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婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第3章 交差する想い、紡ぐ未来

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訓練場の一騎打ち――勝者と敗者の想い

朝日が少しずつ高く昇り、訓練場の木々を柔らかく照らしている。


ティニーは、訓練場でいつものように訓練に励んでいた。


身体が少しずつ温まってきて、リズムよく刀を振るう感覚が心地よい。ギンスも横で素振りを始めた。


「よう。なんだか機嫌良さそうだな。なんかあったか?」

「機嫌いいかは分からないけど……団長と半分だけ仲直りしたよ」

「半分だけってなんだよ?」


心なしかギンスの目が鋭くなる。


「団長が私に事情を話してくれた。団長はフィオナ嬢に“いい人が見つからなかったら嫁にもらってやる”というようなことを言っていたらしいんだ。それで、彼女が本気にしていたっていう……彼女にはこれからきちんと言ってくれるみたい。だから半分だけ仲直り」

「それって半分って言えるのかよ」


ギンスが不服そうな声を出した。


「団長って不器用な人だなって思ったよ」

「それでお前はいいと思っているのか?振り回されて嫌な思いをしたくせに」

「……やけに突っかかるなあ」

「心配してやってるんだよ」


ギンスは木剣を振る手を止めて、こちらを真剣な表情で見ていた。


「……信じてみることにしたんだよ。もし、それでも上手くいかないことがあったら、また慰めてくれ」

「わかった」


半ば冗談で言ったのに、どこまでも真面目な調子で返された。


ギンスは離れていくと、男性騎士と模擬戦を始めた。


「真面目なやつだよなあ……自分のことでもないのに」


ギンスが模擬戦の相手と剣を交えている姿を眺めていると、声をかけられた。


「ティニー、何を見ている?」

「あ、団長。……彼ら、なかなかやりますよね」


何となく答えると、レーガは彼らの元へと真っすぐ歩いて行った。


「おい、ギンス。オレが相手になる」


ギンスは剣を交えるのを止めると、レーガを警戒するように見る。


「団長が?殿下の護衛業務はどうしたんですか?」

「今日は他の者が付いている。オレも訓練しないと腕が鈍るからここに来た。相手をしてやるぞ」


レーガが静かな笑みを浮かべながら言うと、ギンスは軽くうなずいて剣を構えた。


2人は互いに睨み合うと、間合いをはかる。


最初の一閃が交わされたかと思うと、ものすごい勢いで刃と刃がぶつかり合う音が鋭く響いた。


ギンスの動きは素早い。だが、レーガは冷静に重い一撃でギンスを追い詰めていた。


ギンスは鋭い連続攻撃を繰り出すが、レーガがものともせずギンスの木剣を弾き飛ばした。


「くっ……!」


ギンスが慌てて体勢を崩したところに、レーガが首に剣を突きつけていた。


「まだまだだな」

「くそう、負けたか……」


息を切らしながら木剣を拾い上げ、ギンスは潔く頭を下げた。


そのまま、訓練場の入口にいるティニーの方へと歩いてきた。


「ギンス、良かったよ」

「どこが。オレ、負けたんだぞ」

「そりゃ当たり前だろ。相手は団長……」


最後まで言わないうちにギンスが通り過ぎていく。


(負けたことが悔しいんだろうけど、ドラゴンも倒す人が相手じゃ敵わないよ)


不思議に思っていると、レーガが微笑んでこちらを見ていた。


「たまには訓練場で汗をかくのもいいな」

「団長が強いってことを実感しました」


強くて実力ある人だとやはり感じた。


「ティニーの前でいいところを見せられて良かった」


そばまで来ると、秘密を話すみたいにレーガが照れくさそうに言ってきた。


(私にいいところを見せたかったか。この人は……)


子どもみたいなところもあるのだなと思った半面、負けたギンスの方も気になった。


(あいつ、負けてカッコ悪いと思ったからあんなことを言ったんだろうな)


後で、慰めてやろうと思ったティニーだった。

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