19 きのせい
今回短いです。
『こんにちは〜』
木の精霊さんはニコニコしてる。のはいいんだけど。
『何で見えるの?』
素朴な疑問です。モーさんやリューちゃんが見えるのはわかるんだ。水の加護持ちだから、水の精霊が見えるってことだろうし。
『僕らは木の精霊は精霊っていうより妖精だからね。ちょっと違うんだ〜』
『妖精と精霊は違うの?』
『うん。精霊は実体化しないとみんなに見えないけど、妖精はみんな体持ってるから見えるよ。普通は見えないようにしているだけだから』
『……違いがわからないよ』
『アリィ。わしらは実体化しとるけど、誰にでも見えとるわけやないやろ。あれは姿を隠す魔法を使とっただけや。そこの木の精霊もおんなじやな』
そうなのかー。よくわかんないけど、つっこむのはやめておこう。
『で、何を知っているの?』
『何で食べ物がおいしいかって話。昔ね、勇者がここを通った時に頑張ったんだよ』
『勇者……ということは、昔の渡り人だったよね』
『そうそう。勇者はね、土の加護持ちだったんだ。で、この世界の食べ物がおいしくなかったらしくてさ、僕たち木の精霊や土の精霊と頑張って食べ物をおいしくしたんだよ』
『頑張ってって何をしたの?』
『木の精霊が魔法を使うには水か土の精霊に魔力をわけてもらうんだ。例えば勇者がトマトが甘くなる魔法を使ってって言うじゃない。勇者から土の精霊に魔力を渡して、で、木の精霊にまた魔力を渡して、魔法を使ったんだよ。そのトマトの種がまた甘い実をつけるんだ』
『あれ? でも、その勇者って加護持ちとしてはあんまりだったって』
『うん、加護は一つ星だったよ。だけどものすごい魔力を持っていてさ、精霊は強くなれないけど、魔力をあんだけもらったら魔法使いたい放題だったよ』
『へー』
まあ、とりあえずわかった。ご飯が美味しいのは勇者さんのおかげなんだろう。
品種改良以外にも料理指導とかも頑張ったんだろうな。ありがとうございます、勇者様。なむなむ。
『あれ? でもリューちゃんが知らないのはなんで?』
『勇者がここを通る時は、わしはまだこの村にはいなかったのじゃ』
『あ、そうなんだ。それにしても、昔の話だよね。木の精霊さんって不死身?』
『不死身じゃないよ、草木がなくなったら僕たちも生きていけないもん。風に流されてどこかに逃げたりするよ』
『あ、自力移動じゃないんだ』
『だって、僕植物だよ』
まあ、足が生えてる植物とかいたら怖いもんね。うん、風で移動する木の精霊、妖精? かわいいからよし。
『で、君は水の加護持ちだよね? お話したしさ、ちょっと魔力わけてくれない?』
木の精霊さんは首を傾げて、というより体全体を傾げながらおねだりしてきた。
『ダメ?』
おおう、そのつぶらな瞳は卑怯だよ、セニョリータ!!
『アリィ。おかしなこと考えとらんと』
『は! モーさんてば私の心を読まないで!!』
『駄々漏れやねん、アリィは!!』
『そうじゃのう。まあ、餞別代わりに魔力を渡してやるから、しばし待て』
『わーい、ありがとう!』
木の精霊さんはくるくるとその場で回っている。うん、めっちゃかわいい。
『ほないくでー』
『頑張るのじゃぞ』
二人はそう言うと、木の精霊さんの肩に手を当てる。
『わーい、わ……あばばばばばばばばば!!』
『えええ!? 大丈夫!?』
木の精霊さんのつぶらな瞳が、完全に瞳孔がひらいた感じになって、ガタガタ震えているんだけど!?
『な、アリィ。わかったやろ。過ぎたるは及ばざるが如しやねん』
『うむ。やはり耐え切れんかったか』
二人はさも私が悪いかのように、私に言い含める。
『あばばばばば!!』
『わかった、わかったから! とりあえずそれ止めてあげて!!』
二人ははーっとため息をついた後、木の精霊さんから手を離した。
木の精霊さんがぱたりと地面に倒れ伏してしまったのが、なんともシュールだった。
ということで、今回は昔の渡り人だった勇者様のお話でした。
色々ご飯が美味しいのは勇者様のおかげ。
勇者様は加護持ちとしては適正が低い=魔力回復率が低いと考えてください。
でも、基本的にかなりの魔力を持っていたので、率が低くてもがんがん回復していた感じです。
本人は強いけど、周りを強くすることができなかったって感じですね。




