ゆるやかに動き出した未来に、ささやかな期待の光
今日もティニーをレーガが迎えに来ていた。
「フィオナ、お前にいい男が……」
ティニーの肩を抱きながらオススメの男性を勧めてくるレーガに、フィオナは無神経だなと顔をしかめた。
「レーガ、父親気どりもいい迷惑よ。私、自然にできた縁を大事にするって決めたんだから」
「なに?」
「だから、もう放っておいてちょうだい」
「フィオナ……!」
娘に反抗された父のごとく、なにかを言おうとするレーガを止めたのはティニーだった。
「レーガ様、フィオナ嬢の気持ちを大事にしてあげましょう。私たちだって殿下の命でできた縁で、戸惑いもあったではないですか。本来ならば、自然に知り合って伴侶となるのが理想かもしれません」
「なにを、ティニー!自然にできる縁じゃないからこそ、オレは君を妻とすることができるんだぞ」
「それはそうですが……自然とできた縁なんて、ロマンチックじゃないですか」
「ロマンチック……ならば、今度の休みに星でも見に行こうではないか!」
自分との出会いはロマンチックではないという意味で受け取ったらしいレーガは、さっそくロマンチックを思い浮かべてデートのお誘いをしている。
「レーガって単純ね」
「こら、フィオナ!」
フィオナは呆れたようにその場を後にした。
「自然とできた縁ね……自然ってもう知り合っている人も入るのかしら?」
なんとなくまわりの男性を思い浮かべてみた。
騎士団の連中は、皆、よく鍛えられて逞しい。中でもやっぱりウルバーノは大人の余裕もあって色気がある。
(でも、彼はダメ。亡き人を忘れられないなんて、私が勝てる見込みはないわ)
自然とギンスが浮かんだ。
(あの人は……私のことを“失恋仲間”って言ってるくらいだし、脈なんてないわよね。まだ、ティニーさんが好きだろうし)
ふう、とため息をつくと後ろからポンと背中を叩かれた。
「よおっ、どうした?ため息なんてついて」
こちらの気など知らずギンスは笑顔で話しかけてきた。
「別に。……あなたが言った“自然にできた縁”について考えていただけだわ」
「ああ、あれな。で、騎士団の連中で気になるヤツいるのか?うまく取り持つけど?」
「世話好きね」
「だって、そりゃ“失恋仲間”だし?」
おどけて言う彼がなんだか憎らしい。
「もうそれはいいから。あなただってきちんとまわりに目を向けてよね。ティニーさんはレーガと幸せそうなんだから」
「わかってる。オレには時間が必要だってこと。……それにしてもずっとそばにいると、それも難しいよな」
「分かるわ……私も時折、レーガとティニーさんを見ると、ズキリと胸が痛むもの」
微妙な気持ちなのに、空はスッキリと晴れている。
「もう、暑いわね。のど乾いちゃう」
「カフェでも行こうか。オレもたまにはおしゃれなところ、行きたいしさ」
「……いいわね」
(ギンスも新しい一歩を踏み出そうと思ったのかしら?)
その横顔を見ても彼の本心は分からなかったけれど、なんとなく彼の気分は良さそうだ。
「じゃあ、まずは汗を流してきて。私も出かける準備をしてくるから」
「おう、じゃあ迎えに行くよ」
「ええ。後でね」
2人は別れると、それぞれ用意に向かった。
「……む」
――2人の様子を木の影からティニーとレーガがそっと見守っていた。
レーガはめざとく、フィオナの後を追うギンスを見つけたのだ。
「レーガ様、見守らなくちゃダメですよ。口出し厳禁ですよ?」
「それはそうだが、よりによってあの2人が……」
「確かにあの2人が接近するとは思いませんでしたが……自然の結果かもしれませんよ?」
「だが、ギンスでなくても……かと言って、ウルバーノもダメだ……ぶつぶつ」
「あーあ、将来が思いやられますね」
ボヤキ続けるレーガをティニーが笑った。
――フィオナ、ウルバーノ、ギンスたちの運命はどうなるかは誰にもわからない。
けれど、ゆっくりと確実に少しずつ彼らの運命は動き始めていたのだった。




