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ルイセ・クレイドル

「さあ?数え切れないほどだもんね」

キッと睨まれたのを受けて、ルンルンはにやりと意地の悪い笑みを浮かべる。

「全部、貴方が悪いんじゃないの!突然、どこからか湧いてきて!そして、あろうことかあの一匹狼だったメイメイの隣にいるんですもの!・・・まあ、こんな口うるさい女よりは、貴方の方がメイメイはいいんでしょうけれど」

ああ、この人は本気でメイメイのことを愛しているんだと心から感じた。

どうやら、自分でも自分の欠点は自覚しているらしく、直すように努力はしているらしい。しかし、人の性格なんてそうそう変われるもんじゃない。

彼女は、そんな葛藤をずっとしてきたのだろう。自分の性格を恨めしく思いながら。

その瞳には涙さえ浮かんでいる。

「本当に、どうしようもないね。それより、話があるんだけど」

そんな彼女にどこか、苦しそうに言葉を紡いだ。

「どんな話ですの!」

「えっとね、まず、涙拭いてからにしようか」

そっと、ズボンのポケットからハンカチを出すと、クレイドルに近づいた。

「せっかくの可愛い顔が台無しだよ。これじゃあ」

優しく笑うと、ルンルンはクレイドルの頬に手を添えて、目の端に零れた涙の粒を拭いた。

(・・・・・)

その二人の様子は、どこから見ても一つの美しい絵にしか見えない。

まるで、愛し合っている恋人のよう。

「吉人様。お教え差し上げます。ルンルン様は、クレイドル様に惚れていらっしゃいます」

ライライが二人に見惚れている吉人に気がついて近づいてきて、そっと耳打ちをした。

「一目惚れ、という奴だそうです」

「じゃあ、ルンルンは・・・」

「ええ、勿論、諦める気ではいますよ。だって、クレイドル様の好きな人は別の、しかも命の恩人ですからね。でも本当に、神様は酷いですね。クレイドル様に魅力がふんだんにあるからといって、あの二人を恋敵にしてしまうんですから。だから、メイメイ様はあまりクレイドル様とは仲をお縮めなさらないんです」

メイメイの方が、クレイドルと先に知り合い、そして、クレイドルがメイメイの事を好きになった。

でも、あとからクレイドルと知り合ったルンルンは、残酷にもクレイドルに一目惚れをした。

恋とは本人でさえ予測できない衝動。どんなに否定しても、心は正直に答えてくれる。

そんな、苦しみを味わっているルンルンを見て、メイメイは自分の気持ちに嘘をつき続けることにした。

ルンルンになら、彼女を獲られてもいいと本気で思って。でも、彼女の方はというとメイメイの方ばかりで、ルンルンの方なんて目もくれない。

こうなったら、鬼になろうとメイメイはクレイドルに冷たく当たった。その道しか、メイメイは選べなかった。

「お互いに唯一無二の親友だと思っている二人ですからね。恨みあいたくはないでしょう。まあ、そんなことは絶対にあり得ませんが。ですが、人というものは恐ろしいものです。自分の欲のためなら他人を蹴落とすことが出来てしまう。万が一にもあり得ませんが、しかし、彼らだって人間です。いつ、醜い感情に支配されるかわかりません。・・・それを、彼らは恐れているんですよ」

せっかく、親友になれたのに。その親友の好きな人を奪いたくない、恨みたくないという思いが渦巻いて、今の均衡が続いている。それは、お互いに十分、配慮した上での結果だ。

つまり、少しの油断が命取りということだ。

「だから、ルンルンはあんなに苦しそうで、幸せそうなんですね・・・」

メイメイの事を思うと、胸が痛む。その中に、嫉妬も含まれているが、それだけじゃない。

それでも、自分を見てくれているクレイドルに叫びたくなるぐらいの幸せを感じている。とっても難しくて、とっても複雑な顔をしている。

彼女に、怒られながら。

「だから、ルンルン!貴方も、尋ねてくるの突然すぎますわ!!来る前に、知らせをよこしなさい!」

「そうしたら、出迎えてくれるのー?」

「そんなわけありませんわ!ただ、心臓に悪いからですわ!」

「ああ、一緒にメイメイが居るかと思って?」

「・・・・っそっそんなわけないですわ!!」

如実に顔を赤くして、過剰に反応している彼女を見れば誰もが分かるだろう。

そんな、クレイドルを見て、ルンルンは少し後悔をした。

(・・・言うんじゃなかった)

こんな可愛い表情をさせる奴が、親友のメイメイだなんて。やりきれない。

(これじゃあ、諦めるしかないじゃないか)

いつもの調子はどこへやら、ルンルンはすっかり悩める青少年なっていた。

「ルンルン!貴方、訊いてます!?」

「・・・何~?聞いてなかった~」

「本当に、貴方って人は!!話があるって言ってたじゃないの!!」

「あ、そうだった。そうだった。話があるんだ、君に」

優しくクレイドルに優しく微笑みかけると、吉人の方を見た。

「多分、クレイドル様に紹介してくださります。行ってください」

「・・・はい」

吉人は、ルンルンに呼ばれるまま、ルンルンの下へと歩いて行った。

「・・・もしかして?」

「うん。そう。そのもしかして」

「また、メイメイが?」

「そう、また」

ルンルンは、どんどん笑顔になり、クレイドルはどんどん怒り顔になっていく。

「ほっっっ本当にもう、メイメイはお人よしなんですわ!!!!!!そんなんだから、私の気持にも気づかないんですのよ!!!!!!」

もう、怒りの湯気でお湯が沸かせそうだ。

「しょうがないよね~。メイメイだもん」

「・・・・・・っっそんなところが好きなんですけれど・・・・」

顔をますます赤らめて、メイメイを好きだと口にする。

「はいはい、分かったから、話聞いてくれる?」

「・・・いいわ。また、この村に住まわせてほしいという話ですわよね?」

「正解~。で、いい?」

「勿論、いいですわ。メイメイが連れてきてくれた方ですもの。いい人に違いありませんわ」

自信満々に、自分を褒めるのではなく、メイメイの審美眼を褒めた。

「まあ、確かにそうだね。ってことで、自己紹介しちゃって」

「分かりましたわ。・・・初めまして、歓迎するわ。異世界の民よ。私はこの村、レインレイン村の村長、ルイセ・クレイドル。分からないことがありましたら、相談してくださいね」

にっこり笑って、まるで聖母のような瞳で吉人を見つめ、自己紹介をした。

「俺は、吉良沢吉人です。よろしくお願いします」

短いが、しっかりとクレイドルの瞳を見て自己紹介をした。

「いい名前ね。吉人君、これからどうぞよろくしですわ」


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