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婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第3章 交差する想い、紡ぐ未来

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舞踏会デビューとギンスの強引エスコート

舞踏会が開かれる日がやってきた。


王宮の大広間には華やかな飾りと優雅な調度品が並び、舞踏会の熱気が少しずつ高まってきていた。


ティニーは控え室の鏡の前に立つと、久しぶりに着るドレスに袖を通して身だしなみを整えていた。


(ああ、やっぱりドレスって動きにくいよな。舞踏会も好きじゃないし……でも、あのフィオナもいるし、ここは頑張るしかない)


フィオナが舞踏会には並々ならぬ気合いを入れているらしいと、レーガから聞いていた。


『フィオナは、きちんと理解してくれた。前向きに伴侶を得ようと考えを改めることにしたらしい。オレも彼女が気に入る男がいれば積極的に協力するつもりだ』


ティニーの信頼を失いかけたレーガは、気を使って、フィオナのことをわざわざ知らせてくれた。


(まあ、知らせてくれる分には不安はないけれど)


以前は、レーガがフィオナを忘れられなくて連れ帰ったと思っていたから、ずいぶんと悩まされた。今はレーガも気を使って、細かく説明してくれるようになったから、その点では良かったと思っている。


控え室の扉がノックされ、メイドがそっと入ってきた。


「舞踏会の開宴の時刻でございます。そろそろご移動なさってはいかがでしょうか?」


ティニーは深く息を吸い込むと鏡の前から離れた。


レーガは社交界デビューのフィオナを一人にするわけにいかず、彼女に付き添うことになっている。それは仕方がない。


――会場前に来ると、なぜか正装したギンスがいた。


「お前、一人で入場するつもり?」

「仕方ないじゃないか。団長はフィオナ嬢の付き添いをするのだし。それより、ギンスも舞踏会に出るつもり?相手なんていた?」

「オレの相手はお前だよ」


ギンスは腕を軽く曲げると、差し出した。


「なにやってるんだ?」

「エスコートだろ、どう見ても」

「……だからなんでギンスが」

「いいから腕に手を置けよ。なんのために正装したと思っているんだ?」

「どういうことだよ?」


ティニーが戸惑っていると、会場の大きな扉が開いて次々に入場していく。前の方にはフィオナとレーガもいるのが見えた。


「じゃあ、行くぞ」


ギンスに声をかけられ、ティニーは仕方なく腕に手を添えると、背筋を伸ばして頷いた。


「じゃあ、よろしく」


2人は王宮の大広間の扉へ向かうと、声高に響く楽器の音とともに華やかな舞踏会へと足を踏み入れた。


「もっと笑えって。眉間にシワがよってる」


小さな声でギンスが小言を言ってくる。


「シワなんて寄せてないよ。ちょっと緊張しているだけ」

「元、王子の婚約者だったから、こういうの慣れているだろ?」

「そんなの忘れたよ。今の私はあの時の私じゃない」


確かにドレスを着たり化粧したり、あの頃はいろいろとした。だけど、今は騎士だ。


ギンスを見ると、彼は品の良い令息らしく優雅に歩いていた。深い紺色の正装もギンスを洗練された男性に見せている。普段の剣を振るう姿とはまるで違って、見違えた。


(負けるか)


ティニーも微笑むと、優雅に見えるように歩いた。


「……へえ、さすが。なかなかやるな」

「そうでしょ?見直したか?なんてね」

「見直さなくても、お前はいつも綺麗だよ」

「……!」


ギンスが貴公子らしく微笑むと、ティニーは顔を真っ赤にした。


――その様子を遠くから見つめていたレーガは、思わず眉をひそめた。


「ねえ、レーガ。あの2人っていい感じに見えるけど、本当にただの同僚でいいんだよね?」


隣にいたフィオナが鋭い質問をしてくる。


「ああ、ただのなんでもない何にもなり得ない同僚同士だ。オレがフィオナのエスコートをするから、彼女のエスコートを頼んだにすぎない。気にするな」


回りくどい言い方をして、自分が意外と嫉妬深い男なのだと、レーガは思った。

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