ヘンリーニの降伏&感謝とレーガの揺るがぬ誓い
その時、皆の前に颯爽と現れたのは、ヘンリーニとナリオーネだった。
「なにを騒いでいた?」
ヘンリーニが尋ねると、レーガが頭を下げた。
「とある馬鹿者が令嬢に暴力を振るったので、牢屋に連れて行かせたところです」
「女性に暴力など、許しがたいな」
「本当ですわ。きっと、ティニーがかっこよく助けてあげたのでしょう?あなたのファンがますます増えてしまうわね。ただでさえ、ティニーのファンはどんどん増えて私、嫉妬しているのに」
ナリオーネの目がウルウルする。
「いえいえ、私はほとんどなにもしていませんよ」
ティニーはドレス姿のままひざまずいた。
「それよりも、ドレス姿でなければ私もナリオーネ様にダンスを申し込むところですのに」
手を上げられたのがレーガの親類だったと知られない方がいい気がして、ティニーは話をそらした。
「まあ。ティニーったら。私はドレス姿のあなたでもいいわよ。だって、私はもうティニーがどんな姿をしていても好きだもの♡」
「うっ、私の心臓はナリオーネ様に撃ち抜かれてしまいました」
ティニーはナリオーネに合わせて大げさに心臓を抑えた。
「なにを毎回、見せられているんだ、私は!」
いつものごとくヘンリーニが怒っていた。
「ナリオーネ、踊るなら私と踊ろう。ティニー、もう頼むから私の恋人を誘惑しないでくれ」
ヘンリーニはホントに困ったような顔をした。
(へへ、やっと私の女性を魅了する力を認めたか。気持ちいい)
「誘惑なんてしませんよ。ナリオーネ様のお相手は殿下しかいらっしゃいません」
「おお……お前に言われて、なんだか嬉しい気がしてしまうのはなぜだろう」
ヘンリーニは満足げな笑みを浮かべた。
「まあ……私もお前には厳しくしてしまった面もあったが、今となってはナリオーネを大切に守っているし、彼女を誘惑する以外は私には異存ない。これからも頼むぞ」
初めてヘンリーニがティニーに感謝の言葉を示した。
これには思わずティニーも少し、ジーンとしてしまった。
そんなティニーの肩をレーガが優しく抱く。
「私の婚約者はとても素敵な女性でしょう?殿下がナリオーネ様に一途なように、私も彼女に一途に尽くします」
高々と宣言すると、まわりがざわめいた。
「ちょ、ちょっと団長!」
「レーガ、だ。もう団長呼びはしないでくれ」
大勢の前で愛の言葉を宣言するなんて、普段の彼からは考えられなかった。彼は派手なことを好むような人ではない。
「あーあ、オレの入る隙間なんて全くなくなったじゃねえか……」
ギンスが小さくぼやく。
「ギンス、悪いな。隙なんて1ミリもないぞ。諦めろ」
「はいはい、邪魔者は退散しますよ……」
ギンスは肩をすくめると、ワイングラスを持ったまま人混みを抜けていった。背中越しに軽く手を振っている。
「オレたちも踊ろう」
レーガがティニーに手を差し出した。
「はい。何気に初めてですね。団長……いえ、レーガ様とダンスするのは」
「ああ。だから、絶対に誰よりも君と先にダンスすると決めていた」
「……急に積極的ですね」
「あいつのおかげかな」
チラリとやった視線の先にはギンスがいた。彼はワイングラスをあおっていた。
「あいつはまだティニーのことを想っているかもしれない。だが、オレは隙なんて与えない。だってオレは君が好きでたまらないからな」
「レーガ様……!」
急に情熱的に言葉を発するようになったレーガに、ティニーはたじたじになった。
――ギンスはすることもなくなってワインを飲んでいた。
「たく、なんだよ。つまらねえ」
「ねえ、飲み過ぎじゃない?」
声をかけたのはフィオナだった。
「大丈夫。オレは酒に強いんだ。それより、君は大丈夫なの?団長を好きだったわけだろう?」
「もう、それは終わったの。はい、これお水よ。顔が真っ赤だわ」
フィオナから差し出された水のグラスをギンスは受け取る。
「どうも……」
その後、ギンスとフィオナは、互いに言葉を交わしながら静かに話を続けていた。




