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婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦第1章 婚約破棄から始まる、剣と恋の物語

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9/22

初めてのデートは甘い?そうじゃない?

レーガとデートする日がやってきた。


パリッとしたシャツにベストを合わせた乗馬スタイルのような服装を選んだ。ドレスは髪を短くしてしまったから似合わない。カツラをわざわざかぶるのも滑稽だと思えた。


ほんのり、唇にリップクリームは塗ってみた。ほとんど色はつかないが、しっとりした口元になる。


緊張しながら待ち合わせ場所の城門前に行くと、すでにレーガが待っていた。彼もシャツにベストにパンツ姿で、ほとんど同じスタイルになってしまった。


(うわ~、なんだかペアルックみたいになっちゃった)


「すみません!お待たせしたでしょうか?」

「おはよう。気にしないでくれ。オレが楽しみで早く来ただけだから」

「た、楽しみですか。光栄です」


レーガと会う回数が少し増えたからか、彼は思わず喜んでしまうようなことを少しずつ言うようになってきた。


(きっと、殿下からの命ならばと、前向きに努力しているんだろうな)


ティニーは、少し緊張しながらも微笑んでみせた。


「気を使って頂きすみません。では参りましょうか」


門番の視線が届く距離だったこともあり、それだけしか言えなかったが、ティニーは、今日が楽しい1日になるようにこちらも気を使おうと思った。


レーガと並ぶと、背の高いティニーでも彼を見上げることになる。


(うわあ、やっぱり大きいな)


「どうした?」


レーガを見ていると目が合った。


「レーガ様はかなり背丈があるのだなと。私も大きい方ですが、比較になりませんね。ちょっと嬉しいです。いつも殿下に“壁女”とか“岩女”とか、からかわれていましたから」


少し自虐めいた冗談を言うと、レーガが顔をしかめた。


「……殿下は君に厳し過ぎると思う。だが、そのおかげでオレは君と婚約できたのだがな」


ほんのり微笑むレーガにティニーはドキリとした。


(そのおかげ……って、まるで私と婚約したかったみたいな言い方じゃないか)


いやいや、この婚約はヘンリーニの命令によるものだ、と心の中で言う。


――しばらく歩くと、城下町に着いた。


街に足を踏み入れると、甘い果物の香りや炭火で焼かれる肉の香ばしい匂いが鼻をくすぐった。


ざわめく人々の声や子どもたちの笑い声が響き渡って賑やかだ。屋台には、色とりどりの手作り工芸品も鮮やかに並んでいて、思わずティニーの心も弾んだ。


「わあ。賑わっているなあ」

「妃教育を受けていた君は街に来ることも許されていなかった。気になるところは片っ端から見ていこう」

「え、いいんですか?じゃあ、あそこからさっそく!」


テンションが上がったティニーは、密かな趣味である天然石集めのため、天然石を売っている屋台へと向かった。


気になった石を親指と人差し指で丸い天然石をつまみ、太陽にかざす。すると、石はオーロラ色に輝いた。


「君の金髪に似合うな。それを買おう。彼女が身につけられるように、ピアスとネックレスにしてくれ」


レーガはためらうことなく、店主に注文を告げた。


「そんな、悪いですよ」

「これくらい大したことない。気にしないでくれ。完成したらまた取りにこよう」

「……ありがとうございます」


その後も、レーガはティニーが気になったものをその都度、購入していった。


さすがに、ティニーの気持ちは舞い上がった。


(レーガ様って、紳士だな。私が興味あるものを全て買ってくれるじゃないか)


しかも、彼は甘いキャンディーを見れば、“食べてみてくれ”と、食べさせたりして甲斐甲斐しい。


「もうたくさん楽しみました。ありがとうございました」


その日、何度目かのお礼を言うと、レーガが満足そうに笑った。


「君はお礼を言ってばかりだな。男なら、こういうことくらい当然のことだ」


(えーと、それは私が一応、婚約者だからか?)


聞きたくなったが、まだ日が浅い相手にそんなことを尋ねるのは憚られて、口を閉ざした。


「どうして黙る?」

「いや、レーガ様は私に優しくしてくるのだなと。私はいつも殿下に女性として扱われることがありませんでした。だから、女性らしく扱われると慣れません」

「……慣れていけばいい。殿下にとって君は好みではなかったというだけだ」


レーガの微妙な返事に苦笑いした。


「レーガ様は、私でいいんですか?」


思い切って尋ねてみた。


「もちろん。君は剣のことも話せるしな」

「ああ、そういう理由が……」

「君のような女性は貴重だよ」


レーガは、故郷の仲間や戦友と同じような感覚で自分を見ているのかもしれない──そんな思いが、ティニーの胸に静かに広がった。

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