11 夢の中でおしゃべり
一週間に一本書くのでもかなり必死でした。
毎日投稿されている方ってすごいですね。
お腹がいっぱいになれば眠たくなるのが赤子の仕様で。
くあっと欠伸をしたら、レナードさんが抱っこしてくれた。
「神殿に戻る。アリィは寝ていいぞ」
「あぃ」
目をこすりながら、モーさんを見た。
『おやすみモーさん』
『おう、よう寝えや』
トントンとレナードさんに背中を叩かれたらすぐに眠りの世界に誘われたよ。
気がつけば水色の世界再び。そして現れる水の精霊さん。
「ああ、やっぱり」
「やぁ。今日は湖で楽しく遊んでたね」
精霊さんは神殿の時と同じく人型だ。小さな男の子の形をしている。全部水だけど、形はザ美少年って感じ。水の王子様とか、何か小説でありそうだ。
「驚かないんだね」
「まあね。私が水の中に入ることで魔力循環していたの?」
「そう。四つ星クラスはなかなかいないからね。僕も人型になったのは久しぶりなんだよ。神殿ではちょっとだけだったから、湖で泳いでいる間に循環させてもらったんだ。力も充実させてもらったし、ちょっとお喋りでもと思ってさ」
やっぱりか。加護持ちだなんだって言うのに小難しいことは一切なしで水遊びなんておかしいと思った。
湖の中にいる間ももの凄く気持ち良かったしね。あれが精霊に魔力循環をしてもらう感覚なんだろうな。
「四つ星って?」
「あれ、説明されてないのか」
「簡単に教えて」
「加護の強さの五段階中、上から二番目の強さってこと。君が水の精霊に好かれれば、より加護が強くなる」
「ふむ」
五段階の二番目か。結構悪くないんじゃないだろうか。そういや、なかなかいないぐらい強い加護だって話していたっけ。
「レナードさんやキースさんやモーさんが疲れた顔をしてたの。私が手伝えることはある?」
「その件では君に出来ることはないよ」
ちくしょー、ちゃんとその件ではって言ったな。
くすりと笑う上位精霊に私は聞いた。
「そう。じゃあ私に出来ることは何なの?」
「ベルネゼブというところに行って湖を作ってきてほしい」
「……は?」
「あはは。びっくりした?」
「そりゃびっくりするよ。え、湖って作るもの?」
「いい反応だねえ。説明しがいがあるよ」
「……説明してもらいましょ」
「うんうん。さて、どこから説明しようかな」
この世界には精霊と魔物がいるんだ。
人間は精霊側だね。人間は魔物と共存できないし。動物も精霊側だよ。
精霊と魔物は生存競争をしてる。魔力の奪い合いをしていると思ったらいい。
何故? うーん、そう出来ているから、かな。
精霊は魔力を高めるために人間や動植物を使う。加護持ちの人間で魔力循環をしたり、豊かな森や人間が村を作ることで精霊の魔力は増える。
魔物は精霊を食らって魔力を得る。ひどく単純だけど強いよね。
魔物に対抗するのはやっぱり人間だ。剣や魔法を使って魔物を倒す。
ん? 魔法は精霊が戦うんじゃないかって? 違うなぁ。
精霊は魔法使いの魔力を使って動いているだけ。魔法使いの指示通りには動くけど、精霊自身の魔力を減らすようなことはしないよ。
昼間の遊んでいる時の魔法はもちろん君の魔力を使っていたさ。でも、波立てたり渦を巻いたりしただけだからね。君が魔力循環すればしぐに回復するぐらいの魔力だよ。
魔法使いは早死にっていうのはまぁ確かにそうかな。魔法使いは魔力がなくなっても気力を振り絞って魔法を使おうとすることが多いんだよ。そんなの擦り切れちゃうに決まってるでしょ。
湖の話ね。うんうん。
今はあそこ何もないんだけどさ。あそこって本当はかなり立地条件いいんだよ。
あそこなら四属性全部の神殿が建てられる。今は四属性の上位精霊がバラバラだからね。とても非効率なんだよね。そう、あそこを人間の都市にしたいんだ。
え、無理? ああ、都市にすること? 別に君ひとりでやらなくていいよ。とにかく湖さえ出来ればそこに上位精霊を据えて、で、他の上位精霊も来れば勝手に町は大きくなるでしょ。
湖を作るのが無理? いや、君しか無理だし。僕でも無理だから。
どうやるかって? 君の守護精霊を上位精霊と同じだけ強くしたらいい。あそこの地下には水脈があるからね。上位精霊の力があれば水が出てくるさ。
強くするには魔力循環だね。守護精霊だけじゃ足りなければ他の精霊を連れていってもいいし。
ん? 地下水脈なら土の精霊がいるんじゃないかって? ああ、それいいね。多分向こうに加護持ちいっぱいいるだろうから、みんなで頑張ってよ。
え? 僕? 僕はこの湖にいなきゃ。僕がいなくなればこのあたりみんな干上がっちゃうよー。
やり方は、まあ行けばわかるよ。口で説明すると地面の下にサラサラ〜と流れるものがあるからそれをグワーと持ち上げてドッカーンって感じ。それでザーッと水が出てくるから、後は水がいっぱいになるまで出して、栓をしてグルグル回すんだ。
あっはっはっ。わかんないよねー。
私は小さな腕を組んで考える。
何だか色々壮大だ。湖作るって、ダム建設だよね。赤子に何を言ってるんだか。
「あのね。モーさんが守護精霊から上位精霊になっちゃったら、モーさんは私の守護精霊じゃなくなるの?」
「んー。場合によるかな。君がベルネゼブに留まるなら守護精霊のままでいいわけだし」
「私に守護精霊がいなくてもいいの?」
「いや、彼と別れるだけで新しい子がくると思うよ」
ふむと頷いて考えをまとめる。
精霊と人間は共存共栄なんだろうな。どちらか片方だけでもうまくいかないようになっている。魔物対精霊、人間、動植物の連合軍か。
ごちゃごちゃとややこしくなってきた。
一応転生の醍醐味、前世の記憶を使ってシミュレーションゲーム的に考えてみるか。
加護持ちがいることで、ターンごとに近くにいる同じ属性の精霊が強くなる。
強くなる倍率は五つ星だと5%アップ、一つ星なら1%アップとかかな。
それぞれの属性の自然効果範囲内ならボーナス加算あり。
水なら湖や海、火なら火山とか。動植物も自然に含む。
自然効果が一定以上かつ上位精霊の出現で神殿建設が可能。
魔物を倒すのは人間。剣や魔法で戦うわけだ。
魔法の場合相性のいい属性ならば威力が倍。その場の精霊の力によって威力が増減するとか。
こんな感じだろうか。
神殿を一カ所にまとめられていないのはまだゲーム初期ってことなんだろうな。
神殿と政治がうまく機能すれば、加護持ちをもっとうまく見つけることが出来るのに。
「何で神殿と国って仲良くしないの?」
念話を使っているつもりはないけど、多分考えは伝わっているんだろうな。精霊さんはこちらの質問に動じなかった。
「これはねぇ、昔の渡り人に政教分離を唱えたのがいてさあ。またすごい説得力があったもんだから、その時代に徹底的に別れたんだよ」
「政教分離……まぁわからんでもないけど、この世界では分離させちゃダメじゃない」
「僕もそう思ったんだけどねえ。まぁ一精霊の力なんて人間社会には通用しないんだよ。僕、人間の気持ちわかんないし」
「そうなの?」
「うん。親子で一緒な暮らしたいから別の土地に行きたくないとかさ。じゃあ親子で行けば?って言っても馴染んだ土地を離れたくないとか言ってさ。行かないと困るんだから行けよって思う」
「ああ、なるほど」
「国と神殿の癒着? 横領? 賄賂? よくわかんないんだよねー。 お金なんて単なる金属だし、人間の地位なんて精霊の加護よりえらいの?」
「あー。そうかぁ」
徹底的な政教分離の結果、加護持ちが正当に評価されていないんだね。
精霊ありきの世界なのに政教分離なんてしたせいで社会のシステム自体がかなりおかしくなっているのか。
「この国だけ? 他の国や大陸は?」
「いやー、それがさ。わかんないんだよ」
「わからない? 精霊同士で話せたりしないの?」
「万能ならいいんだけどね。近くの精霊としか話せないよ」
「そうなんだ。便利なものはないんだね」
「ないんだよねー」
「じゃあどうやって他の精霊がベルネゼブまで来るの? そもそもなぜベルネゼブがいいってわかるの?」
「それはね。神のお告げなんだ。」
神様のお告げ……。
あれ、なかなか会えないんじゃなかったっけ? 神殿にいるような精霊さんだからいいのか。
ちょっと待て。それだと本当にシミュレーションゲームみたいなもんじゃ。
神様が万能じゃないのは、政教分離みたいな失策を放置している時点で明らかだし。
普通のプレイヤーでしかない神様が駒を動かしているだけなら、あり得るわけで。
いや、それより世界の決まりごととかで、神様はあまりこの世界に干渉できないとかの方があり得るのか?
「神様とお話したことは?」
「お告げは本当に一方的なんだ。声が聞こえるわけじゃなくて、何をすればいいかわかるだけ。しかもごくたまにだしね」
……何らかの要因で力かポイントが貯まったらお告げの指示ができるってとこかな。
まぁいいか。どう考えても無茶振りされているだろうけど、私がやることは魔力循環だけだろうし。
「聞きたいことはおしまい?」
「最後に。もしお願いを聞かなければどうなるの?」
「モーさんが君を呪いにかけるね。モーさん自身がかけたいわけじゃない。でも、神様の意志に逆らうとすると精霊は段々おかしくなるんだ」
「人間はおかしくならないのに?」
「おかしくなるとも。精霊の呪いは君自身よりも君の周りによくかかる。君が僕の願いを叶えるようにモーさんが君の周りを狂わせていくんだよ」
精霊さんがそう言うと、いないはずのモーさんが目の前に現れた。
ドキリとしてしまうほど、モーさんは憔悴している。病気になってしまったんだろうか。
『かんにんやアリィ。一緒に行ってくれ。わしも本当はこんなことしたない。けど抗えへんねん。頼む。一緒に頑張ってくれ』
モーさんが声を絞り出す。いつもみたいな軽快な調子はどこにいってしまったのか。
ふとモーさんの後ろを見ると、レナードさんとキースさんが倒れていた。
その姿に私は衝撃を受けて何も考えられなくなる。
「死んでるの……?」
『アリィが一緒に行けへん言うなら殺さなあかん。今は衰弱しているだけや。アリィ。こいつらを生かすも殺すもアリィ次第なんや』
ふっとモーさんは掻き消えた。レナードさんとキースさんもいない。
そこにいるのは精霊さんだけだ。
「……まぼろ…し?」
「そう。単なるまぼろし。今は夢だしね。でも、呪いってあんなんなんだよ」
心臓がバクバクいっている。
あれが、あれが呪いなんだ。
悲しそうな、苦しそうな。ドラマなんかで見た心中しようとしている相手みたいな。
夢とはいえ、あのモーさんは本物のように見えた。
いや、改めて考えてみれば声が少しエコーがかっていた。念話と会話の中間のような変な感じだった。
「……脅迫だよね。それ」
搾り出すように私が告げると、精霊さんは首をかしげる。
「うーん、そうかなぁ? 例えば猟師なら獲物を捕らなきゃ飢えて死ぬよね。お腹を空かした人間は段々おかしくなるし、罪を犯したりするよね。それとどう違うの?」
「つまり加護持ちは義務なんだね」
「ああ、そうだね。義務と言うのか。そう、この世界の義務なんだよ」
なるほど。加護持ちは義務なのに宙ぶらりんのこの状態がよくないんだろうな。
義務と分かっていれば、罰として呪いがあるのがわかる。
私は大きく息を吐いた。
あれだ、自動車の教習場で事故の被害者のビデオを見たのと同じなんだ。
自動車は便利だけど、事故したらこんな悲惨なことがありますよ。ってビデオを見る時間がある。
自賠責保険に入っていなかったら、刑期だけじゃなく損害賠償も払えないから一家離散になってしまって、みたいなやつだ。
ビデオなんかよりも生々しくて衝撃的だったけど、多分精霊さんが言いたいのはそういうことだろう。
「さて、そろそろ時間だ。もういいね」
「うん。ありがとう。色々分かってよかったよ」
「四つ星ぐらいじゃないと話ができないからね。百年ぶりぐらいじゃないかな、こんなに話したの」
「はっ?!」
「じゃあよろしくね〜」
待って、最後に爆弾落としていかないでー!
お気付きかもしれませんが、上位精霊と下位精霊では色々な認識が違います。
モーさんは呪いはその精霊のせいだと思っているようですが
加護というシステムの罰として呪いがあるわけです。
それがわかっているのは上位精霊だから。
そりゃみんな呪い役なんてやりたくないので、下位精霊としてはシステムとしての認識じゃなくて個人の認識になります。
この設定がボロがある気がする。きっとある。
でも、勢いで突き進んでしまおう。




