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真黒い男。

「・・・・・・・」

初対面の男に、そんなことを言われるのは初めてだったがしかし、それも事実なので黙って聞き流そうとした。

「そういう所が弱虫君なんだよ、テメエは!!」

いつものように聞き流そうとしたが男がそんな態度の吉人に怒りだした。

「あのなあ、普通は自分が馬鹿にされたら頭にくるし、汚名を着せられたら勿論全力で無実を主張するもんなんだよ!もっと、自己主張しろ!怒れ!!そういう態度の方が腹立つんだよ、俺は!!!!」

ドシンッと男が地面を蹴った。

それはもう、怒りに任せてだったので揺れる揺れる。

 男が言いたい事を簡潔にすると「もっと自分を大切にしろ」だ。

吉人には防衛本能が足りてない。殴られるのを避けようとしないとか、汚名を着たまま弁解しないとか。本当は怒っていいし避けたっていいし、やり返したっていい。そのはずなのに、吉人には一切そんな気力すら感じられない。

そればかりか、早くすまそうと思って何もしない。

今までの生い立ちがそうさせたのかもしれないが、しかし、それにしたってひどい。

「・・・そんなこと言ったって」

吉人は小さく呟いた。その顔は悲しいのか辛いのか苦しいのかよく分からない感情で埋め尽くされている。ただ、負の感情が支配していることには何の変わりもない。

「お?なんだ?なんか言いたいことでもあるのか」

自分でもなんて言ったらいいか分からず、悩んでいる吉人とは対照的にやっと弱虫じゃない所が見れると男は嬉しそうだ。

「現実の・・・世界では、どうにもならないことってあるわけで・・・、だから?諦めないと・・・飽きないと精神が持たないわけで・・・」

現実の世界でどんなに抗ったって、アニメや小説のように人生なんて上手くなんて進んでいかない。むしろ、どうにもならない方が多くて。どうにもならないことが降ってくるとその前で生きるのに一生懸命なのに追い打ちで、抗う気さえ起きなくて。なんかもう、なんとか壊れないように生きるのは色々、諦めたり、飽きたりしなければならなくて。

途中から諦めるのは、辛いからなら、辛くない方法で痛みも傷も少ない方がいいから自分の身を守るために最初から諦めるようになった。

それを弱虫というなら確かにそうだろう。

だって、勝負さえ最初から諦めているんだから。

言い返さず、聞き流そうとしたのは自分を守るためだ。しかし、これを男はダメだと怒る。

「じゃあ、どうやって自分を守る・・・?」

それ以外の方法を、吉人は知らないのだ。

「いっくらでもあるだろうよ。物は考え方次第。つーか、第一、自分を守るために自分を傷つけてちゃダメだろ」

結局、吉人の自分の守り方じゃ、自分を傷つけている。

悪口を言われて聞き流すのは、確かに大人だし本当に聞きなせるなら自分を守れる。でも、吉人の場合は、本当に聞き流せていないのだ。

聞き流せずに、心のうちにどんどん溜まり蓄積されていく。言い返さないから、吐け口はないわけで。

「自分を守る方法は幾らでもある。でも、お前の守り方はいたずらに精神を削っていくだけだ」


吉人君、知らない男にいきなり説教されてます(*_*;

でも、大人への第一歩なので頑張れ吉人君。

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