デート帰り、城門前でバトル勃発!?
帰りの道すがらも、ウルバーノはさりげなくフィオナを気遣ってくれた。
「そこ、段差があるから気を付けて」
手を差し伸べられた。
「僕の手を握るのがイヤじゃなければ、ぜひ手を取って欲しいな」
どこか色気のある余裕な笑顔で言われて、フィオナは手を出した。
しっかりと手をつながれる。
(はああ、すっかりウルバーノ様のペースになりつつあるわ……)
フィオナも領地では美少女としてチヤホヤされてきた経験を持っている。
いつもなら、自分が相手をドキドキさせるのにと思った。
(とはいえ、レーガと結婚すると思っていたからお付き合い経験はないのだけど)
ウルバーノは女性とたくさんの付き合いをしたことがあるだろうから、自分では太刀打ちできないだろうな、と思えた。
「今日1日だけですけれど、ウルバーノ様がどんな方か少しだけ分かった気がしますわ」
「僕をどんなふうに思った?」
「女性に人気がある方です。 “人たらし”ですわ」
「それは君にとって悪いこと?」
つないだ手に少しだけ力がこめられた。
「正直、分かりませんわ。女性を泣かせているならば“悪”ですし」
「僕はわざと泣かせることはしないよ」
「わざとじゃなければいいと?」
夕暮れの街並みは急ぐ人で多い。夕日は2人の影は長く伸びている。
「僕はずっと“この人だ”って人を探していたんだ。でも、なかなかピンとくる人に巡り合えなかった。真剣なのに」
のぞき込まれるようにして言われた。
(この方は真面目に言っているのかしら。私に、婿として故郷に来てもいいと言ったのは、どこまで本気なのだろう?)
真意を尋ねるにしてもまともにデートしたのは今日が初めてだ。あまり問い詰めるのもいけない気がして黙った。
しばらくそのまま歩き続けて城門近くまで来ると、人影が見えた。よく知っている人物が仁王立ちしていた。
「……レーガ!」
腕を組んで眉間に深いしわを寄せる様は、戦場での彼の姿のようだ。ウルバーノに突き刺すような視線を向けていた。
「ウルバーノ、これは一体どういうつもりだ?」
「どういうつもり、とは?」
「しらばっくれるな。オレの許可もとらずにフィオナを連れ出してデートとは、いい度胸だな」
怒った時のレーガが鬼神のようだと言われているのは、フィオナも知っている。思わず割って入った。
「レーガ、私も同意してデートしたのだわ」
「そうですよ。きちんと騎士団の連中の前でデートを申し込みましたし。だからこそ、団長がここで待っていたんでしょう?フィオナ嬢を大事にしてるのは、皆、知ってますからね」
「うるさい!オレはお前の仕事は評価していても、異性面では信用してないんだ」
レーガが腕組みしながら指を小刻みに動かしている。
「そう、イライラしないで下さい。私は紳士的にデートをしてきただけですよ。ね、フィオナ嬢?」
「そうですわ。ウルバーノ様は、ちゃんと私を気遣ってくださいましたし、レーガが心配するようなことはなかったわ」
レーガの目が細くなる。
「そいつが何人の女を泣かせたか、知らないだろう?」
「自分の意図で泣かせた覚えはありませんよ。断って泣かせたことはありますが」
「屁理屈を言いやがって」
ウルバーノはレーガの気の立つ姿とは逆に、どこ吹く風といった笑みを浮かべている。
「……へえ、副隊長って度胸あるな」
「だなあ。だてに副隊長やってないな」
城壁の上でコソコソと2人が話す。ティニーとギンスだった。
「心配で待っていたら、2人が手をつないで帰って来たんだからレーガ様は怒ると思うよ」
「フィオナ嬢はもう子どもじゃないぜ?」
「レーガ様にとってフィオナ嬢はいつまでも子どもみたいな存在なんだよ」
「お前もすっかり親類気どりだな」
「……む、そういうこと言うな」
ティニーがムッとした顔をした。
「副隊長がとりあえず無事そうでよかったよ」
「ティニー、副隊長びいきだったっけ?」
「そうじゃないけど、世話になった人だし」
ウルバーノは、ティニーがヘンリーニの婚約者から女性騎士に転身した時に、騎士団の中で真っ先に声をかけてくれた人だ。気を使う人が多いなか、彼が気さくに話しかけてくれたから、ティニーはすぐに騎士団で馴染めた。
「お前がデートに誘われなくて良かったよ」
「ただでさえモテる人が、わざわざ私を誘うわけないだろ」
「お前が鈍感で良かったわ~」
「は?」
城壁の上で、いつも通りの言い合いをする2人だった。




