まるで父?レーガの過保護すぎる婚活指南と悩めるウルバーノ
「とにかく戻るぞ、フィオナ」
レーガはフィオナの手を取ると城門をくぐって、さっさと城の中へ連れて行った。
城門の上ではティニーとギンスが慌てた。
「ちょっと、私たちも早く戻らないと!」
「ああ。ティニーとオレが一緒にいるところを団長に見られたら殺される」
「なら、なんでここに来たんだよ」
「そりゃ、フィオナ嬢のことが心配だったしな」
ギンスは副隊長のことではなく、フィオナのことを心配して来ていたらしい。
「副隊長はフラフラして見えるけど、悪い人じゃないと思うよ」
「団長の前でティニーがそんなことを言ったら不機嫌になるぜ」
「気にしすぎだよ」
そう言いながらも、2人は気配を消しつつ階段を駆け下りた。前にいたギンスにぶつかり、足をもつれさせて転びそうになった。ティニーが思わずギンスの腕をつかんだ。
「うわっ」
「おい、大丈夫かよ?」
「悪い、悪い」
そんな会話をしながら、誰かに見つかる前にそれぞれの寮へと急いで戻った。
――レーガは来客宿泊専用の建物へ向かいながら、まだデートの尋問をフィオナにしていた。
「フィオナ、ウルバーノを気に入ったのか?」
「だから、まだそんなことはわからないと言ったでしょう?」
「オレとしては深みにはまる前に離れて欲しいのだが」
レーガは渋い顔をする。
「いくらレーガでも私の問題に踏み込み過ぎだわ。そもそも誰のせいでいきなり婚活することになったと思っているの?レーガがティニーさんを選んだからでしょう?」
「それは……誤解があった話だろう。オレはいつだってフィオナの幸せを願っている。兄として」
「ふうん、兄ね。今のレーガはまるで私の父のようだけど?」
「な!?オレが父……」
レーガは頭をかきむしる。父と言われて、じわじわとショックを受けたのだ。
「とにかく、オレがいい男を見つけてやるから焦るな」
「はあ?なんでレーガが選ぶのよ」
「お前を泣かせない男を選ぶのは当然だろう」
その真剣すぎる言葉に、フィオナは思わずため息をついた。
(もう、なんでこんな父みたいな人を、私は好きだったのかしら?)
胸の奥が少し温かいのを意識しながらも、自分は確かに新しい一歩を踏み出そうとしているのを感じていた。
(過去の憧れはもう過去のもの。今は、自分の人生を自分の足で歩くわ。私自身の選択で)
フィオナは強く思っていた。
一方その頃、寮の自室で椅子に腰かけたウルバーノは、机に置かれた手紙を手に取った。
「……またか」
封を切ってみれば、やはり“早く結婚を決めろ”という実家からの催促だった。
封の中身には、さらに具体的な日程まで書かれていた。
《来月にはアマドル侯爵家の令嬢と会食の席を設けた。必ず出席するように》
「勝手に予定を決めないでほしいな」
手紙を握りつぶしかけたウルバーノは、深く息を吐き出す。
彼の母は過保護で、王都の名家に婿入りさせることで息子の将来を盤石にしようとしている。
家を思う気持ちは理解できるが、その強引さに息苦しさを覚えずにはいられなかった。
(結婚は、僕自身の選択で決めたい……。ただ家の安泰のために誰かの隣に立つなんて、冗談じゃない)
彼の頭をよぎるのは、今日のフィオナの姿だ。
彼女は王都の令嬢とは違って、真面目で誠実で堂々としている。しっかりと自分の意見も伝えられるのが魅力的だ。
だが、まだ“愛している”とは言えない。
それでも、フィオナとなら自分の未来を築けるかもしれない……そんな予感がかすかに心を揺らしていた。
窓の外では夜風がカーテンをひらめかせている。
(まるで、僕の胸のざわめきを映しているみたいだな……)
ウルバーノは手紙を机に放り出し、空を仰いだ。
「……さて、どう動くべきかな」
そのつぶやきは夜の静けさに溶け、誰にも届くことはなかったのだった。




