14 再び始まる馬車の旅
先週に続き、今週もギリギリー。
余裕ぶっこいて予約投稿にしたいのにいいい!!
でも締め切りがあるから書き進められています。
締め切りって大事ですね。
それより、お気に入りが30件突破していることにびっくりでございます。
こんなつたない小説を読んでいただきありがとうございます。
やっぱり読んでくれている人がいるって素晴らしいですね。頑張ろうって思えます。
モーさんから事情を聞いてから三日が経った。
私の生活は取り立てて変わるはずもない。赤子はご飯食べて遊んで寝るのが仕事だ。
湖で泳いだり、神殿のお姉さんたちとお茶したり、神殿の中をお散歩したりとのんびりと過ごした。
まぁ、表面上は。
『モーさん。乗って』
『ア、アリィさん。別にそこまで焦らんでも』
『ダメ』
『……はい』
モーさんが私の頭の上に乗る。それが最近の定位置だ。
何をしているかというと魔力循環だ。
最初のうちは波○拳だー、癒やしの手だー、と遊んでいたけれど、やってるうちに徐々にコツがわかってきた。
魔力循環って実は血液循環に似てるんじゃないかな、と思いついたのが最初。
だって循環だからね。入って出てを同じ場所でやるより動脈静脈みたいなもんにした方がいいはずじゃない。
そもそも心臓は不随意筋で出来ているから、心臓を動かすからって意識しない。血液が流れるだけで疲れたりもしない。
加護持ちの魔力は減らないし疲れもしないなら、それはある意味人工心臓や人工肺と似たものと考えたらいいのではないだろうかと考えたわけだ。
そこでイメージを管が沢山繋がった患者にしてみた。もちろん患者はモーさん。
まず管が一セット。モーさんから管の一つから魔力が私に入り、もう一つの管からモーさんに魔力が返される。
これが思いの外スムーズにいった。こちらも気合い入れずにスルスルと魔力が巡るのを感じた。
そこで次に管を増やしていくことにした。イメージの中では五セットまで増やせた。しかしここでもう一セット増やそうとしてもうまくいかなかった。理由はわからないが、まぁいい。
次にもう一度管のイメージを一セットに戻して、今度は速さをあげてみた。運動して心拍数をあげる感じ。
これもうまくいったので、管を増やしながらスピードを上げていくとモーさんから待ったがかかった。
『アリィ、ちょっとしんどい』
『しんどいの? え、大丈夫?』
『少ない量で速いのはいけたけど、大量に速くはあかん。こっちの器がもたん』
『ああ、耐久性の問題を忘れてた』
そりゃ運動しているのと同じだけの心拍数がずっとはしんどいか。ということは。
『ほどほどの量をそこそこ速く、しかも長くするのがいいか』
そう、短距離走ではなくウォーキングやジョギングのように。目標はフルマラソン。
『たしか筋力トレーニングは一日おきが最適か。器の成長にどれが一番いいかわからないから一週間ごとに実験かな』
『え、え?』
『まずは一週間朝昼晩と魔力循環を毎日するかな』
ということで、魔力循環というトレーニングが始まったわけだ。
最初はしんどいと話していたモーさんも次第に文句を言わなくなったのは良かったものの。
循環後に筋肉痛で動けなくなった中年おじさんのようにピクピクしているので、手を繋いでではなく頭の上に乗せてやるようにした。これなら動けなくなっても問題ない。ヘルメットぐらいの重さしかないし。
『なぁアリィ。毎日はしんどいで。一日おきにしよ。な?』
往生際が悪いモーさんが頭の上から何か言ってる。
『いや、一週間は実験だから。現状で魔力が減っているならやめるけど、減ってるの?』
『減っとらへんけどな。気力が続かんやろ?』
『モーさん、まさしく三日坊主だね。そんな理由ならばやめないよ。モーさんは寝ててもいいんだし』
たしか人工透析も本人は座っているだけだもんね。通うのが面倒なだけだし。
『……い、嫌や。わしはのんびりダラダラ生きたいねん!』
いきなりモーさんが飛び立つ。向かう先は扉だけど、私が脱走を予想していなかったというのか?
「きーちゅー!」
私が叫ぶと部屋の前にいただろうキースさんが扉をあけた。そして目の前に飛んできたモーさんを鷲掴みにする。
「おやモリッツ。お散歩かい? アリィと一緒に行けばいいのに」
「離せやキース! わしの体力は無限やないねん! そう毎日毎日魔力循環なんかやってられるか!」
「何を言ってるのかなぁ。弓や剣の訓練も毎日やるものだよ。しかもモリッツはアリィの頭の上に乗るだけ。ワガママも大概にしとこうか」
「乗るだけやないやろ! わしの様子知っとるがな!」
「訓練ならば半日耐久が、モリッツは一日三度だけ。何も問題ないね」
「嫌やーー!」
モーさんがジタバタするけど、キースさんは冷静にチョップをかました。
「がふっ!」
「ふえっ?!」
「はい、アリィ。頑張ってね」
えっと、首に手刀かましたんだよねキースさん。
モーさん気絶してるんだけど。三頭身なのに首あるのかな。いや、その前に色々大丈夫かな。キースさん実はおっかないんだなとか。
頭の中でぐるぐる考えていたけど、その私の頭にモーさんが乗せられた。ちょっと魔力循環してみると問題なく循環されてる。
まあ、逃げ出さなくなったからよしとしよう。
最初はゆっくりと一セットだけで回す。で、二セット三セットと増やして今度は速度を上げる。
「ぐぅっ……」
モーさんが呻いて身じろぎをしたところで少しだけ速度を落とす。そのまま維持だ。
「アリィ、準備はいいかい? 今日からまた馬車に乗るからね」
「あい!」
今日からまた旅立ちなんだそうだ。昨日のうちに教えてもらっていたから驚きはない。
「レナードさんはもう荷物を積んで馬車で待ってるからね。神殿のみなさんにご挨拶してから行こうね」
「あーい」
元気よく手をあげて返事をした。まだまだ歩くのは遅いので、キースさんに抱っこしてもらう。
「えへへ〜」
「ご機嫌だね。さ、行こうか」
「あい」
しっかり抱っこしてもらい、何日かお世話になった神殿の部屋を後にした。
「アリィちゃーーん! また来てねー!」
エレーナさんたち巫女さんに別れを惜しまれつつ、馬車は進み出す。
「キース、なぜモリッツは寝ている?」
レナードさんが御者をしながら御者台のすぐ後ろに座るキースさんに尋ねた。キースさんは肩をすくめる。
「魔力循環が嫌で逃げ出そうとしたんですよ。全くアリィも頑張っているのに」
その言葉にレナードさんは頷くと興味を失ったように前に集中しだした。
二人とも私が魔力循環をしているのは知ってる。
私は夢の中で湖の精霊さんに魔力循環を教えてもらった。魔力循環をする=褒められると私は思っているし、私には負担がないのでどんどん見境なく魔力循環をしている、っていう話になっている。
まぁ理由はさておき、一歳の赤子は保護者が喜ぶことを繰り返すのが普通だろう。一歳なりたてではさすがに早い気もするけど、二人は子育て経験もなさそうだし。
私はそんなことを考えながら馬車の後ろに座って後ろでまだ手を振る巫女さんたちに手を振り返していた。
『アリィ……』
ひくーい声でモーさんが声をかけてきた。が、気にしない。
『起きた?』
『この鬼畜が……』
『鬼畜じゃないよー。私の昼寝の時や食事の時はしてないじゃない』
そう、朝昼晩というのは朝ご飯を食べてから昼まで、昼寝をしてから夕方まで、それから夜寝る前の三回だ。
朝と昼は二時間ずつ、夜は一時間にもならない。全部で五時間。パートのお仕事並だ。
そりゃしんどくないわけはないだろう。でも最初が何でもしんどいんだ。慣れてもらわないといけない。
『そりゃアリィはしんどないかもしらんがな。わしはしんどいねん』
『とっとと湖作ろうって話したじゃない。それとも私がおばあさんになるまで待つの?』
『そこまで言っとらへんが……』
『大体さ、私の加護でどれぐらいで上級精霊クラスになれるかわからないんだし、頑張るのは当たり前でしょ』
『……なんでこんなに熱血やねん』
『違う、熱血じゃない』
『ちゃうんか?』
『面倒ごとは先に片付けるに限る』
『……そうかー』
馬車はガタガタ揺れた。ぼんやりとお空を見上げれば、青い空にぽっかりと雲が浮かんでる。
『おにぎり食ーべたーいなー』
私の無駄話に付き合わず、モーさんは沈黙したまま魔力循環に耐えていた。
『……アリィ、なんかおる』
『え?』
町からしばらく進んだところで、モーさんが話しかけてきた。
周りをキョロキョロ見ても何もない。
「アリィ、どうしたんだい?」
帳簿をつけていたキースさんが私に話しかけてきた。でも、私だって何だかわからない。
首を傾げて、目線だけモーさんの方を見る。キースさんもわかったようでモーさんに声をかける。
「モリッツ。何かあったのかい?」
「レナードやキースにはわからんかもしれん。何かおる」
その言葉にレナードさんとキースさんの表情に緊張が走る。馬車のスピードは変わらないがレナードさんは剣の位置を確かめるし、キースさんもすぐに帳簿を閉じて箱の中に片付けた。
「何か悪いものかい?」
「今感じとんのは悪い感じはせえへん。ただ、なんちゅうか……弱い感じやな」
「悪い感じはしないのか……馬車を止めるぞ」
レナードさんはそういうと街道の車止めに馬車を止めた。
まわりは針葉樹の林だ。林の中に作られた街道という名の土道で、馬車の行き来がしやすいようにところどころ車止めの広場がある。ちょうどよいタイミングだったんだろうな。
「アリィは馬車に乗っているんだよ。ちょっと見てくるから」
キースさんはそういうと馬車を降りて周りを確認しに行った。レナードさんはいつでも馬車を動かせるように手綱を持ったままだ。
「どうだ、キース」
「うーん。特に何もないですね。魔物がいる様子もないですし……」
「モリッツは悪い感じはしないと言ったが」
「わしもわからんねん。なんやこれ」
「無視はしないほうがよさそうか?」
「うーん、ちょっと判断に困るわ」
保護者達が相談しているが、私にはどうにもできません。
どうしたものかいなーって思っていると、ちょっとここで休憩してみることになった。
馬車から降ろしてもらい、近くにある石に腰掛けた。
「アリィ、おしっこはないかい? 今のうちに行っておこうか?」
「あい!」
キースさんの言葉に手を上げた。だって、いつおトイレいけるかわからないからね。行ける時には行っておかないと!!
キースさんとモーさんについてきてもらい、がさがさと林の中を進む。虫とかがいないことを確認して、ちょっとだけ穴を掘ってその中に用を足す。
一応二人とも見たら悪いと思っているようで、用を足す時はちょっと向こうを見ていてくれる。まあ、恥ずかしいことには変わりないけど、もう慣れました。危険ですからね色々と。
おまたを綺麗にして、かぼちゃのパンツをはき、穴を戻してさあ帰ろうとした時。
あれ? 何か光ってる。
手をつないでくれているキースさんの手をひっぱった。
「アリィ、なんだい?」
「うー」
私は喋る代わりに、光のほうを指差した。それから念話でモーさんに話しかける。
『モーさん、モーさん。何かいるよ』
『え? どこや?』
『ほら、あそこ。何か光ってるよ』
「あ、ほんまや。あそこ何か光っとるわ……ってはぁ!?」
「え? うわ!」
ほんの少し青みがかった光の後ろから。
「グガァァァァァァァッ!!!」
大きな大きな狼さんが現れましたとさ!
さて、のんべんだらりとする予定だったのにお次はバトルシーンでございます。
いえい、バトル。
……書けるんだろうか……




