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婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第5章【番外編】ティニー×ギンス IF

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情熱的でヘンテコなラブレターで自爆した殿下

「なんでそんなにグシャグシャなんだ?」

「これだよこれ」


ギンスがもう1枚のグシャグシャの紙を見せる。手紙のようだ。


「なにそれ?」


のぞき込むと……愛の言葉がビッシリと綴られていた。


≪ナリオーネへ


君の笑顔を見るたび、胸が熱くなるのを抑えきれない。

今日の会議でも、心の中では君のことばかり考えていた。

書類を整理する手も、君を思うと妙に緊張してつい手が震えてしまったよ。


君はまるで、まだ朝露をまとったひまわりのようだ。

その輝く笑顔を思うと、僕の胸は小鳥が羽ばたくようにざわつく。

君の声は風に揺れる桜の枝のようで、聞くたびに僕の心はふわふわと舞い上がる。

君を思うと、僕の手はまるでミツバチのようにそわそわしてしまう。


この手紙を書きながらも、頭の中では君が庭いっぱいに咲き誇っていて、僕はその花に絡まって転げまわっている気分だ。≫


「これって……ラブレターだよね?」

「だな。殿下はナリオーネ様がホントに大好きだな。ハハハ……!」


ギンスはお腹を抱えて悶えている。


「笑うなんて失礼……でも、おもしろすぎるな。“花に絡まって転げまわっている気分”だって!アハハ……!」

「これを仕事の合間に書かれていたんじゃないか?それで、ふと我に返ってラブレターを書類と重ねたまま、ゴミ箱に捨ててしまわれたんだよ」

「となると、これは完全なる殿下の不注意だね」

「ああ、ほぼそうだろうな。このラブレター、殿下に書類と一緒に渡したら怒られるヤツだよな」

「あえてやってみる?」


ブハハ!と、2人は笑い転げた。ヘンリーニのラブレターがこんなにも面白いとは予想外!


「……でも、いいなあ」

「なにが?」

「ナリオーネ様は殿下に愛されていてさ。とんちんかんなラブレターはともかく」

「オレもティニーに書いてやろうか?」

「笑わすために?」

「いいや、真面目に書くさ」

「え……」


ギンスはそっと手を取ってティニーを立ち上がらせた。


「早くこの書類を殿下に渡そう」

「う、うん」


考えてみれば、今はギンスと2人きりだったんだ、と急に意識しはじめた。


書類を探すのに夢中で気にしてなかったが、書類を見つけた今、気に留めていなかった床のきしむ音や紙の匂いまでが……特別に感じられる。


部屋を出ると、夜の廊下も静かだった。夜の廊下は長くて薄暗く不気味だ。2人でいることで妙な緊張感が漂った。


「夜の廊下は……妙な雰囲気だな」

「ああ。殿下はどこだろうか?」


見張りの兵を見つけて尋ねると、夜間の会議中だという。


ヘンリーニは偉そうな態度をとるだけあって、きちんと王太子としての仕事を真面目にこなしているんだ、とティニーは改めて思った。


(きっと、書類のことを気にして落ち着かない気分なんだろうな。嫌なやつだけど、早く渡してあげよう)


会議をしているという部屋の前に来ると、取り次いでもらった。


ほどなくして、ヘンリーニ自身が扉から出てきた。


「あったか!ご苦労。どこにあった?」


ティニーは見つけた書類と例のラブレターを渡した。


「ゴミ箱の中に。この紙と一緒に丸めてありました!」


ヘンリーニがラブレターを見ると、真っ赤になった。


「……こ、これを見たのか!?」


ヘンリーニが口をパクパクさせている。


「見たのは私のみです。でも、ご心配なく。私はすぐに忘れる質ですから」

「ティニー、見たものは全部、即刻忘れよ。……そうだ、お前にはいろいろと今までつらい思いをさせたのだったな。後日、改めて償いになるものを贈ろう」

「気を使われなくても大丈夫です。私は、思いやりに欠ける言葉を言われたとしても、許す広い心を持っておりますので」


ここぞとばかりにヘンリーニに言うと、彼はとーっても渋い顔をした。さすがに、ギンスにつつかれる。


(やりすぎたか、ここらへんにしておこう)


「とにかく!もう、戻って休め」

「はい」


2人は笑いを噛み締めながら戻ったのだった。

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