表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第3章 交差する想い、紡ぐ未来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
24/52

許されぬ抱擁と氷の視線

訓練が終わり、日もすっかり傾いてきた頃だった。


シャワーを浴びてすっきりとしたティニーは、ギンスを食堂に誘おうと男子寮の方へと向かっていた。


すると、まだ訓練着姿のままで木陰に一人座っているギンスを見つけた。


「まだシャワー浴びてなかったのか?もう夕食の時間だよ」

「わかってる。けど、そういう気にならない」

「なんだよ。まだ負けたことを気にしてるのか?あれは仕方ないよ。強いからこそ団長やってるんだし」


ポン、と背中を叩くとジロリと睨まれた。


「お前、無神経で鈍感。男心分かってないな」

「え……そんなひどいこと言ったかなあ?それに、男心なんて言われても。私は一応、女だから完全に理解は難しいかも」

「……もういいよ。お前が慰めてくれるなら元気出るかも」

「え、そう?じゃあ、とりあえず食堂に行く前に、シャワー浴びてこいよ。ここで待ってるから」


食堂は汚れたまま入るのは禁止されている。


「ああ」


ギンスは急いでシャワーを浴びに行った。


しばらく、木にもたれて待っていると、すぐに彼は戻って来た。濡れた髪がちょっと色っぽい。


「早かったね。……お前って、水が滴るといい男って言われたりしない?」

「いい男?なんだよそれ」


ギンスが濡れた頭に手をやりながらやっと笑顔を見せた。


「慰めてくれてるのか?」

「う~ん、思ったことを言っただけだけど?」

「そうか」


ギンスは肩が触れ合うくらいの距離に寄ってきた。


「ちょっと、近いよ」

「お前が嬉しいことを言うから喜んでいるんだよ」


ギンスから石鹸の良い香りがして……少し、ドキリとした。


(いけない、私ったら。何を考えているの)


――食事を終えた。


「食い過ぎた。少し歩こうぜ」

「いいけど。少しだけだよ。私、読みたい本もあるんだから」

「へえ、本を読むのか」

「読むよ。知らないことを知るって面白いじゃないか。だから、妃教育も耐えられる部分があった。過去のことだけどね」


夜の王宮の庭は噴水が月明かりに照らされて思のほか、ロマンチックだった。ゆっくりと噴水の周りを歩くと水音が静かに響いていて、日常とは違った雰囲気を感じる。


(レーガ様とも噴水のそばで話をしたな)


「……こうして2人で歩くと、なんか変な感じがするね」

「変って?」

「だって、私たちっていつもほとんど、訓練場にいるからさ」


ティニーは笑った。


「そうだな。でも、オレはこんな日がもっとあるといいなと思ってるけどな」

「へ、へえそう?」


ギンスの手がそっと伸びてきて、ティニーの頬に触れた。


「なにするんだよ?」


動揺を隠せず、ティニーは慌ててその手をそっと振りほどく。


「こういうの、よくないよ……」

「なんで?慰めてくれないのかよ?」

「慰めるってのは、こういうことじゃなくて……。私、一応、団長の婚約者なんだからさ」

「半分しか許してないくせに」

「それはそうだけど」

「また、傷つくようなことが起きたらどうするんだよ?」

「え……?」


ギンスの言葉が心の奥に静かに沈んでいき、ティニーは言葉を返せず、ふと視線を落とした。


「それは、ちょっとしんどいな」


ティニーは苦笑いを浮かべ、小さく息を吐いたその刹那、ふと目の前の月明かりが翳った。


気づいた時には、ギンスの腕がティニーをしっかりと包み込んでいた。


「……ギンス!」


声は驚きと戸惑いが混じって小さな叫びとなる。


近くで聞こえる鼓動が、自分のものか、彼のものかわからないほど脈打つのを感じた。


ギンスから香る石鹸の匂いが、息苦しいほど近くに感じる。


驚きと戸惑いの中、ギンスの腕の温もりがじわりと広がっていった。


「は、離せって」


ギンスの胸を押し返したが、すぐに強い力で再び抱きしめられた。彼の吐息が耳にかかり、胸の奥がざわめいた。


「ギンスってば!」

「……何をしている」


低く押し殺した声が背後から響いた。


振り返ると、噴水の影からレーガが現れた。


月光に照らされたその瞳は氷のように冷たく光り、まっすぐに2人を射抜いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ