涙とビールと真っ直ぐな告白
ギンスの言葉に驚いていると、ギンスはビールをグイと飲んだ。
「……もう、酔ってる?」
「酔うか。飲み始めたばかりだ」
「ギンスが言う“好き”は、友としてとか仲間としてという意味だろ?気にしてくれるのは嬉しいけどさ、そういう言い方はよくないよ」
さっき、ギンスはグシャグシャになった手紙を見ていた。なにかを察したのは間違いない。
(私を慰めようとしているのだろう)
「あのな、前に野駆けした時、オレはお前に告白したんだぞ。風のせいで聞き取れてなかったみたいだけどな」
「あの時……」
風が強く吹いた時にギンスが何か言ったのは覚えている。だけど、些細なことだと思って大して気に留めなかった。
「あんた本気?」
「本気。だから、なにがあったのか聞きたい」
「……」
「また、だんまりかよ」
ギンスはまたビールを飲んだ。もうジョッキに残ったビールは少ない。
「おかわりするけど、どうする?」
「私はまだいいよ。あんただけ頼んで」
店員に追加のビールを頼むとギンスは話し出した。
「実は、団長が大怪我してから軍を辞めるかもしれない、という噂を聞いたんだ。だから、お前とのこともどうなってるのかと気にしていた。……ベッドに置いてあった手紙、団長からだろ?よくないことが書いてあったんだよな?」
「……そうだよ」
泣いていた顔を見られているからごまかせない。
「いずれ皆にも知られることだろうからきちんと話すよ。……レーガ様から婚約解消を提案する手紙だったんだ」
「……なんでそんなことに?」
ティニーがレーガの意思を話すと、ギンスが複雑な顔をした。
「同じ騎士としてはわかる気もするけれど、一方的に決めるのはよくないよな」
「私、どうしたらいいんだ……」
下を向いたティニーにギンスは言葉を飲み込んだ。
そこに、新しいビールを店員が持ってきた。ギンスはビールをグイと飲んだ。
「もどかしいよな」
ティニーはうなずいた。
「……やっぱり2週間の付き合いじゃ、分かり合うことなんて難しかったんだよなあ」
「人によるんだろうが、難しいだろうな」
ギンスの言葉が終わりを明確にするようで心臓が痛んだ。
「お前は諦めるつもりでいるのか?」
「……あんたはそれを望んでいるんじゃないの?」
「ティニーがそれを望んでいるなら、オレとしてはもちろんその方がいい。だけど、くすぶる気持ちがあるなら解消しなくちゃいけないだろ」
優しくギンスが微笑んだ。
「あんたってお人好しでもあるね」
「だろ。こんないい男、なかなかいないぞ」
「そうかもしれない」
自然とおかしい気持ちになってティニーは笑った。
「私、手紙でレーガ様に自分の気持ちを伝えたけれど、伝えきれなかったのかもしれない。だから……私はやはり現地に行かなくちゃいけない気がしてる」
「そうか……」
「ごめん。あんたがその私に気持ちを伝えてくれたのに」
「言ったろ。くすぶる気持ちがあるままじゃいけないって。すっきりしたらオレが受け止めてやるからさ」
「……重ね重ね、申し訳ないな」
ティニーが謝るとギンスが手を振った。
「やめろよ。ところで、どうやって行くつもりだ?殿下に頼むのか?」
「うん。ナリオーネ様にも力になってもらうよ」
「ナリオーネ様はお前のこと、大好きだからな」
ヘンリーニはナリオーネに甘いから、いいように取り計らってくれるかもしれないと、淡い期待を抱いている。
「じゃあ、そろそろ帰ろうぜ。少しは落ち着いたか?」
「うん。あんたのおかげ。何をしなくちゃいけないか、わかったよ」
「よかったな」
「うん」
2人は店を出ると、夜風に吹かれながら並んで歩いた。街灯の下、ティニーの足取りは少しだけ軽くなっていた。




