表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第5章【番外編】ティニー×ギンス IF

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/52

曇り空に響く不穏な報せ

空は厚い雲に覆われ、訓練場にはいつもの明るさはない。


風がわずかに旗を揺らし、鉄の音が響くと、普段の活気ある声も今日は静まり返っている。


レーガがドラゴン討伐に指名され向かってからというもの、なかなか戻ってこない状況が続いていた。


「レーガ様は無事かな……」

「また不安な気持ちになっているのか」


誰もいないと思って呟いたのにギンスに聞かれていたようだ。


「なんで、あんたがここにいるんだよ?」

「別に。自主練習ってやつで来たらお前がいたってだけだ」


木剣を手に取ると、彼は素振りを始めた。剣を振り下ろすたびにビュンと、風を切る音が聞こえる。


「私もドラゴン退治に志願すれば良かったな」

「なに言ってんだ、お前には無理だって」

「なんでだよ。お前に勝ったじゃないか。この前」

「おいおい、オレが基準なら甘いぜ」

「確かに……」


失礼なやつだな、とギンスは思いながら、ティニーの頭をくしゃりとした。


「ドラゴンが暴れ回っているらしいじゃないか。ちょうど、繁殖期だろ。過酷だぜ」

「そうなんだよ。私、ここにいていいのかと考えてしまうんだ」


手を組んで思いつめたように地面を見るティニーにギンスはなんとも言えない感情がわいた。


「それほど団長が大事なんだな」

「たった2週間しか付き合っていないけれど……私を見てくれたのはあの人だ」

「そういう理由?恋愛的な感情っていうより、“恩”を受けたみたいな言い方をするんだな」

「実際、そんな気もしているよ。あの方を知るには2週間は短すぎた」


遠征にレーガが行ってから約3週間が経とうとしていた。


「悩んでいても仕方ないだろ。今はオレたちも戦力になれるように精進しようぜ」

「うん……」


変わらず元気のないティニーの背中を叩いたギンスだった。


――それから数日後、よくない知らせが届いた。


重々しい足取りで現れたのは、騎士団の隊長モデストだった。


「全員、集まれ!」


鋭い声が場に響き渡る。木剣を振っていた騎士たちも、談笑していた兵も一瞬で静まり返り、整列する。ギンスもティニーもすぐに姿勢を正した。


モデストの表情は険しい。普段は冷静沈着な人だが、言葉を選ぶように間を置く。緊張感が走った。


「……ドラゴン討伐に向かった遠征隊から報告があった」


ざわ……と空気が揺れる。ティニーの胸がキュッと締めつけられた。


「団長をはじめ、多くの兵が深手を負った。討伐自体は継続中だが、敵は予想を超える手強さだったらしい」


言葉を呑む音があちこちから響く。


(レーガ様はどうなった?)


ティニーの喉は乾いて、聞きたいのに声が出ない。


モデストは厳しい目で全員を見渡すと、さらに続けた。


「数日のうちに援軍を送る。訓練は一層厳しくなると思え。お前たち1人ひとりが、この支える戦力だ」


その声に、兵たちは沈痛な面持ちで頷いた。


「レーガ様は……」


やっとのことで出た声は小さかった。


「団長は、前衛で指揮をなさっていた。しばらく領地での療養が必要だとされている」

「そんな……」


黙りこくったティニーを、皆が気にして目をそらした。ティニーがレーガの婚約者であることは皆が知っている。


報告が終わっても、ティニーがその場から動こうとはしないので、ギンスはティニーの肩に手を置いた。


「死んではいないんだ。深く考えるな」

「うん……」


ギンスの手のぬくもりだけが、不安に沈む彼女を支えていた。


――翌日、ティニーはそわそわした様子で王宮をウロウロとしていた。


「あら、ティニー、どうしたの?」

「あ、ナリオーネ様!ご機嫌麗しゅう……」

「挨拶はいいわ。私に用事があったのではないの?」

「おわかりでしたか……」

「わかるわ。だって、私を待ち構えていたじゃないの」

「はあ……さすがです」


ナリオーネは、落ち着かない様子のティニーをお茶の席へと連れて行った。そこにはドラゴン退治を命じたヘンリーニもいた。彼はティニーを見ると、少し眉をしかめた。


「なぜ、君がここに来るんだ」

「ヘンリーニ様、冷たすぎやしませんの?私もドラゴン退治の件は聞いておりますわよ。レーガのことを気にしているのでしょう。状況を詳しく教えてあげたらよいではありませんか」

「ふうむ。まあ、レーガは私が紹介したからな。ティニー、座れ」


ヘンリーニは手でティニーに座るように指示した。


「失礼します」

「レーガは負傷をした。……半年以上もしかしたら1年は療養が必要かもしれない」

「なんと……!」


ティニーはヘンリーニの言葉に悲壮な顔をしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ