フィオナ、新たな出会いで恋の予感?
「今日も来てるんだな」
ギンスが呆れたように見ている。
「何か悪い?だって、レーガだって幸せになったのだから私も負けずに幸せにならなきゃ」
「そういうのは競うものじゃないだろ」
「あなただって、大好きなティニーさんがレーガにとられて悔しいくせに」
腕組みしながらフィオナが言うと、ギンスが慌てた。
「ちょっと、そんなことをここで言うなって。……オレはもう自分の気持ちには整理つけてるんだから」
「うそ。だって、ギンスさんたらティニーさんの姿を自然と追っているわ。レーガに言いつけてもいいのよ?」
「だからやめろって」
年下のフィオナに言われて、ギンスはたじたじになる。
フィオナは変わらず訓練場へ来ては、男性騎士たちをチェックしているようだ。
「強い男が好きだからって、なにも騎士団の男じゃなくてもいいだろ」
「ダメよ。だって、私のお婿さんになる人は強い人じゃなくちゃって考えているんだから。前も言ったけど、うちの故郷はドラゴンが生息しているのよ?戦える人がふさわしいの」
「まあ、わかるけど……」
ドラゴンとまともに対峙できるのは団長ぐらいしかいないんじゃないか?と言いかけてやめた。そんな面倒になることを言うわけにいかない。
「だから、ここで探すのよ。私、真剣なんだから!」
「わかったよ。これは、と思うやつがいたら教えろよ。手伝ってやるから」
「ええ、お願い」
“もしもいい人がいなければ……”という幼い頃の約束から解放され、今度こそ自分の幸せをつかみたい。
訓練場の一角で男性騎士たちが剣を交わすなか、フィオナは自分の未来をそう考えていた。
「ギンス、お疲れ。またフィオナ嬢の面倒を見ていたのか?」
ティニーが汗を拭きながらギンスに話しかけた。
「ああ、どうしても強い男を婿にしたいんだと。いつまでもいられると目障りだから手伝ってやることにしたけど」
「そんなこと言って。ギンスが面倒見いいのは知っているよ」
ふと微笑みかけるティニーがやけにキレイに見えた。
(人妻になる余裕ってやつかよ……)
ギンスの中でもまだティニーにくすぶる想いがある。でも、彼女はレーガと結婚する。そんな2人を祝福したい、そう自分の中で折り合いをつけた。
「あ、副隊長がフィオナ嬢に近づいているぞ」
ティニーの言う方を見ると、フィオナの前に、ふわりと後ろに髪を流した副隊長・ウルバーノがいた。
彼は、女性たちの憧れの的で、騎士団きっての恋愛遍歴の多さから、自分がモテることをわかっている男だ。
「あれ、放っておいていいの?」
「なんでオレに言うんだよ」
「だって、レーガ様が男に近づくなと私に言うから」
レーガは現在、ヘンリーニの護衛をメインにしていて訓練場には頻繁に顔を出せない。ティニーに悪い虫がつくのを警戒していた。
「オレのそばにいるのはいいのかよ……」
甘く見られているな、とちょっぴり面白くない。でも、ティニーが言うので立ち上がった。
「頼んだぞ」
「ち、なんでオレが」
自分はお人よしだなと思いながらフィオナたちの方へと向かう。
「フィオナ嬢、今日は一段と輝いて見えますね」
座っていたフィオナは上からのぞき込むようにしているウルバーノを見上げた。
「あら、副隊長のウルバーノ様。ごきげんよう」
「こんなところにいたら、その白い肌が焼けてしまうよ」
ウルバーノは手をかざして日差しを遮りながら、にっこりと笑った。その笑顔には余裕があり、女性騎士たちの視線を集める理由がよくわかる。
「気が利く方ですわね……」
フィオナは少し照れながらも、堂々とした態度で返した。幼い頃からレーガに甘えて育った分、年齢よりも幼く見られることを気にしている。年上の彼に大人っぽく思われるようにしたつもりだ。
「最近は訓練場で君をよく見かける。何か目的があるのかい?」
「ええ、実は……」
フィオナは内緒話をするような真剣な表情になったのだった。




