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珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ
住み込みバイト編

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第98話 誰が聞いてもそう思う

 じいちゃんが過労で倒れた……。

 その事は、雫ちゃんは一度も言っていなかった。


 ……雫ちゃんの過去の話も最近聞いたし、そこにじいちゃんの重い話までさせてしまったら、あまりにも負担が大きすぎるか。


「じいちゃんは、優しい人で我慢強かった。誰かに頼られる事は多くても、頼る事は滅多にしなかった」


 自分に厳しく、他人に優しい人だったのだろう。

 俺は感心するように、小さく頷く。


 すると、店長は温泉からザバッと上がり、旅館には珍しい電気風呂へと移動した。

 そして、ビリビリと電気がきている影響か、少し声を震わせながら言葉を続ける。


「今思えば……絶対にばぁちゃんに相談するべきだったと思うんだよな……。ばぁちゃんも馬車馬のように働いてたし、事情を話せば絶対にわかってくれたと思うのに」

 

 それだけお互いのことを思い合っているのなら、話して「NO」という返事はないであろう。


「じいちゃん……不器用だったんですね」


「そう、不器用な人なんだよ。今も、ばぁちゃんと喧嘩しているみたいだし」


「そっか……今も……。……って、え?」


 今も喧嘩している?

 俺の頭の中で、疑問符が飛び交う。


「もう数ヶ月喧嘩してるみたいでさ。今も、この旅館には『出入り禁止』になってるらしいんだ」


「ちょ、ちょっと待ってください?」


「ん? どうした?」

 

 俺は思わず、店長の話に割り込んだ。


「おじいちゃんって……ご存命なんですか!?」


「は、はぁ? 当たり前だろ! 勝手に殺さないでくれよ!」


 店長は心底不思議そうに笑った。


 完全に勘違いをしていた……。「倒れた」と聞いて、おじいちゃんはすでに亡くなっているものだと勝手に思い込んでいた。

 

 ……というか、雫ちゃんに過去の話を聞いた時も、おじいちゃんの話は微塵みじんたりとも出なかった。


「前に、雫ちゃんに過去の話を聞いた時も、おじいちゃんの話は一切出なかったので……てっきり」


「そうなのか? ……まぁ、真意はわからないけど、ただ忘れてただけじゃない気もするな」


 店長は俺の質問に対して、ふいっと目を泳がせた。

 あの反応……もしかすると、あまり聞かれたくない事情がまだあるのかもしれない。


 真相は気になるけど、これ以上踏み込むのはやめておこう。

 俺は、雫ちゃんと本当に付き合っているわけでもない。

 言わば、赤の他人である。


 ……こんなに家族の事情に踏み込んだ質問ばかりして良いものだろうか。


 俺は、温泉の窓から見える外の景色を静かに見つめた。


「つばさくん、一つ良いか?」


「は、はい。なんでしょうか」


 店長が電気風呂から突然立ち上がり、真剣な顔で俺の方を見つめる。


「のぼせたので、俺は先に出る!」


 そう力強く宣言すると、店長は足早に大浴場を後にした。


 確かに、かなりの長風呂だった。

 壁掛け時計の長針は、俺たちが入ってきてから優に半周はしている。

 俺もそろそろ出ないとやばい。


 しかし、客室には「俺の帰りを待つ雫ちゃん」がいるのだ。

 変に意識しないように……とにかく今日一日をなんとか乗り切ろう。


 俺は腹の底で覚悟を決め、ザバァッと温泉から上がった。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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