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婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第2章 騎士たちの恋心、揺れる想いとすれ違いの予感

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16/22

心を許せる仲間にそっと涙を見せた夜

「なんで泣いているんだ?」


肩を掴まれた。


「なんか、あったのか?」

「……なんでもないよ。ちょっと目にゴミが入って染みたんだよ」

「お前、絶対ウソついてる。こっち来いよ」


ハンカチを渡され、連れて行かれたのはバルコニーだった。


「なんでこんな人の多い所に連れてくるんだよ」


泣き顔を見られたくないティニーは抗議する。


「端っこなら目立たない。むしろ、自分たちの世界に入っているから、ほかのことなんて気にしないさ」

「そういうものかな……」


半信半疑ながらついていくと確かに皆は2人の世界に入っていて、こちらなど見ていなかった。


隅の方に行くと、ギンスはティニーと向き合った。


「で、なにがあった?本当のことを言えよ」

「……あの後、団長と話していたらフィオナ嬢が割り込んできて言ったんだ。“私の元婚約者と何してるんだ”と」

「元婚約者だったのか、あの令嬢」

「そうみたい」


ティニーが視線を床に落とすと、ギンスが明るい声を出した。


「でもさ、過ぎた話だろ。今はお前が団長の婚約者なんだし、気にする必要ないじゃないか」

「本当にそう思うか?じゃあ、なんで団長は彼女を連れてきた?領地に戻って我に返ったんだよ。やっぱり女性らしいフィオナ嬢がいいって」

「……団長に確認したのか?」

「そこまでは聞いてない。けど、私との婚約は殿下の命令だと言っていた」

「命令……」


ギンスは眉をひそめ、少し目を伏せた。同情されたようだ。


「いいんだよ。私だって殿下から言われなければ、団長と婚約することもなかった。うまくいっている気もしていたけれど、気のせいだったよ」

「だったら、オレが……」

「手を放せ、ギンス」


冷たい声が響いた。振り返ると、いつの間に来たのかレーガがこちらを見ていた。


「団長、いつからそこに……」

「2人が一緒に歩いていく姿を見かけたから、急いで追いかけてきたんだ」


レーガの額には汗が光っていた。言葉どおり、急いできたのだろう。


「フィオナ嬢はどうしたんです?」

「彼女は部屋に戻らせた」

「そばにいなくていいんですか?」

「……どうしてそんなことを言うんだ」


レーガはわずかに眉を寄せ、困惑したようにティニーを見つめた。


「団長、このハンカチが見えますか?ティニーを何で泣かせるようなことをするんですか?」


ギンスが1歩前に出た。


「お前に言われる筋合いはない」

「泣いてるティニーを放っておけるわけがないでしょう。彼女は泣きながら外廊下を走っていましたよ。なんで、あの令嬢を連れて帰って来たんですか?配慮がなさすぎるでしょう?」

「だから、お前に言われて説明する筋合いはないと言っている。どけ、彼女に説明する」


レーガはギンスを押しのけると、ティニーの手を取った。


「……離して下さい。私、今、団長と話したくありません」

「ティニー!」


レーガの焦る声がしたが、ティニーは顔を背けた。


「説明させてくれ」

「今、混乱しているんです。……さっき、あんなことを言われて、私なりにショックを受けました。少し放っておいてもらえませんか。冷静になるまで」


下を向いたまま頑なに顔を上げないティニーに、レーガはしばらく迷っていたが、やがて重い決断をしたかのように、そっとその手を離した。


「混乱させてすまない。事情があるんだ。君が落ち着いたら改めて説明したい。いいだろうか?」

「……はい」


いくらか落ち着いて言うと、そっとレーガの手が頬に伸びてきた。


思わず手を振り払った。


「触らないで下さい……」


気配でレーガがショックを受けているのが分かった。


「すみません」

「……本当にすまない」


立ち去る前にレーガはギンスの方を向いてボソリとつぶやいた。


「今だけはティニーを頼む」

「分かりました」


レーガが完全に立ち去ると、ギンスがポンとティニーの肩を叩いた。


「もう、行ったぞ。顔を上げろよ」


顔を上げるとまた新しい涙が1つ、すーっと流れた。


「なんで、まだ泣くんだよ……」

「泣きたくないよ。勝手に出てくるんだよ」

「自分を傷つけたやつのために泣くなよ。時間がもったいない」


ギンスが、ティニーの金髪を優しく撫でた。

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