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18 実験台が二人に増えたよ、やったね!

評価ならびにブックマークありがとうございます!!

そして一週間ごとのスローペースなのに読んでいただいてありがとうございます!




 夜が明けて朝。

 馬車の中でぬくぬくして寝た私は鳥の鳴き声で目が覚めた。

 くあっと欠伸をして目をこすり、両手を上にあげて伸びをする。

 地面に寝るよりマシとはいえ、やっぱりベッドに寝るより馬車は硬い。荷を積んでいるから私は寝れるけど保護者二人は外で寝ているから文句は言えないんだけどね。


「アリィ、起きたのかい? おはよう」


 焚き火の近くにいたキースさんが気付いて声をかけてくれた。見張りしてくれていたんだろうな、少し目が赤い。


「はよー」


 挨拶を返す。両手を前に出せばキースさんは苦笑しながら私を抱き上げて馬車からおろしてくれた。


「よく眠れたかい?」

「あい」


 頭をよしよし撫でてもらう。気持ちよくて頭が一緒にゆらゆら揺れた。


「レナードさんは水を汲みに行ったよ。帰ってきたらご飯食べようね」

「あい」


 キースさんは昨日のスープが入った鍋を火にかけた。しばらくすればいい匂いがしてくるだろう。

 キョロキョロと周りを見渡した。モーさんとリューちゃんの姿が見えない。


『モーさん〜。リューちゃん〜』


 念話で呼びかけてみた。が、返事はない。

 どこかにお散歩に行ったのかなぁ? と思いながら、キースさんに連れられておトイレをしたり身支度をしてレナードさんを待つ。


「アリィ。起きたか」


 水を桶に汲んできたレナードさんの肩にモーさんとリューちゃんはいた。


『アリィ、おはよ……』

『マッチョと癒やし系! なんて素敵な組み合わせ!』

『……朝から楽しそうやな』

『レナードさんが何故オヤジじゃないのか! 十年後に期待か!』

『オヤジがいいんか?』

『酸いも甘いも噛み分けた男の色気に痺れる惚れる憧れる! ロマンスグレーも僻眼も職人系もOKよ!』

『モリッツ。アリィが残念なのは名付けのセンスだけではなかったのじゃな』

『そやな。もうええわ』


 二人は疲れたように顔を見合わせると、私の頭の上に飛んできた。


『とりあえず、モーさんリューちゃんおはよう』

『おはようさん』

『よく眠れたようじゃな』

『あい』

「はよー」


 いけないいけない。レナードさんに挨拶を忘れていたよ。


「まだ寝ぼけているか? 昨日は疲れたかもしれんが、今日行く村でゆっくりするからな」


 レナードさんはそう言うと、水でタオルを濡らして絞り、顔を拭いてくれる。


「ちべたー」

「目やにがついているぞ」


 顔をゴシゴシしてもらった後、レナードさんのひざに寝転んで歯ブラシになる枝で歯を磨いてもらう。ちょっぴりミント味で実は赤ん坊には辛い。


『スースーするぅ……』

『涙が出ておるな』

『でも虫歯はイヤー』

『きばりや〜』


 二人の応援を受けながら頑張る。最後にうがいをして終了だ。

 凹んでいる私には朝食が。精霊の二人には果物が出される。結構林の中で果物の木があるらしく、もいでくるんだって。

 用意してもらっている間に二人に質問だ。


『モーさんとリューちゃんは朝はレナードさんと水浴び行ってたの?』

『うむ。朝の水浴びほど気持ちのよいものはないからのう』

『いいなぁ。私も行きたかったなぁ』

『また昼間に行きゃええねん。さすがに朝は赤子にゃ冷たいやろ』

『そういや、この国って四季はあるの? 水浴び出来るんだし、今は夏でいいのかな?』


 正直生まれて一年ぐらいずっと部屋の中で、あまり気温差を体感しなかった。病院の中みたいにずっと適温だったはずだ。薄手の長袖を着ていた。ただそれが赤子だからなのか、国としてなのかがわからなかった。


『正確には初夏じゃ。四季はあるのぅ』


 なるほど。つまり赤子仕様の部屋だったか、王女がいる部屋だから適温だったんだろうな。


『初夏で泳げるってことは夏は暑いんだ』

『暑いで。でも結構地域差はあるみたいやけどな』

『そうかー』


 雑談しながらもぐもぐとスープの具を食べる。昨日より煮込まれていて美味しいわ〜。

 食べる時はもちろんレナードさんの膝の上です。モーさんとリューちゃんは近くにある石の上で食べているんだけど、リューちゃんは果物がかなり気にいったみたいでどんどん食べてるわ〜。口の周りの汚しっぷりが私といい勝負だ。


「リュクセル。聞きたいんだが、これから行く村は魔物の被害は多いのか?」

「それほど多くはないの。村にはほとんど出んが、畑仕事や森に行った時に襲われることがあるらしい。とはいえ殆どが獣によるものじゃろうがな」

「ならばさほど危険はないか」


 そう言いながら、レナードさんは私の頭を撫でた。心配してくれていたようだ。


「まぁ、今回わしが魔物に出会うたのは運が悪かったからじゃろうが、アリィに会えたのじゃからこれも巡り合わせじゃよ。もうしばらくは魔物も少ないて」

「やはりベルネゼブ近くは魔物が多いか」

「あそこは魔物の巣よ。先の勇者が切り開いた村とはいえ、あんなところに住むのは正気の沙汰とは思えぬな」

「行ったことがあるのか?」

「話に聞くだけじゃ。ベルネゼブ近くから逃げてくる精霊は多いからの」

『モーさん。勇者って?』

『前に話した渡り人やな。膨大な魔力と強靭な肉体を持っとってな。ベルネゼブまで魔物を蹴散らして町を建てたんや。今ベルネゼブは魔物の討伐最前線やな』

『おおう、そんなとこ大丈夫なんかしら?』

『まぁ精霊側が強くなれば魔物の力も弱なるからな。アリィがおればいけるやろ』

『おおう、責任重大だ』


 とは言ってもやるのは魔力循環しかないんですけど。




 朝食後、馬車に揺られてリューちゃんがいた村に向かっていた。


『さ、やってまいりました。魔力循環のお時間です』

『今日はリュクセルがおるからわしはお休みやな』

『今日は二人同時に循環が意図的に出来るか実験』

『はぁ!?』

『ほう』

『はい。では右手にモーさん、左手にリューちゃんきてね』

『……やっぱ生贄が必要やったか』

『昨晩は見つからなかったのじゃろう。諦めるんじゃな』

『くぅ、わしとしたことが!』

『はいはーい。煩いよモーさん。じゃあモーさんからいくからね』


 モーさんに管を四本二セットつけたイメージをする。魔力を徐々に増やすけど、あまり増やしすぎないように気をつける。


『うががが……』

『次リューちゃんね』

『いや、モリッツが何やらおかしな声を……』


 リューちゃんが何か言ってるけど無視。正直あんな声を出している時はワザとなんだよね。

 リューちゃんにも管は四本。計八本四セットの管の魔力を調節する。


『む、これは……』


 リューちゃんが目を閉じてじっと耐えている。

 私は二人に均等に循環するように微調整中だ。結構難しく、モーさんが多くなったりリューちゃんが多くなったりする。

 なんとか同じ量を保つように調節できるようになった頃、リューちゃんが目を開けた。


『ぬぅ。なるほど。これはなかなか辛いのぅ』

『リューちゃんもキツイ?』

『うむ。いつもでは有り得ぬほど速く魔力が巡る。慣れねば辛く感じるのは仕方あるまい』

『そうかぁ。やっぱ血液循環とかと似てる感じかな。あんまり急激にやって心臓麻痺を起こしてもいけないから多少負荷をかけつつ休憩も挟んででいいかなぁ』

『……アリィ。聞いとったか? しんどいねんて』

『しんどくないように魔力循環していたら、私がおばあちゃんになってもモーさんは上位精霊なんてなれないよ。さ、ファイトー』

『ぐふっ』

『むおっ』


 少しだけ速くして普通に戻して、また速くして戻してを繰り返す。

 二人の口数が減っていく。つまらないので、口の体操も兼ねて昔の童謡を口ずさむことにした。


「おなおなおーなーおーなー♪ おうちおのーしぇーちぇー」

『……とんでもない歌っちゅうんだけはわかるわ。やめんかぁ!』

「アリィご機嫌だね〜」

「あーい」


 牛と竜を乗せて(荷)馬車は行くよー。




 さて、到着しました次の村。

 まだ昼前だけど、昨日は野宿したし今日は村でゆっくりするんだって。

 馬車を馬屋に預けて、宿に荷物を置いたらキースさんとお散歩です。レナードさんはお仕事なんだって。多分魔物の皮とか剥いでいたからその関係だと思う。


「アリィ、ほら、野菜だよ〜」

「おおー」


 キースさんが指差した畑には瑞々しいトマトが沢山ぶら下がってるよ! うわぁ、このままガブッと食べたいね!


「おやお嬢ちゃん、トマトは好きかい?」


 畑仕事をしてたおばちゃんが手を止めて声をかけてくれた。ちょっぴりふくよかで、日に焼けた肌はまさに農家のお母ちゃんって感じだ。もしかしたらそろそろ一番上の息子か娘に子どもが産まれておばあちゃんになるかもしれんぐらいかな。


「あい!」


 こういうおばちゃんに好かれて悪いことはない。元気にお返事は基本です。

 この世界でもトマトはトマトなんだね。


「いいお返事だねぇ、一個ぐらいなら持っていって構わないよ」

「すいません、よろしいのですか?」

「いいっていいって。こんな可愛い子が目ぇキラキラしてるんだよ。おばちゃんサービスしちゃうよ」

「ありがとうございます」

「あーとぅ!」

「まぁ、お礼も言えてエラいねぇ。よしよし、おばちゃんがとってあげよう。どれがいいんだい?」

「えーっちょー、こりぇー」

「まぁ赤いのちゃんと選んでるね。よしよし、ほらどうぞ。たんとおあがり」

「あーい」


 近くの石に座り、キースさんに表面を拭いてもらって、いざ実食!

 ガブッと噛みつくと、トマトとは思えない甘さが口の中を広がる。酸味も確かにあるけど、予想以上に甘い。これってフルーツトマトなんじゃ?


「あまー」

「おいしいかい? ぶふっ、顔中真っ赤にして、ほんとかわいいねぇ」


 はぐはぐと食べ進める。

 げぷっと最後にげっぷをする時には、ヘタだけが残っていた。


「アリィ、顔ふくよ」

「むぐぐぐぐぅ」


 色んなところに汁がついていたのだろう。顔だけじゃなく髪まで拭かれた。

 ちょっと食休みということだろう。のんびり畑を見ながら畑のそばのあぜ道に座って休憩することになった。キースさんものんびりしながら剣の手入れを始めている。さっきのおばちゃんは畑に仕事に戻っていった。


『それにしても、この世界って、食べ物美味しいよね』

『ん? そうか?』


 村の中では姿を隠している精霊二人に念話で話しかける。姿を隠しているのは他の人にだけだから、もちろん私には首を傾げている可愛いモーさんもバッチリ見えている。


『うん。日本で品種改良してるぐらい美味しいよ』

『にほん?』

『あ、私がもともといた国の名前なんだ。食に煩い国でね。美味しい食べ物が沢山作り出した国だし、よその国の食べ物でもどんどん取り入れて改造しちゃう国だったのよ』

『ほぅ。そうなんじゃな』

『食べ物美味しいのはかなり助かるからありがたいんだけどさ。なんか文明の進み具合と食事がアンバランスな気がするんだよね』

『ふむ。そのあたりは人が関わること。あまり我らではわからんことじゃが』


『僕わかるよー』


 土の中からぽこんと顔を出したのはピンクのお花が頭に咲いた緑の小人だった。

 う、う、え?


『え、誰?』

『初めましてー。僕は木の精霊だよ〜。そこの水の精霊さんはおひさー。元気してる〜?』


 ボーイソプラノのような声で小人さんはニコニコとリューちゃんに話しかけている。


『え、リューちゃん知り合い?』

『うむ。同じ村にいたのでな。知り合いじゃ』

『あれ? なんか実体化してない? おおー、すごいねー。さすが水の精霊さんだねえ』


 小人さんは嬉しそうに体を揺らした。


まだまだベルネゼブには着きません。というか、アリィちゃんが大きくなりません。現在1歳1ヶ月。とは思えないほど活動的。一日一回の昼寝設定がすでに辛い。

そしてまた新キャラ。どうもベルネゼブに着くまで仲間集めをしなくてはいけないようです(テキトー

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