クレイドルとルンルンとライライ。
クレイドルにこの村に住んでいいという承諾をもらい、そしてお互い、自己紹介を済ませた吉人達は村長の執務室にいた。
「ライ。これを確認してちょうだい」
「かしこまりました」
クレイドルは自分用の椅子に腰かけ、書類をライライに渡す。
「クレイドル様。ここが少し、詰めが甘いようです」
「そう、ありがとう」
ライライは、執事ではあるがそれと同時に、クレイドルの秘書もやってる。
最終確認はクレイドルが勿論やるが、その一歩手前の確認はライライが目を通す決まりになっている。
クレイドルも、ライライの優秀さを認めており、事業や書類確認の時には必ずライライを執務室に呼ぶのだ。
(あ~あ。俺って、あんまいいとこないじゃん)
内心、ライライの存在もあんまりおもしろくないのだ。
顔はひたすら良くて、性格は優しく真面目。何事にも誠実に取り組み、クレイドルの意見が間違っている時は注意し、正解のときは躊躇なくほめたたえる。絶妙な飴と鞭の使い方をライライは会得している。
そして、クレイドルもライライには絶大の信頼を寄せている。
あくまで、上下関係なのだが、しかし、いいところのない自分よりは相等、恵まれているライライに嫉妬を隠せない。
そんなことに、ライライは実は気づいていたりする。
だから、あまり優秀さを醸し出さないように謙虚を心がけているのだが、それもどうやら裏目に出ているということは気づいてはいた。しかし、ほかにどうしようもないので、今まで特に何も変えてこなかったわけだが。
(それでも、そろそろやばいですかね)
ルンルンの気持に余裕がなくなってきているのは手に取るように分かる。
いくら、気持ちがばれてないといっても、態度で如実に表れているルンルンを見れば大体の人は気づく。だから、他の誰かが余計なことを言い出す危険性がある。
(クレイドル様は、物凄い鈍感ではありますが・・・・。しかし、それにしても分かりやすいです)
あそこまで分かりやすいから、鈍感で有名なメイメイでさえ気づけた。クレイドルも、如実に分かりやすかったので気づいたのだが。
しかし、もう、この片思いの関係も亀裂が生じるのも時間の問題だ。
それに、メイメイは二人の気持に気づいている。それゆえに、この関係を壊さないように必死に取り繕っているようだが。
(想いはいつか、許容範囲を超えて、溢れだしてしまいます・・・)
クレイドルの想いも、ルンルンの想いも。
(でも、最悪な結果はなんとか免れそうですが。吉人君のおかげで)
ここに、予想外の人間の登場だ。
クレイドルも、恋愛感情ではないにしろ、吉人の事は気に入っている様子。
それに、メイメイもルンルンも。
だから、ひょっとしたら吉人が別の結論を導き出してくれるかもしれない。
「ライライ!何回も呼んでいましてよ?」
「・・・すみません、クレイドル様。で、なんでしょう」
「分かっているでしょう?吉人君の住民表を登録して頂戴。私はこれから、ルンルン達と村を散歩するわ」
「仰せのままに。クレイドル様、ですが、警護の者をお連れくださいね?」
「・・・わっ分かっていましてよ!」
「・・・絶対、お一人で行かれるつもりでしたね・・・」
「ちっ違いましてよ!!」
「ほ~んとじゃじゃ馬なんだからぁ。クレイドルったら」
「だから、違うと言っているじゃないの!!第一、じゃじゃ馬とは失礼ですわ!」
さっきまで、ライライの方を向いていたクレイドルが、ルンルンに茶化されて、ルンルンを睨んだ。
すると、ルンルンは嬉しそうに口角を上げる。
「さあて、じゃじゃ馬は放っておいて、行こうか。弱虫君」
「じゃじゃ馬じゃありませんわ!!」
そういって、吉人達は執務室を出て行った。
「本当に、ルンルン様はどうしようもない人ですね・・・。全く、嫉妬からクレイドル様を怒らせるなんて。まあ、あがきなのでしょう。目をつぶりましょうか」
ふふっと部屋に残されたライライは微笑する。
さあ、面白くなりそうだ。
「仕事をしますか」
そうして、机の上に置いてある書類を手に取り、ライライも執務室を出ていった。
まだ、終わりません。なにせ、メイメイは半年後にしか帰ってこないのですから。
でも、今回はなぜか執事のライライの登場が多かったですね。
ライライは執事兼秘書です。大変に優秀な人間なのですが・・・少し、黒かったりします。
クレイドルの事は恋愛感情で好きなわけではありません。しかし、恩人ではあるのであらゆることからクレイドルを守ろうとはしてはいます。
勿論、クレイドルが恋に破れて傷つくことだって、彼は望んでいません。なので、策を巡らすかも・・・。というか、もう、巡らせているかも・・・。
ですが、強引な結論は望んでいませんので、あくまで自然に且、クレイドルが傷つかないような結果にしようとしています。
まあ、今回は吉人君の出番はほぼゼロです。
だっ大丈夫です。吉人君はもともとそんなに喋る子じゃないので!!




