モテすぎ騎士にドキドキしてしまった午後
訓練が終わり、騎士たちは剣や槍を片付けている。
「さて行こうか、フィオナ嬢」
ウルバーノはさりげなくフィオナの横に立った。
「……ええ。散歩でしたよね?」
フィオナは心臓が少し早く打つのを感じながら尋ねた。
「散歩しながらスイーツ店に行かない?たぶん、フィオナ嬢も好きだと思うんだ」
「男性ならばスイーツよりもお肉じゃありませんか?」
「僕は訓練後の甘い物も好きだよ」
楽しげに言う。フィオナはその余裕に少し圧倒されそうになった。
(ウルバーノ様は、やっぱり女性に慣れているんだわ)
道中も通りすがる女性たちに声をかけられていた。その度にウルバーノは笑顔で軽く応えている。
フィオナが立ち止まった。
「どうしたの?」
「ウルバーノ様に女性のウワサが絶えないというのが分かった気がしますわ。私、そのような方はやっぱり伴侶にふさわしいとは……」
「待って」
ウルバーノは寂しそうな顔をしていた。
「僕は女性をたぶらかしたり傷つけたりするのは信条じゃないよ。ただ、冷たくするつもりもないから勘違いされやすいんだ」
(自然とモテてしまうってこと……?)
ため息をついた。人を自然と惹きつけてしまう人は一定数いるのかもしれない。
「今日、1日僕とデートしてみてからでも判断するのは遅くないんじゃないかな?」
「……そうですわね」
ウルバーノは持参してきたフードを頭からすっぽり被ると歩き出した。
「暑いのでは?」
「これを被っていたら、僕だって分かりにくいだろう?」
ウィンクされた。
そのまま、午後の柔らかな日差しの中のスイーツ店へ向かって歩き出す。
自分に対する配慮だと思うと、少しくすぐったい気がした。
――だが、スイーツ店に着いて彼がフードを脱ぐなり、さっそく女性店員たちや客の女性に囲まれていた。
「あら、ウルバーノ様!いらっしゃい~」
「きゃあ、ウルバーノ様とここで会えるなんて嬉しい!」
次々と近づいて来る女性店員と女性客たちに、フィオナは途端に現実に引き戻された。
(なんなのこれ……デートどころじゃないわ)
予想以上の出来事に冷めた気持ちでいると、ウルバーノは彼女たちに言った。
「こちらのフィオナ嬢とデート中なんだ。悪いけど2人の時間を見守ってくれないかな?」
「ええ~!?」
「頼むよ」
困ったように手を顔の前で合わせる彼に、彼女たちはブツブツ言いながら離れていく。
「良かったのですか?」
「どうしてそんなことを言うの?僕たちの時間がなくなってしまうところだったよ。って、僕のせいだね。ごめんね」
「……べつにいいですわ」
ウルバーノはさりげなく椅子を引き、フィオナを座らせた。
「ここはチョコレートタルトがオススメだよ。濃厚でほっぺたが落ちそうになる」
「ならば、それと紅茶を」
「僕はもう1つのオススメのシナモンパイを頼むからそちらも食べてみてね」
「え……」
彼は慣れた様子で注文すると、ニコニコと騎士団の話などをしていた。
「フィオナ嬢って、情に厚いよね。最初はなんだか怖そうな令嬢だなと思ったけど、怪我したヤツの手当も率先してやってくれるじゃない。ステキだなと思って」
「そんなこと……当たり前ですわ」
スイーツが運ばれてくると、ウルバーノは一口分のパイをフォークに取り、フィオナに差し出した。
「はい、あ~ん」
「そんな……恥ずかしいですわ!」
「お願い。食べてみて」
仕方なく口を開くと、ウルバーノが楽しそうにフォークを口に運んだ。
「おいしい……!」
「でしょ?」
女性たちからの視線を感じて、ちょっとした優越感がわいた。
(女性に人気のウルバーノ様にあ~んされるなんて、悪くないわ)
「かわいい」
ウルバーノがフィオナの手を取ると、まわりがざわめく。
「まだ、手を握るのは早いですわ」
「なら、もう少ししたらいいってこと?」
「もう……」
店を出ると日は傾きかけ、柔らかく街路樹を照らしていた。意外と盛り上がって話してしまったようだ。
2人は並んで歩いた。
「美味しかったですね」
「うん、こういうのも悪くないでしょ?」
大人の魅力が漂うウルバーノに、フィオナは思わずドキリとした。
(いやだわ。私、こんな簡単な女じゃないわ)
つかみどころのないウルバーノにペースを乱されつつ、帰途についたフィオナだった。




