表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
珈琲を焙煎してたら恋琲になっていました  作者: エンザワ ナオキ
住み込みバイト編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/113

第93話 嫌われ役

 俺は、この旅館に長居するわけでもない。

 時間をかければ、もっと良い解決策が見つかるかもしれない……。


 手っ取り早く、解決するかもしれない方法……それは……。


「俺が雫ちゃんには、夢があるからって、強めの口調で話すよ。そしたら、おばあちゃんからの『俺の印象』は最悪になると思う。……そうすれば、実家を継ぐ話は店長に戻るっていう作戦だよ」


「え、え? なんで、つばさくんがそんなことするの?」


 雫ちゃんは心底驚いたように疑問を口にした。

 確かに、俺がそこまで泥を被る必要はないだろう。


「もし俺が本当の彼氏だったら、これからの家族の付き合いも考えて、ストレートに反対することはできないと思う……。だけど、『偽装の彼氏』だから、おばあちゃんとの今後の関係なんて気にしないで、ズバッと言える」


 雫ちゃんの話を聞く限り、おばあちゃんはとても良い人だ。

 だから本当は、こんな嫌われ役を買って出る作戦をする必要はない。

 絶対に雫ちゃんの本音をぶつければ、話し合いで解決すると思うからだ。


 ……ただ、優しい彼女が言い出せないのなら、俺が着火剤になればいい。


 俺には、一つの勝算があった。


 ◇


 陽はすっかり落ち、俺たちは夕ご飯も食べ終えた。

 俺は、再びおばあちゃんと店長を、俺と雫ちゃんが使っている客室へと呼び出した。


「……」


 沈黙する室内。座卓を囲むようにして、四人が座っている。

 重苦しい雰囲気に、ピリッとした緊張が走る。

 

 ――よし、覚悟を決めて言うか……。


「おばあちゃんのこの旅館を継いでほしいという気持ちは、痛いほど伝わってきました」


「……」


「しかし、俺は雫さんの『自分の店で料理人になる』という夢を応援したいんです。旅館を継ぐお話は、彼女の夢を諦めさせてしまうことになります。勝手な言い分だとは承知していますが……俺は反対です」


 俺が考えた案……。

 それは、失うもののない偽装彼氏だからこそ出来ることである。

 おばあちゃんに雫ちゃんが思っていることを代わりに言うだけだ。

 

「つばさくん、あなたの気持ちはわかります。結婚を考えているのなら、彼女の進路はあなたの人生にも関わって来るでしょうからね」


 おばあちゃんは、真っ直ぐに俺の目を見て言葉を返す。


「でもね、雫の料理の腕前は知っているでしょう? 私の旅館で若女将として勤めながらでも、うちには優秀な料理長がいるのだから、料理の勉強はできる。必ずしも彼女の夢にとってマイナスになるとは、到底思えないのだけど」


 さっき食べた夕食は、あれこれ悩んでいるのを一瞬忘れさせるぐらいの絶品だった。

 確かにこの環境で働けば、雫ちゃんの料理の腕前が腐ることなどないだろう。


「確かに、料理は美味しかったです。ですけど……雫ちゃんの『本当にやりたいこと』は何なのかを、どうか考えてあげてほしいです」


 俺はフゥと小さく息を吐き、隣に座る雫ちゃんの方を見る。

 しかし、彼女はうつむいたまま、何も言い出せないでいた。

 何も言い出せない彼女に、俺は違和感を覚えた。


 今まで、自分が「こう」と決めたことに、積極的に取り組む姿勢を見せてきた雫ちゃん。

 それは、桃果とうかちゃんとの料理対決や、恋のアドバイス、動画作成まで、自分の意見を曲げたことはない。


 だからこそ、今のこの弱気な態度に……俺は初めて、雫ちゃんに対して『もどかしさ』を感じていた。


 そう、俺がここまで場を荒らせば、必ず雫ちゃんは自分の本音を口にするはずだ。

 俺はそう信じている。

最後まで読んでいただきありがとうございました!


もし「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけたら、下の【☆☆☆☆☆】から評価やブックマークをいただけると、執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ