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婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第2章 騎士たちの恋心、揺れる想いとすれ違いの予感

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20/22

団長の本心――フィオナの秘密と婚約の真実

「フィオナ嬢になんて言ったんです?」


ティニーの視線をまっすぐ受け止めて、レーガはしばらく言葉を選ぶように黙った。


「 “もし、お前がふさわしい相手を見つけられなかったらオレが結婚してもいい”と。でも、それはフィオナが小さい時の話だ」

「小さい時の約束を彼女は信じている、ということですか」

「冗談でも言うべきではなかった。まさか、あんなに強い思いを抱いているとは思わなかった」


いつもは団長であり、殿下の護衛として堂々としているレーガが肩をすくめていた。


「彼女は本気ですね。そして、あなたの言葉を信じてる。これは全部、団長が蒔いた種だったというわけですか」


冷たい言い方かもしれないとは思ったが、ティニーは淡々と言った。


(ここで私が突き放せば、レーガ様は本心に従ってフィオナを選ぶかもしれない)


自分は傷つくことになるだろうが、自分の気持ちに嘘をつかれたまま一緒になるよりマシだと思えた。


「確かにオレが悪い。……今回、フィオナを連れてきたのは、王都で社交デビューさせるためだった。彼女に良い相手を見つけてやろうと。だが、あんなことを言い出してオレも驚いている」

「驚いている?」


ティニーは肩の力を抜いて、深くため息をついた。


「もう、なんて言ったらいいのか」

「すまない、ティニー」


彼は頭を下げた。しばし沈黙が落ちる。


「頭を上げてください。あなたは私の上司です」

「上司であると共に君の婚約者だ」

「今はそうですけれど……本当にそれでいいのですか?」

「……君はオレと結婚するのは嫌か?」


ものすごくストレートに尋ねてきた。レーガはぎこちなく視線をそらし、少し眉をひそめている。


「イヤ、じゃありませんでしたよ。率直に言って、理想的な方だと思いましたし。でも、いくら殿下の命令だからといって、意に沿わない結婚はするべきではないと思いました。ましてや、団長に本気のフィオナ嬢がいるんです」


ティニーはまっすぐレーガを見据えたまま、言葉を濁すことなく言い切った。


「フィオナは世間を知らないだけだ。出会いが増えれば、合う相手に恵まれるだろう。それに、オレにとって彼女は永遠に“妹”だ。でも、君は違う」


レーガは一瞬だけ迷いを見せたが、すぐにその瞳に決意の色を宿すと、静かにティニーの手をそっと取って包み込んだ。


「君は、誰とも比べられない存在だ」

「はあ……それはありがとうございます」


突然、手を握られたティニーは、思わずまばたきをした。


「これは、言うなと言われていたのだが、こうなったからには打ち明ける。実は、殿下に君の新しい結婚相手にしてほしいと望んだのはオレだ」

「へ!?」


思わぬ告白にティニーは目を見開いたまま固まった。意味を理解すると、心臓の鼓動が急に早くなったのを感じた。


「団長が私を望んだと聞こえましたが……聞き間違いですか?」

「聞き間違いではない。オレが殿下にぜひともオレを推してほしいとお願いしたのだ」


レーガは言い切ったあと、ティニーの反応を見て急に視線を泳がせた。耳のあたりがじわじわと赤く染まって頬も真っ赤だ。


「殿下に虐げられようともめげずに前向きで……なにより美しい君のそばにオレがいることができるならばと……」


言葉を探すように口元がもごもごと動き、いつもの冷静な団長の面影はどこにもなかった。


ティニーが思わずじっと見つめると、レーガはさらに顔を赤くして、ついには目をそらしてしまった。


(嘘でしょう……!?)


レーガが自分と婚約したのは、ヘンリーニからの命令だとばかり思っていたティニーは混乱していた。


「信じられません……」

「信じてくれ!殿下は、君を遠くに追いやりたいおつもりだったが、オレが懇願したせいでご自分の面子がたたないとお考えになったのだ。自分が退けたのに、君を望む者がいては具合が悪いと……だから、理由を言わずにいた」

「私は、団長が仕方なく私と婚約したと考えていました。優しくするのも命令だからと……」

「そんなわけない!」


レーガは勢いよく立ち上がると、迷いのない足取りでティニーの前に歩み寄り、肩をそっと抱き寄せた。彼の心臓の鼓動がはっきりと伝わってくる。


(ドキドキしている……こんなに真剣だったなんて)


ティニーは驚きと戸惑いの中で、ほんの少しだけ目を閉じた。


(すれ違っていた思いが解決したということなのかな……それにしても、ヘンリーニはやっぱり嫌な野郎だ)


胸の奥に残っていたわだかまりが、少しずつほどけていくのを感じた。

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