女性騎士に転身!その胸中で密かに燃える復讐の炎
ティニーはさっそく、計画に向けて行動を始めた。
まずは、長く伸ばしていた髪をバッサリと切った。
これは計画につながることだが、個人的にずっとやりたいことであった。
背中の中央まであった金色の髪は耳あたりまで切って男性のような髪型にする。鏡で見ると、なかなかいいじゃないかとニンマリした。
「これで髪の毛の手入れも楽になるぞ」
今まで髪の管理をしていたのはメイドたちなのだが。
ティニーは満足そうに頭を撫でていると、メイドが鎧を重そうに運んできた。
「おお鎧!さっそく私専用の鎧を用意してくれたのか!」
あの王子にしては気が利くじゃないか、と鼻歌を歌う。
「殿下の近衛と合わせるためだそうですが。……ティニー様、本当に騎士になられるのですか?」
「そうだよ。これからは口調もこうして素でいけるのだし楽だ」
「まあ、そんなことをおっしゃって……」
メイドが眉を上げて呆れた顔をする。気にせず鼻歌を続けながら、鎧を身に着けていった。
――ノックする音が聞こえた。
ヘンリーニとナリオーネがやってきた。
「お前に急ぎ鎧を用意してやったぞ……って、もう身につけたのか」
「はい。ピッタリです。ですが、もう少し軽いと動きやすいんですが」
ティニーは腕を振り回しながらその場でジャンプした。腕を振るたびに冷たい金属同士がぶつかり合って、ガチャガチャという音が響く。
「ガサツだな。……お前が私たちを守ると言ったんだ。きちんと役目を果たせ」
「分かっております」
「じゃあ、さっそくお庭まで付き添ってちょうだい」
ナリオーネがあごを上げながら偉そうに命じてきた。
(おお、ついに計画始動だ)
二人を護衛するほかの騎士に交じってティニーも庭まで同行する。
庭に踏み出すと、甘い花の香りが鼻をくすぐった。色とりどりの花々が風に揺れ、まるで絵画のように咲き誇っている。
意外にもナリオーネは花が本当に好きらしく、胸の前で手を組むと瞳を輝かせていた。騎士たちも息を呑み、美しい景色に見とれている。
ティニーは、周りを注意深く観察すると、レンガタイルの小道の破損部分に気づいた。ナリオーネの前にバッと進み出る。
「ナリオーネ様、危ない!少しお待ちください。これを除けましょう」
ティニーは、レンガが割れて散っていたものを素早く手で取り除いた。
「……あら、気が利くじゃない」
ナリオーネがちょっぴり感心したように言うと、ヘンリーニもちょっと意外そうに見ている。
「もちろんです!私はもうナリオーネ様の騎士なのですよ」
口元を微かに緩ませ言うと、ナリオーネが眉を上げ目を見開く。
「あなた……騎士の方が断然、向いていたわね。なぜ、殿下の婚約者に選ばれていたのか謎だわ」
「父上があのような命令をお出しにならなければ、ナリオーネとの仲も切り裂かれることもなかったのにな」
「でも、殿下が婚約破棄するほど私を愛してくれているのが分かりましたわ」
彼らは見つめ合っている。
(今のところはそのまま愛情を深めていろ。だが、ナリオーネは私が奪ってやるからな。ヘンリーニの野郎、絶望しやがれ!)
――実は、ティニーはナリオーネを骨抜きにするつもりでいる。
というのも……ティニーは自分が女性に異様にモテるということを自覚しているからだ。
辺境にいた時も定期的に女性に告白されていた。
だから、《ナリオーネを骨抜きにしてヘンリーニを悔しがらせる》ことが、ヘンリーニに最も効果的な復讐だと本気で考えている。
先日の騎士志願は、このためでもあった。
「ナリオーネ様、日傘の中にどうぞ!」
目論みのために、ティニーはナリオーネに献身的に尽くした。
そして、そんなことが3ヶ月も続いた結果――
「ティニー、どこにいるの?今日は街にお買い物に行きたいわ。付き合って!」
ナリオーネは城に来るなり、自然とティニーを探すようになっていた。
心を掴みかけ、胸の奥で復讐の炎はさらに燃え上がっていたティニーだった。




