15 青髭危機一髪
気がつけばお気に入りが40件。ありがたやー、ありがたやー。
一週間に一回の投稿がちょうどいいリズムだなーって感じております。
このままのんびり続けていければいいなと。
一応30話ぐらいを目標にしていますが、こののんびりペースだと何話で終わるのか……
それは、誰にも、わかりません(妖怪風
青い光は点滅しながらよろよろとこちらに向かってくる。
そして、その後ろから魔物、多分魔物もこちらに向かってくる。
てか魔物よね。体の色は青と緑と黒を混ぜてテカらせたような感じだし、鋭い爪にぬめっと輝く牙、黄色く濁った目は普通の動物に見えない。
見ているだけで這い上がる嫌悪感。そう、あたかもGを見たかのような気持ち悪さがあれにはある。
ただ、こうゲームなんかによく出てくる魔物の基本みたいなやつだ。四足歩行だし、蝙蝠みたいな羽はついてるし。
どれぐらい大きいかなんて、正直わからない。だって一歳児の身長は確か80センチぐらい。成人女性だって大きいんだから、みんなとっても大きいとしかわからないんだ。
とにかく……
『エンカウントしちゃった!』
『あほなこと言うとらんと、はよ逃げな!』
「アリィ! 逃げるよ!」
キースさんは小脇に私を抱え、レナードさんの方に逃げ出した。もちろんモーさんも私の頭の上だ。
振り返ることはできないけど、多分あれって……
『モーさん! あの光って何!?』
『はぁ!? 他の心配せんと自分の心配しとけやアリィ!』
『いや、あれってあの光が魔物に襲われてたんじゃないの?!』
『そないゆうたかて、アリィに何ができんねん!』
モーさんの言葉が胸にささった。そりゃ一歳児に何かできるわけがない。
しかし、生粋の日本人はみなお人好しである!
『そこの光さん! 水の精霊さんならおいで!』
『アリィ!』
モーさんは怒っているけど、とにかく念話で私は叫ぶ。
よろよろしていた光はハッとしたようにピクリとすると、猛然とした勢いで私に向かってきた。
もちろん、その光を追いかける魔物もこっちに来る。
『アホー! 何をしてんねん!』
『もともとこっちにきてたんだから一緒でしょ!』
モーさんに私が怒鳴ると、モーさんもぐうと黙る。
ピィー!
キースさんが笛を吹いた。あれだね、レナードさんに危険を知らせているんだ、きっと。
「アリィ!」
レナードさんの姿が見えた! すぐに腰にある剣を抜き構える。
「アリィを馬車の中へ!」
「はい!」
キースさんは返事をすると、そのまま馬車まで走っていき私を馬車に放り込む。
「モリッツ! アリィを頼む! アリィ、ここから出ちゃダメだからね」
「わかっとる、任せて行ってきぃ」
キースさんはそれだけ言うと自分も剣を抜いて走り出した。
馬車の後ろから外を見る。ちょうど光がレナードさんの横をすり抜け、レナードさんが魔物に切りかかったところだった。
『光さん! こっち!』
光は私の方まで飛んできた。私が両手を差し出すと、その上にそっと乗る。
『こんにちは光さん。あなたは水の精霊さんよね』
私が尋ねると、光は一度だけ揺れた。多分肯定だ。
もう一度戦っている方を見た。レナードさんが魔物の胴に斬りつけ、魔物が怯んだ隙にキースさんが足を狙って突き刺している。
二人は危なげなく敵に攻撃をしている。キースさんが囮になるかと思ったけど、レナードさんが盾役でキースさんが攻撃するようだ。
魔物に出会った瞬間キースさんが慌てたのは私がいたからなんだろうな。魔物だって必死に反撃してるけど、二人はかすり傷すら負った様子はない。
ドドォーンと音をたてて魔物が倒れた。二人はとどめをさすように上から剣を突き刺す。
風が吹いてこちらにむわっと血の臭いが流れてきた。魔物の血は緑のようだ。でも普通の人間の血の臭いに近い気がする。さすが異世界、不思議だ。
「はぐれか?」
「そうですね。こんなところまで珍しい」
「はぎとりを頼む。俺は馬を見てこよう」
「アリィにも声かけてくださいよ」
「わかってる」
どうやらキースさんが素材の剥ぎ取りをするようだ。それをギルドに売るとかかな。うんうん、テンプレだね。
レナードさんが歩いてきた。返り血を浴びたようで、顔や手に緑の血がついている。赤じゃなくて良かったな。赤ならちょっとショッキングな絵面になっていただろうし。
手の上にいた精霊さんは私の後ろにするりと隠れた。手を上げている必要もなくなったので、私は手をおろす。
レナードさんがすぐそばまで来て心配そうに私を覗き込んだ。いつもなら頭を撫でてくれるけど、今日は手が汚れているもんね。
「アリィ、怪我はないか?」
「あい」
「怖かったか。もう魔物はいない。今から少し後片付けをする。大人しく待っていられるか?」
「あい」
私が返事をすれば、少し安心したようにレナードさんが頷いた。それから用事をするために去っていく。
正直、ちょっと自分に驚いていたりする。普通こういうのって、生き物を殺した罪悪感とか感じるんじゃないのかと思うんだけど。
あるのは安心感だけだ。最初に魔物を見た時Gを思い浮かべたからかな。あれをやっつけた時に似ているかもしれない。
大体、前に追っ手に追いかけられた時も人が傷付いた罪悪感とかは感じなかったな。まぁ現実味がなかったとか、自分が死ぬ恐怖とかが勝ったかもしれないけど。
あまり深く考えないようにしよう。魔物はとにかく私から見て敵なんだし。
はぁとため息をついてキースさんを見ると、小さな小刀みたいなもので魔物を切り取っている。同時に地面に穴を掘っていらないものを放り込んでいるようだ。
レナードさんは少し離れたところで汚れた服を脱いでいる。後で小川を見つけたら洗うのだろうな。
『アリィ』
ぼんやり眺めていたら、今まで黙っていたモーさんが宙に浮いてこちらを睨んでいた。
おっと、これは怒ってるな。私は頭を掻いた。
『モーさんごめん』
『反省はすれども後悔せずって感じやな』
『うん』
『はっきり言いよるなぁ。でも今のアリィに何か出来ることはないで』
『ないの?』
『ない』
モーさんはあえてハッキリと言ってるみたいだ。でも、そこに誤魔化しがあるんじゃないのかな。
私はモーさんを軽く睨んだ後、後ろにいた精霊さんに声をかけた。
『精霊さん。こっちきてくれる?』
私が声をかけると精霊さんはまた私の手の上に乗った。
『精霊さんは水の精霊なら、魔力循環できる?』
精霊さんはまた一度揺れた。それからおずおずとした感じで魔力循環を始めた。
『ちょっと助けるね』
私はそう言うと管をイメージして魔力循環を始める。精霊さんは驚いたようだけど、私に任せるように力を抜いたようだ。
管は五セットにして、沢山ゆっくりと巡らせていく。すると徐々に精霊さんの光が強くなり、段々と動物の形に近くなってきた。
『あれ? どういうこと?』
何だか余裕があるし、どんな動物か気になったので少しだけ速度を上げた。すると動物の形がしっかりとわかる。
『竜?』
『いかにも』
そこにいたのは青い竜だった。西洋風東洋風で言うなら東洋風。蛇のような胴体に長い髭、背にはトサカのようなものが生えている。ただし、やっぱり三等身サイズだ。
『えっと、これはどういうことなんだろう』
私は精霊さん改めて竜さんとモーさんを交互に見た。モーさんも驚いた顔をしている。
『説明の前に礼を言おう加護持ち殿。助けていただいた上に魔力循環までしていただき、こうして会話するまで回復することができた。感謝する』
モーさんがバリトンボイスなのに対し、竜さんはじいちゃんボイスだ。ちょっとしわがれた声がキュンとくる。やばい、素敵すぎる。
モーさんが呆れた目でこちらを見ているけど気にしない。
『どういたしまして。ただ、私は魔力循環はしたけど魔物を倒したのはレナードさんとキースさんだよ。後でお礼を……』
『あの二人は水の加護持ちやないから、この精霊はんは見えんよ』
『いかにも。そこな精霊は実体化している故に見えるが、わしの姿は水の加護持ち殿にしか見えておらん』
『なるほど。それより一回の魔力循環で光から竜さんの姿にまでなっちゃったのは何で? そもそも精霊さんって光なの?』
『そこな守護精霊はそんな説明もしとらんのか? 嘆かわしい。これほど素晴らしい加護持ち殿なのに守護精霊失格ではないか』
『だあっとれ! アリィはまだ一歳や! そない何でもかんでも説明が終わっとるかいな!』
『ふん、年齢が関係あるか? この加護持ち殿は渡り人であろう? 話がわからぬ幼子と同じように扱う道理はあるまい』
『なんやねんワレ! いきなり出てきてごっつぅ上から目線! 腹立つわぁ!』
『腹が立つのは己にやましいところがあるからだろう。何かわしが間違ったことを言っておるか? のう、加護持ち殿』
『そこで私に振らないでー』
ダメだ。この二人は相性が悪い。何で同じ水の精霊なのにこんなに性格が違うんだ。
『なんや、アリィもわしになんか文句あるんか?』
『ないよ、ないな……いやあった。私にできることないって言ったけどあったじゃない』
『う゛……』
『うむ、むしろ加護持ち殿にしかできぬことであったな。この守護精霊は保護と束縛をはき違えておるのではないか?』
『そ、束縛なんてしとらん』
『ならば、なにゆえ秘することがある。そこまで加護持ちの恩恵を受けていながら、何も話さぬ道理があるまい』
『アリィと契約したんは、四日前やで!? そりゃ話したりとらんこともあって当然やろ!』
『なぬ!? 四日だと!?』
言い合っていた竜さんががばりとこちらを向いた。目は驚愕で見開かれている。
『何ということか……四日でこれほどまでとは』
『アリィはこの年で四つ星や』
『……失礼した。確かに契約して四日では話し足りておらんこともあるだろう。詫びを申し上げよう』
『あんま謝っとる態度ちゃうけど……まあええよ』
どうやら仲直りしたようだ。竜さんが頭を下げ、モーさんが片手をふりふりしてる。
どうでもいいけど、めっちゃかわいい。頬ずりしたい。一歳児が精霊に頬ずり。うん、問題ないな。ほら、三頭身だし人形にしか見えないし。両手に人形って赤ちゃんなら普通だし。
うふふふふっと頭の中で笑いをもらしていたら、モーさんが嫌そうな目でこちらを見てる。
『アリィ。少しずつこっちに思考が流れへんようになったと思っとったけど、ちょいちょい流れてきよるからな』
『いいじゃないか、問題ないよ。うん、何も問題はない』
『開きなおったらあかんやろ』
『仲良きことは良いことであるが、説明はいらんのか?』
おっとそうでした。説明説明……
『えっと、その前にお名前をお聞きしたいかと……』
『精霊に名はない。守護精霊の契約の際に名づけを行うのでな』
おや、ということは精霊ゲットのフラグ回収か。
『アリィ、こいつと契約すんのか?』
『モーさん嫌そうだね。でも、守護精霊って増やせるの?』
『普通は増やされへん。でもアリィやからな……』
『その理由が嫌だな』
『じゃあ、四つ星やからな』
『了解。では竜さん。えっと、守護精霊になってもらえる?』
竜さんを見れば、竜さんが頷いていた。
『こちらこそ頼みたいところであった。承知した。名をいただけるか?』
『では名前……うーん、ドラちゃん、ドッちゃん、ゴンちゃん』
『……加護持ち殿は……』
『気持ちはわかるが諦めぇ』
『う……わしも下位精霊としてのプライドがあるのだがな……』
『二人ともひどいな!! じゃあ、リューちゃん!!』
『保護者がな、仮名をつけてくれるんや。わしはモーさんでモリッツやった』
『なるほど。まあ幼子が最初から良い名をつけれるはずがあるまい。仮名に期待しよう』
『中位に上がる時は仮名を真名にしようと思ってんねん』
『良い考えだ。では加護持ち殿……アリィであったか。契約を頼む』
『二人ともひどいや』
私は両手をついてうな垂れた。竜さんはモーさんと一緒にふよふよ浮いて、私のつむじを眺めていることだろう。
『アリィ殿のつむじは左巻きだな』
『つむじの左巻きは変わりものやったか?』
『つむじが二つあれば天才と言われた気がするな』
『アリィは天才肌やないからな。確かに加護持ちとしては素晴らしいかもしれんがなぁ』
二人の追い討ちに、しばらくそのまま黄昏ていた私は悪くない。
ということで、おじいちゃん成分追加になりました。
わしの一人称が二人になっちゃった。でも、口調は違うので気にしない。
モーさんは大阪南部の方言のつもりです。
○○はんは京都弁と思われていますが、大阪でも○○さんの代わりに○○はんって言ったりします。そりゃ大阪商人は京都とも付き合いありますからね。
次回はリューちゃんと一緒に精霊講座です。モーさんが話したりていないところをフォローしてもらいましょー。
二人の漫才で話が進まない可能性を感じます。




