10 そうだ、泳ぎに行こう
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うわあ、こんなにうれしいもんなんですね。
感謝感激雨あられでございます(古)
今回はアリィちゃんのターン。
神殿で眠った翌朝、起きればモーさんが窓の外を眺めてた。
なんか疲れてない? 大丈夫かな?
「はよー」
「おお、おはようさん。よう眠れたか?」
「うぃ」
目をゴシゴシこすると、モーさんが頭をよしよししてくれた。
「ん?」
「寝癖や。ちょっと水つけとくわな」
「あい」
しばらくよしよししてもらったら、モーさんからOKがでた。
「よし。アリィええで」
「あい」
「昨日保護者みんなで話し合いして色々決まったで。とりあえずみんなでアリィのおじさんのところに行くことになった」
『おじさん? おじさんがいるの?』
細かい話は念話だ。モーさんは喋っているのに私だけ念話。ちょっと変な感じー。
「アリィの母ちゃんの弟やて。ベルネゼブっちゅうところにいるんやと。ここから馬車でひと月ぐらいや」
『レナードさんや、キースさんも一緒?』
「一緒や」
ふむ。話し合いをしてと言ってもモーさんが私のおじさんを知っているわけでなし、レナードさんとキースさんがあらかじめ決めてあったところということかな。
そこまで行けたら逃亡成功と考えていいということかな。
本当に追いかけられたのは最初の一回だけだったけど……夜中に実は襲撃があって、私は寝ているから気づきませんでしたとかいうのもあるかも?
モーさんが話していた僻地に行かされる話は、そのベルネゼブで折り合いがついたと考えるべきかな。
『で、私は何するの?』
「とりあえずベルネゼブに行くまでに魔力循環の練習や。そのベルネゼブの村では加護持ちが集まっとって、魔物退治をしてんねん」
『魔物退治? 私も戦うの?』
「んなこたない。アリィがいるだけで水の精霊が強くなるのが肝要や。アリィはすくすく大きくなること考えたらええ」
『すくすくねぇ……変な感じだわー』
「今は赤さんやろ」
『ですよねー』
二人で笑い合う。
まぁ、今まで誰かと会話出来なくて寂しかったし、モーさんいてくれたらいいんだけどね。
「アリィ。ほら、みて。魚が泳いでいるよ」
相変わらずのイケメンキースさんが指差す先には赤や黄色の魚が泳いでいた。
「あい」
「アリィ。魚触ってみるか?」
「あい!」
「よっしゃ。こいこいこいこい」
モーさんがかけ声をかけると私に魚が寄ってきてツンツンされた。
『花札?』
『なんやそれ』
『いや、いい。なんか気持ちいいねぇ』
「うひゃひゃ〜」
念話でモーさんに話しかけながら、私は大喜びした。
何か一時期流行っていたなぁ、角質取りの魚。今も垢や汚れを食べてくれているんだろうか。
今いるのは湖だ。レナードさんとキースさんは約束通り湖に連れてきてくれた。
白い砂浜。青い湖。湖岸には森が広がり、って何この軽井沢みたいな景色〜とかなりセレブ気分。
ちなみに砂浜から離れたところには港もある。漁は朝にやるんだろうな。船が出ている様子はない。
下着姿の私は浅瀬に立っている。キースさんも薄着で傍で見守ってくれている。
モーさんは当たり前のように水面に立っていて、さっきから波立てたり魚を集めたりと遊び係だ。
ちなみにレナードさんはちょっと離れたところで荷物番だ。今日はピクニックなんだって。レジャーシート代わりの布までひいてある。
レナードさんは荷物番と言いながら実見張りなんだろうなと思う。一緒に遊べないのは少し寂しいけど、向こうは気にしてないみたいなので、とりあえず楽しむのだ。
『アリィ、なんかやってみたいことあるか?』
『うーん、泳いでみたいけど危ないかな?』
『わしがおるから溺れることはないわ。よっしゃ、じゃあいっちょ行こか』
「キース。アリィが泳いでみたいそうやから、ちょっと水の中を移動するで」
「モリッツ。それは大丈夫なのかい?」
キースさんはモーさんをモリッツと呼ぶ。何でかモーさんに聞いたら、モーさんが本名はさすがに受け入れられないと言われた。うう、ごめんよ。
「大丈夫や。ほれ、いくで」
キースさんが不安そうにしているけれど、モーさんが小さい手を振ってしまう。
ざざざっと水が集まってきて、私の周りで固まりになる。いや、中に空気を含んでわっかになって私の胴部分に張り付いた。
『浮き輪?』
『水で出来た浮き輪や。これで泳げるで』
「おおー」
モーさんが浮き輪の概念を知っていたことに驚きだ。あれってビニールじゃなくても出来るんだろうか?
『泳ぐっていうより浮かぶだね』
『周りから見ても安心やからな』
「ほれ、いくで」
水の浮き輪は私にぴたりとひっついていて、手で支えなくても大丈夫そうだ。
ざざざぁぁーっと音をたてながら、水が波となって私の体を沖へと運ぶ。
「きゃああーー!」
『うわぁっ。はやーい』
私は両手をあげて歓声をあげる。
『怖ないか?』
『やばい、めっちゃ楽しい!』
『ほーか。もうちょい早よしよか』
『お願いします!』
ジェットスキーのようにスピードがあがる。一歳の動態視力じゃ、周りを把握できないぐらい速い。
やばいやばい、楽しい! 何この爽快感!
「ほれ、回るでー」
今度はグルグルと回りだした。なにこれも楽しい!
「わひゃひゃひゃ!」
変な声をあげてるけど気にしなーい。とっても楽しいわぁー。
「モリッツ! 赤ん坊なんですから、もう少し優しく!」
「大丈夫や。水の中やで。アリィが嫌がることにはならへん」
とか言いながら、高速コーヒーカップは回転をとめた。さすがに目が回った。でも楽しい。
「もっかい」
「ちと休憩や。目が回っとるやろ」
モーさんが頭をなでてくれた。確かにちょっと世界が回ってる。私は浮き輪にぐでんと寄りかかって周りを見た。
今いるのは結構湖の中ほどだ。キースさんが器用に立ち泳ぎしながら、私の浮き輪に掴まった。
「アリィ、大丈夫かい?」
うわぉ、キースさんの前髪から雫がポタポタとしたたっているよ!
水もしたたるってほんとだね。イケメンは特だわ。
てか、キースさんここまで泳いできてくれたんだよね。私はハシャぐだけだけど、キースさんは大変だったろうな。
「いいなぁアリィ。これは楽そうだ」
キースさんは髪をかきあげる。うわー、目の保養だわ。それだけで格好いいわ。
実はキースさんも結構いい筋肉なんだよね。今は水で服が張り付いているから、肩あたりの筋肉がよく見える。着痩せしてるように見えるけど、弓をひけるんだからそりゃ筋肉もあるかぁ。
キースさんに見惚れていると、キースさんが心配そうな顔になった。
「アリィ、やっぱり怖かったんじゃないの? もう戻る?」
おっと気遣いさせちゃいましたな。これはいけない。
「もっかい!」
「ええ、もう一回かぁ。ついていけるかなぁ」
「ほな、次はキースも浮き輪につかまっとったらええねん。ほな行くで〜」
「え、ちょっ」
「きゃああー♪」
二人と一匹を波がさらっていく。
「ご、ごめん。ちょっと無理」
ジェットスキーの旅が終わるとキースさんは浜辺に打ち上げられた。
「キーチュー」
「ア、アリィにキースと呼んでもらった、うっ、気持ち悪い」
顔面蒼白なキースさんにちょっと悪いことしたかなぁとモーさんを見つめた。
「すまんな。酔うとは思わんで」
「いえ、構わない、です。はい」
キースさんの返事は適当だ。もう声をかけない方がいいのかもしれない。
「アリィは大丈夫か?」
レナードさんが私の顔を覗き込む。
「あい」
「そうか、ならいい。キースは休憩だ。俺と水に入ろう」
レナードさんはそう言うとドンドン服を脱いでいく。
『ええ、そ、そんな。そこまで脱いじゃ……』
『痴女っぽいでアリィ』
『いや、だって』
レナードさん、上半身裸ですもん。
やばい、鼻血でそう。
いや、今までの旅で裸を見なかったのよ!
遊ぶのはキースさん。レナードさんは周りの監視って決まっていたみたいで。
この世界、お風呂がないからパパと一緒にお風呂とかもないしさー。
着替え姿も見たことなかったわけじゃない!
そ れ が!
素敵すぎる。なに、この筋肉美! そして生の迫力!
適度に盛り上がった胸筋、怒り肩にならないほどの肩の筋肉、太ももかと疑うほど太い上腕二等筋。
腹筋が割れてるのは当たり前として、八つて。八つに割れてるて!
キースさんも筋肉ついてたけど、レナードさんの方がガッチリ系だ。重量系っていうかパワーファイターというか!
これでイケメンとか、もう誰得って私得〜!
『アリィ。あかん、完全に痴女やでそれ』
『万歳筋肉! ビバ筋肉! もう抱いてー!』
「アリィ、抱っこするぞ」
「きゃー♪」
『キャハー! 生筋肉! 素敵すぎる!』
「ご機嫌だな。よし、今度は俺がアリィを乗せて泳ごう」
『はい、もうどこまでもー♪』
『……手遅れや。手遅れやった』
レナードさんの背中に乗せてもらっていっぱい泳いだ。抜群の安定感と安心感。背中の筋肉も素敵でしたとも。
ひとしきりレナードさんの筋肉を、いや泳ぎを堪能した頃に神殿の鐘が鳴った。
どこの村や町でも昼時になると鐘がなるんだよね。一日三食は贅沢らしいんだけど、昼におやつぐらい食べるのが普通らしい。
「アリィ。弁当食うか」
「わーい」
レナードさんに体を拭いて着替えさせてもらってご飯タイムだ。
「キース、具合はどうだ?」
「どー?」
「大丈夫だよ。心配かけたね」
キースさんが私の頭を撫でる。顔色はよくなったようだ。
キースさんがお弁当を広げてくれた。パンに切り込みがあって野菜や魚の具が入ってる。私用には一口サイズのサンドイッチだ。
今日のお弁当は神殿の巫女さんが作ってくれたらしい。ありがたやありがたや。
「じゃあ食べようか」
「あい」
前世からの癖で手を合わせていただきますと心の中で言う。二人は初めは不思議そうにしていたけど、最近は幼児期の不思議行動で流してくれているようだ。
「はい、アリィ」
「あーい!」
一口サンドイッチをキースさんが渡してくれた。口の中に一気に押し込む。これは魚だね。淡水魚だけど、臭み抜ききちんとしていて美味しいや。
ただねえ、まだ噛みきるのはうまく出来ないんだよね。咀嚼はいけるんだけどなぁ。
「ぶっ」
「木鼠のようだな」
キースさんが吹き出し、レナードさんも生暖かい目で見つめてくる。
『仕方ないもん。幼児だし』
『幼児にもなってないけどな』
『でも乳児じゃないよ。乳離れ済んでるから』
『まあなぁ。でもまだ赤子の範囲やろう』
『まぁねえ』
自分のぷくぷくの手を見つめた。輪ゴムをつけたような手首やひじ。
横にいるキースさんの手の上に乗せてみた。おお、倍ぐらい違うわ。
今度はレナードさんの手の上に乗せてみた。レナードさんはキースさんより手が分厚いね。
二人とも、手が傷だらけだ。ずっと訓練してきたんだろうなあ。と思ってなでなでする。
まぁ、口の中はまだぱんぱんなんだけどね。
「アリィ、どうした?」
「お茶飲もうか?」
二人は優しく聞いてくれる。
私は首を振った。それからモーさんを見た。
「なんやアリィ」
「んー」
口の中のものを咀嚼して飲み込んだ。
「おかーりー」
「はいはい。おかわりどうぞ」
二つ目を食べる。次はちょっと甘い。果物を煮たやつかな。リンゴっぽい味がする。
「旨いか?」
「ん」
私は頷いた。
いっぱい遊んでもらった。
おいしいご飯も食べた。
優しい時間ももらった。
次は私が頑張る番だ。
中身は大人でも体は赤子。
顎が発達してないから噛み切ることはできないけど、もっちゃもっちゃと咀嚼はできるんですよね子供って。
ちなみにサンドイッチを1歳は普通食べれないと思います。だって1歳すぎだと離乳食完了期。スプーンでやわらかいのを食べる子が普通。
とはいえ、食い意地張っている子はそんなこと関係ありません。アリィちゃんも食い意地は張っておりますよ!!
ということでいいのです。
更新を月曜の15時に固定しようかと考えています。
決めてしまった方がちゃんと書けるかなと。
そんな感じでよろしくお願いします。




