12 おかしい! 私がそんなにすごいはずはない!!
正直行き詰ってます。大風呂敷広げすぎ。
モーさん「わしかてこんなめんどいの嫌や」
ですよねー。
「はあぁぁ!? わしが上位精霊!?」
モーさんが目を見開いて大声をあげた。
モーさんも初耳だったんだなぁ。
何だか驚いている人を見たら冷静になれたわ。
「モリッツ、どうしたんだい?」
キースさんが驚いてこちらにきた。
そりゃ驚くよねえ。さて、どう説明したものか。
神殿の精霊さんの夢から目が覚めると、神殿のいつもの部屋で寝ていた。
時間はおやつには少し早い時間だったらしく、オムツだけ変えてもらってお部屋でゴロゴロしながらモーさんとお話していた。
夢に神殿の精霊さんが出てきたところまではモーさんも予想の範囲内だったんだけどねぇ。
「あー、悪いなキース。ちょいアリィから話を聞いたらみんなに話すわな。わしも少し混乱しとるし」
「アリィが話しているのかい?!」
「細切れに話を伝えてきとるから、全部把握するのに時間かかるねん。おやつの時間には聞き終わると思うからレナード呼んどいて」
「わかった。アリィ。お話頑張ってね」
「あい!」
キースさんが頭を撫でてくれたので、元気よく挙手しておく。
モーさんはレナードさんやキースさんと仲がよくなったみたいだ。レナードはんとかキースはんとか言わないんだねえ。
しかもモーさんてば上手に話すなぁ。なるほど、確かに精霊さんが私の夢に出てきたけど、私は何となくしか分かってないという設定なんだね。私の語彙が少ないからイメージを伝えあってるってニュアンスなんかな。本当は喋っているけど。
『モーさん、ナイス誤魔化し!』
『茶化さんでええ。そんなことより、わしに上位精霊になれ言うたんやな!』
『湖作って神殿作って町興せって言ったんだけど』
『どっかに中位精霊がおるって話は?』
『なかったねえ』
『まじかい……』
モーさんが頭を抱えている。
『え、なんで? 大出世とかじゃないの?』
『大出世や。大出世やな。責任ある立場や。羨ましいやろ。アリィも一生籠の鳥や。加護だけに籠ってか。やかましいわ!』
『モーさん落ち着いて。そんなに嫌なの?』
『なんでわしやねん。他にもなりたいやつなんてなんぼでもおるやん。わしやのうてもええやないか』
『モーさん、おーい』
モーさんが百面相してるからキースさんが横から心配そうにしてるよ。
まぁ私にゃフォローなんてできないんだけどさ。
『もうええ。好き放題したんねん』
『えっと、何が?』
『わしが上位精霊になったらその町で一番エラなんねん。やから、中位精霊に全部任してわしが旅に出てもええねん』
『いやダメでしょそれ』
『なんやねん、アリィも引きこもり生活なんねんで! 嫌やろ?』
『ネットもゲームもないのは辛いけど、神殿権限で本とか取り寄せられるなら多少大丈夫かな』
『何やて!? 一歳にしてすでに引きこもり宣言やと!』
『いや、旅行も好きだけど、町中うろついてもダメなくらいなの? せいぜいこの町にいなさいってとこじゃないの?』
『町て、僻地や。開発村や! 何もないんやで!』
『おおぅ。でも町にいても結局話す人なんて決まってくるよね』
『あかん、この一歳児枯れとる!』
『大体、湖が出来たら私はモーさんと離れて新しい精霊とお役目があるかもって』
『裏切りものー! わしを人柱、精霊柱にする気やな!』
『うん、まぁ落ち着こうよ。ね』
しばらくモーさんが落ち着くまで時間がかかった。
しばらくしてからレナードさんがおやつを持ってきてくれた。新鮮な牛乳とお芋さんだ。この世界、サツマイモあるんだよね。名前は紅芋だけど。まぁさつまがないもんね。
ちなみにモーさんの前には果物だ。今日は夏みかんみたいなやつが置いてある。
「それでモリッツ。何か分かったのかい?」
キースさんが私に食べさせながら、モーさんに聞いた。牛乳はこぼすと大惨事なので甘んじて食事介助を受けております。
「アリィが夢の中で神殿の上位精霊はんと話をしたらしい。ベルネゼブに行くのは変わらんけど、わしに上位精霊になれと話したそうや」
「えっと……、それはどれぐらいすごいことなのかな?」
キースさんがモーさんに尋ねる。私にもいまいち話の凄さが分からないや。
お芋さんを両手に持ってちびちび食べつつ、モーさんを見る。モーさんはため息をついた。
「わしら下位精霊の力を百とするやろ。その上の中位精霊の力が一万。上位精霊の力が百万ってとこやねん。一つ星の加護持ちとやったら、下位から上位になるにはざっと一万年かかるわ」
「「なっ!?」」
「しかもそれは魔力の損耗がない場合や。一体何年かかるかわからんやろ」
うわぁ、確かにそれは大事だ。
「せやから、わしはどこかの中位精霊を探してくるんやと思とってん。中位からなら一つ星でも百年で上位精霊になれる。アリィと一緒ならもっとはよなれるやろ」
んー、一つ星って多分一番弱い加護持ちだよね。この計算でいくと一つ星で一年に百加算が固定なんかな。
『アリィ。数値にはなっとらへんから、そのあたりは適当や』
『わぁ、設定適当な!』
『メタ発言は勘弁して』
はーっとモーさんは何度目かになるため息をつきながら眉間を揉んでいる。
「アリィの夢に上位精霊はんが出てくんのは予想してたからええねん。わしに直接言わんのはカテナの上位精霊はんらしいし」
「えっとモリッツ。それでこれからどうしたらいいんだい?」
「ベルネゼブに行くんは変わらへん。寄り道も別にいらん。とにかくベルネゼブに行くまでにアリィに魔力循環してもらってわしの力を高める。正直どれぐらいでわしが上位精霊並になるかはわからへん。で、問題はその先や。カテナの上位精霊はんが言うにはベルネゼブに四属性全ての神殿が建てられるんやと」
「「は?」」
レナードさんとキースさんがポカンと口をあけている。正直二人のそんな顔を見たのは初めてだ。
「えっと、同じ場所に違う属性の神殿って建てれないんじゃないのかい?」
「別に建てれん訳やないらしい。多分今までは条件に合わへんかったんやろうな。ただベルネゼブは可能やっちゅうことや」
「……おい。モリッツ……アリノーリア様は王女だぞ」
何かに気付いたらしいレナードさんが目を見開いている。
それを見たモーさんが頷いた。
「多分レナードが考えとるので合っとる。アリィは王位継承権がある。そんなアリィがおるベルネゼブで四属性の神殿建ててみぃ。一気に国内バランス変わるわ。今の王都の精霊の力も弱くなっとるし、アリィが女王で立てばベルネゼブが王都や」
『はぁ!?』
え、え、え!? 私が女王って何それ。何なのそれ!
「……可能性はあるな。アリノーリア様が成人するまで後十四年。それまでに神殿が建つかどうかか」
「そや。これはやってみんと分からん。多分水の神殿が建つだけやと王都にするのは難しいしな。他の属性がどうなるかもある」
「えー。かなり大事になってきたよね」
「正直めんどいわ。でもなぁ。いい機会なんかもしれん。今のままやとまた同じことが起こるかもしれんやろ。もう少し国と神殿が近寄らないとあかんで」
「それは確かに」
キースさんがうんうんと頷いているけど、え、何だろう。話がついていけないや。
「モリッツ。アリィとモリッツがやるべきことは分かった。我らはベルネゼブに力のある貴族を集めなくてはいけないだろうな」
「そやなぁ。わしらはそれは無理やし、何でもすぐにっちゅうわけにはいかんやろ。よろしゅう頼むわ」
「任された。我々はカテナの軍部と接触しよう。まだ何日か猶予はあるか? ないなら俺だけ後から追いかけるが」
「数日なら大丈夫やで。アリィもゆっくりさせたらなあかんやろ。ここまで強行軍やったんやろ」
「すまん。助かる」
えっと、私はマジで何者なんでしょうか。
私の手からポロリとお芋さんが落ちたけど、私は拾うことはなかった。
話が王都移転まで出てしまいました。
アリィちゃんはどんだけのものを背負ったらいいんでしょうか?




