真黒い男は・・・。
男は守り方を変えろと吉人に忠告した。
もし、変えなければ、このままいくと命の危険性があると危惧している。
「頼むから、もっと感情を表に出せ。すぐに諦めるな」
どうしてだか、男は吉人に必要以上に接してくる。
初対面なはずなのに、知り合いのような接し方で。しかも、かなり親しい間柄な。
「・・・アンタは、どうしてそんなことを?っていうか、どうして助けてくれたんだ」
なぜ、初対面な吉人にここまで本気になってくれるのかわからない。
どうして、不良達を倒してくれたのかもわからない。
分からないことが多すぎるから、本気で困惑した。
この世界の人間は残酷で、自分だけが大事で、他人のことなんてどうでもよくて、知らないふりをして、全く人を人だと思っていないようなことをするはずだ。
でも、この男は不良から助けてくれて、怒ってくれて。
こんなの、今まで生きていて初めての体験だった。
だから、余計に分からないのだ。
「別に、お前が弱虫君だったからだ」
弱い者を助けるのは普通の事だと、迷いもなしに口にする。男にとってそれは当然のことで、困惑する必要もためらう必要もどこにもない。
「あのなあ、弱い奴が強い奴に向かってって、勝てるわけがねえんだよ。そんなの、小学生にだってわかる。でもな、だからって、簡単に諦めていいはずがねえんだ。だってよ、自分でどうにかしたいって思わねえと、どうにも出来ねえんだからよ。諦める前に、どうにかしようと足掻けよ。諦めるのはその後だって幾らでもできるぜ。その時に、弱いとか強いとか関係ねえんだよ。その時に必要なのは、自分は負けたくねえって強い思いだけだ」
そこに、実際の強さ弱さは関係ない。必要なのは、負けたくないっていう強い意志。
それこそ、自分以外の人間が怖じ気ずくほどの。
時に、思いは何をも凌駕する。
それを、奇跡と人は呼ぶけれど。実際は、思いの強さが引き寄せた軌跡だ。
けれど、実際にそれを起こそうと思うとそんな簡単にはいかない。思うように人生は進んでいかないから。かなりの苦労を強いられてしまう。
だから、人は諦める。人生をそつなく送れればそれでいいと諦めて。本当は、もっと何かをしたいと思っているのに。
それを、他人にも強いるのだ。だから、人間は残酷なのだ。自分が嫌な目に遭っているのに、人は楽しそうに笑っている。それが、どうしても許せない。同じ目に遭わなきゃ我慢ならない。どこまでも自分本位で、自分勝手。決して、自分とは違う異分子を受け入れようとはしない。
「けどまあ、多くの人間がそれを出来ずに、弱虫君になっていってるけどな」
それが、この世界の人間の現状だ。
「でも、大勢が無理でも一人ずつなら変えてゆける。まずは手始めに、弱虫君、お前を変えてやるよ」
「・・・・・」
吉人は、目の前の男の壮絶な計画を知って何も言えなかった。
そんなのは無理だと、言おうと思ったのに。男が、とっても本気で出来ると信じ切っているから。どこまでも、諦めを知らない目で吉人を見つめるから。
「安心しな。人間が本当は優しいってことを思い知らせてやるから、覚悟しとけ」
にやりと、自信満々に男は笑った。
真黒な男の正体は、未だに分からずじまい。
まっまあ、きっと次でわかると思いますが・・・。
たっ多分。
期待せずに待っていてください(>_<)




