうします?」

「……アリノーリア様の身の安全のためにも、我々がお側にいられるようにするべきだろう」

「辺境伯が信用ならないということですか?」

「万が一ということがある」

「娘を嫁に出せない父親みたいですよ」

「……お前が父親役だろう」

「常々思ってましたけど、父親らしいのはレナード様の方ですよ」

「いや、まだお小さいのだ。不安になるのは仕方ないだろう。例え大人の知識があったとしても抱き上げれば連れ去られるのは一瞬なのだから」

「わかりますけど、悪い虫がつかないように必死すぎます。小さい男の子が寄ってきただけで威嚇するのはやりすぎですから」

「アリノーリア様に触ろうとしたのだぞ。知らないとはいえ……」

「可愛い子どもの触れ合いでしょうが」

「いや、しかしだな」

「溺愛パパにしか見えません」


 口でこいつに勝てるはずがないのだ。

 我慢して口を閉ざす。代わりに茶を飲んだ。


「まぁ、わかります。可愛らしいですからね、アリノーリア様は。恥ずかしいところも多分にあるでしょうから、色々誤魔化していらっしゃいますけど」

「……そうだな」


 大人の意識を持ちながら、俺の膝の上に座るなど、考えれば恥ずかしいだろうが……


「いや、そもそももともとは女性とは限らないのではないか?」

「それも考えました。今はまだわかりませんし、気にしない方がいいでしょう。特にトイレや湯浴みをお世話している間は性別を気にしては逆に失礼です」

「そうだな」

「ベルネゼブに着けば辺境伯の下働きの女性にお世話をお願いできるでしょう。我々が側にいれたとしても護衛までです」

「ああ」

「……寂しいですか?」


 キースの言葉が腑に落ちる。そうか、アリノーリア様との旅が終わるのが、思いの外寂しかったらしい。

 小さく息を吐く。が、キースにはわかりやすすぎたのだろう。面白そうに笑われてしまった。


「嫁さん探さないとですね」

「うるさい」

「どんなのが好みですか?」

「ベルネゼブで嫁など見つかるか」

「あはは」


 誤魔化すためにコップを突き出せば、キースは茶を入れる。自分の分にも茶を入れて、キースは空を見上げた。


「なるようにしかなりませんよ」

「ふん」


 甘いはずの茶が苦く感じた。


ということで、保護者たちには渡り人とばれておりました。

ばれてないとかないし。保護者がその辺感じないとかないっしょ、ということでバレバレということにしました。

勇者という前例があるので、気持ちが悪いとかは思いません。

さて、次こそ、次こそベルネゼブだああ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。