副隊長ウルバーノ、フィオナにロックオン
「私も次の一歩を踏み出そうと思っていますの」
「ふうん?どうしてそんな秘密話みたいに言うんだい?前向きでいいじゃないか」
「私がレーガを慕っていたのは皆さんに知られてしまっているから、大っぴらに言うのは恥ずかしいですわ……」
フィオナは地面へと視線を向けた。
「そうかな?前向きだからこそほかに目を向けたのだろう?どんな男が好み?」
「強い方が……レーガみたいな」
「確かに団長は強いね。団長には敵わないけれど、僕もなかなかやるよ?」
ウルバーノは色気たっぷりに髪をかきあげた。
「それって、私にアピールされています?」
「うん。君みたいな強気令嬢も好みだね」
終始余裕あるウルバーノにフィオナは眉を寄せた。
「ウルバーノ様。私、結婚するならお婿さんとして領地に来て私を支えて欲しいのです。その覚悟はおありですの?」
「いいんじゃない?むしろ歓迎だね。僕は子爵家の三男坊だし。条件がバッチリ合うじゃないか」
(軽い……ウルバーノ様って軽いわ)
色気があって大人で副隊長を任されるだけの実力もある。だけど、なんだか軽薄なところが気になった。
「とりあえず、このあとデートでもどう?」
「えーと……」
「副隊長!フィオナ嬢をあまりからかわないでくださいよ。団長が知ったらキレますよ」
ギンスが大きな声で言いながら歩み寄る。
「なんで団長にキレられなくちゃいけないんだい?」
「あんた、女癖悪いでしょ?団長の可愛い姪が悪い男に引っ掛かったらショックで寝込んじゃいますよ」
「あはは、寝込むまでいくかな?」
話に入ってきたのはティニーだ。
「なんだよ、結局、お前も来るならオレに言わせるなよ」
「悪い。ちょっと見てられなくて。副隊長の方が、弁が立ちそうだ」
ティニーはウルバーノの方を見た。
「フィオナ嬢はレーガ様の大事な妹分です。そして、いずれ私の親類にもなる令嬢。あなたはどれくらい真面目な気持ちで声をかけているんです?」
「フィオナ嬢から相手に望むものは聞いたよ。故郷に連れて帰れる強い男だってね。ちょうどいいなって話していたんだ」
平然とした様子で言うウルバーノにティニーは困ったな、と思った。
(レーガはこの人のことを“女癖の悪いナルシスト”って言っているんだけどな)
「フィオナ嬢はどう思っているの?」
「私は……まだ分かりませんわ。デートもしておりませんし」
「じゃあ、さっそくしようよ。訓練が終わったら。未来の親戚も見てる前で誘うんだからいいよね?」
「え、ええと……」
フィオナは一瞬戸惑った。訓練場の隅で見守るギンスやティニーの視線に、顔が赤くなる。
「君の好きなスイーツ店に行くのもいいし、そこらへんを一緒に歩いて話すだけでもいい」
「それなら、ぜひ」
ギンスは2人を見て、眉をひそめた。
「副隊長、絶対に手を出さないで下さいよ」
「当たり前だよ。僕のことを何だと思っているんだい?」
「女癖が悪い……いえ、大変おモテになる上司と」
「ギンス、集中的に模擬戦やろうか。教育だ」
「いてえ。ちょっと……」
ウルバーノがニッコリ微笑みながらギンスの肩をつかみ連れて行く。
「あーあ、地味に副隊長を怒らせたな、ギンスは」
「あの……」
「なに?」
手をギュッと握ったフィオナがティニーを見つめている。
「あの、ウルバーノ様はそんなに女癖が悪いのですか?」
「う~ん。交際経験が豊富とは聞いている。酒場に行くとすぐに女性たちに囲まれている、と男性騎士たちから聞いたことがあるよ」
「ティニーさんはその姿を見たことはないの?」
「私はレーガ様から“自分がいないところで酒を飲まないでほしい”と言われているから」
ティニーはポリポリと頬をかきながら照れた。
「もう。ノロケはいいですわ」
レーガは本当にティニーが大好きでたまらないのだなと、フィオナはそう思ったのだった。




