16 もとの場所に捨ててきなさい・・・って言う?
「アリィ、それは……誰だい?」
夕暮れでお空が赤く染まり、焚き火でパチパチと頬が赤く染まる中、キースさんがリューちゃんを指差しました。
私は首を傾げてからにっこり笑います。
「りゅーちゃー」
「……ペットを飼う時はちゃんと言わなきゃダメじゃないか」
何と言えばいいのか分からなかったのだろう。キースさんはとりあえずと言う感じで私に言った。
「あい」
よくわかってませんよーって感じで返事しておく。
まぁ、子どもが昼寝していて起きたら精霊が増えていたら驚くよね。
馬車は広場の隅に置かれ、馬たちははぐはぐとあたりの草を食べている。広場の真ん中には火が焚かれ、夕食の準備がされていた。
モーさんとリューちゃんとお喋りした後、リューちゃんと契約をした。そこまでは覚えているんだけど、それから寝てしまったらしい。もう夜なのねー。
レナードさんは苦笑いしている。ちょっと諦め入ってるんじゃないかな?
『すまぬがわしから話してもよいか?』
特大ため息をつきそうなキースさんたちにちょこんと座ったリューちゃんが話し始めた。
ふむ。何から話すかの。
わしはもともとこの先の村に住む精霊じゃった。
別段変わったところのない普通の村じゃな。
麦や野菜を育て、家畜を飼い、たまに出る獣や魔物から身を守る。そんな村じゃ。
魔物が出た時は村の井戸に隠れれば大丈夫なんじゃが、たまたま村の近くの小川におって食われてしもうたんじゃ。
魔物に精霊が食われた様を知らんか。
全てを食われてしまえば精霊とて消え去るしかないがの。わしは半分だけ食われての。竜として姿を形づくることが出来なくなり、光としてしか存在できんくなった。
それでも追いかけてくる魔物から逃げる際にお主らに会うたというわけじゃな。
魔物を倒してくれて感謝する。おかげで生き長らえることができた。
それでのぅ。光でしかなかったわしじゃが、アリィが魔力循環してくれての。もともとの器に戻るだけじゃから、すんなり竜の姿に戻れたわけじゃ。ま、アリィが四つ星の加護持ちじゃからこれほどまでに早く元に戻れたわけじゃがな。
んむ。実体化したのは守護精霊として契約したからじゃ。実体化する際に魔力を使った故、アリィは先ほど寝てしまったんじゃ。リューという名をもらった。
モリッツか? あやつは少々席をはずしておるの。なに、大したことではない。すぐに戻ってくるわい。
「えーと……うん。私たちもあなたのことをリュー殿とはお呼びできないですし、何か仮名をお付けした方が良いかと思います。リュクセル殿などいかがでしょう。また、アリィがルが言えなくてと言うならルドルフとかも良いかと」
キースさんは敬語で話してる。まぁ精霊さんは偉いみたいだしねえ。
『後はルクセンブルクとかルーズベル○とか』
『アリィ。お主にはそのあたりのセンスは期待しとらんよ』
『リューちゃんひどい!』
「ならばリュクセルが良いな。アリィがくれた名に近い方が良かろう」
「ではリュクセル殿、とお呼びしましょうか」
「主らはアリィには普通に話しておるのだろう? わしにも敬語はいらぬ。堅苦しいのは嫌いじゃ」
「わかりました。いや、わかったよリュクセル。アリィを守ってくれる精霊が増えて嬉しいよ。僕はキース。これからよろしく」
「よろしく頼む」
座ったままキースさんは胸に手をあて頭を垂れる。うん、絵になる格好いい。
その様子を見ていたレナードさんも同じように礼をした。
「リュクセル、俺はレナードと言う。頼りにしている」
「微力ながら最善を尽くそう」
「些事かもしれんが、いくつか聞きたい……」
ぐぅぅぅ〜〜
「……先に飯にしよう。リュクセルは果物で良いか?」
「実体化したら食べられると聞いている。いただこう」
お腹が鳴った私が悶えている間に話は進む。
キースさんがクスクス笑いながら私の頭を撫でてくれる。
「お腹すいたね。今日はここで野宿するからね」
そういや、魔物を倒したところで?っと周りを見渡したら、さっきとちょっと場所が違うみたい。寝ている間に移動したみたいだ。
「アリィ、こい」
レナードさんが呼んでくれたので、レナードさんの足の上に座る。
キースさんがお鍋をお玉でかき回す。コンソメ系のいい匂いが漂ってるわぁ。
「アリィ、熱いから冷めるまで待とうね」
そう言うと、キースさんはよそってくれた器を横においた。代わりに火で炙ったパンを渡してくれる。
「パンは大丈夫だから先に食べていいよ」
「アリィ、貸せ。ちぎってやるから」
「いやー」
レナードさんが手を出そうとするのを、首を振って拒否する。若干寂しそうにしてるけど、丸かじりの練習中なの。
丸かじりって結構顎を使う。まだまだ筋肉が発達していないから、本当はまだ早いのかもしれないけど、これは訓練なのだ。
大体、レナードさんは過保護だ。子育てというのは何でもやればいいってもんじゃないのだ。
ガブリとパンに噛みつく。もちろん噛み切れない。でも頑張るのだ。何度かカジカジしているうちにふやけて一口分が口に入る。
噛んでも噛んでもなくならないパンを噛む。うむ、顎が疲れるね。
『アリィよ。その努力は必要なのか?』
『リューちゃん。無駄な努力なんてないのよ』
『いや、無駄なことというのはどこにでもあるもんだが』
『じゃあ、これは必要な努力なの』
『そうか。まぁ好きにするが良い』
リューちゃんはそう言うと、キースさんに切ってもらったリンゴみたいなのを口にした。
「さて、リュクセル。先ほどの話の続きをいいか?」
レナードさんが切り出すと、リューちゃんが頷いた。
「良かろう。して、何が聞きたい?」
「加護持ちは複数の精霊と契約出来るのか? また、契約すれば何か弊害はないのか?」
「ふむ。普通は複数の精霊と契約など出来ぬな。これは四つ星だから出来る、ということじゃろう。後はアリィの年じゃな。年寄りが複数の精霊の使命を負うことは酷じゃな」
「使命……アリィならば湖を作ることか?」
「ちと違うの。アリィの使命は加護持ちじゃ。加護持ちは精霊を強くすることが使命じゃ。湖を作る使命はモリッツが持つ。わしは村にいるのが使命じゃった。だがアリィと出会うたことで、モリッツの使命に協力することになったの」
「ふむ」
「使命は何か形としては見えん。が、精霊はその使命のために存在している。アリィが複数の精霊と契約しても精霊が使命を果たせると判断するから契約ができるわけじゃの」
「なるほど。年寄りだと追い先短いから精霊が使命を果たせない。だから契約できないんだね」
キースさんがうんうん頷きながら、私にスープを渡してくれた。静かにしておきなさいということだね。ありがたくいただきます。
「そうじゃ。一対一であれば年寄りだろうが魔力循環をしていくことに不満はない。だが普通の加護持ちに精霊が複数ついてしまえば、個々の精霊の魔力循環ができる量が減るのが普通じゃ」
「……アリィは普通ではないのだな?」
「モリッツと話したがの。あやつはアリィの魔力循環の量に耐えられんかったと話しておった。アリィの力を十全に使おうと思うならば、複数の精霊と契約するのは何らおかしいことはない」
『ええ、もしかしてモーさんって今逃げ出したの?』
『逃げるとは人聞きが悪いぞアリィ。そなたは少しやりすぎじゃ。少し休憩も必要じゃて』
『……はーい』
スープをうまうま食べながら、私は念話で返事をした。
「ということは、まだ増えるということか?」
「そうじゃの。行き先はベルネゼブであろう? 途中で魔物に食われた精霊がごまんとおるじゃろう。拾って契約してゆけばよい」
『そんなに沢山拾ってきて!! 元のところに捨ててらっしゃい!! って言わない?』
『アリィ、どれほどの精霊と契約する気じゃ。さすがに己の限界を超える精霊との契約は納得せんぞ』
『はーーい』
『ほんとにわかっておるのかのう?』
わかってる。わかってるよ。
多分、いっぱい拾いすぎて怒られるフラグだって、わかってるんだよ。
一週間、他の小説を読み漁っていて
毎度毎度ギリギリに話を書き上げております。
会話文ばっかりだなーって思いながら
お喋りが好きなリューちゃんにいっぱい喋ってもらいました。




