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婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第2章 騎士たちの恋心、揺れる想いとすれ違いの予感

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15/22

元婚約者の乱入で傷つけられた心

レーガは仁王立ちしていた。


「ギンス、さっさとティニーから離れろ!」


ギンスは立ち上がり、ティニーの手を取って起こした。


レーガが歩み寄る。


「団長、ようやく戻ってきましたね」

「それより、どうしてこうなっている?」


眉間にはシワが寄っていた。


「ティニーがオレと本気の勝負に挑みたいということで対戦していました」

「ずいぶんと膠着したみたいだな?」

「ティニーには危うくやられるところでしたよ」


ギンスが笑って言ったが、レーガはどこか棘のある声を出した。


「勝負は引き倒される前につけるものだ」


ティニーは自分の未熟さを指摘された気がしてドキリとした。


「もっと鍛錬します」


ティニーが言うと、レーガは渋い顔でうなずいた。


「ティニー、ちょっと話がある。残ってくれ」

「はい」


騎士仲間はなんだろうと興味深そうに見ていたが、大人しく引き上げていった。訓練場に2人きりになると、風の音が聞こえるぐらい静かになった。


「……元気にしていたか?」

「はい。レーガ様も元気そうで安心しました。ですが……」


あの令嬢のことを聞いていいものかと迷った。なんと言おうかと口をもごもごさせていると、レーガが口を開いた。


「会えなかった2ヶ月間、ギンスとだいぶ仲が良くなったのだな」

「……仲が良いと言えばそうでしょう。あいつは負けん気が強いですし、そういう意味では合いますから」

「む……。さきほど、ティニーがギンスに組み敷かれているのを見て、オレは平常心ではいられなかったが」


ムスッとした顔をされたので、さすがに嫉妬だとわかった。


「もしかして、嫉妬したんですか?」

「……答えるべくもないだろう」

「意外です」

「なんだって?」


令嬢を連れてきたことを差し置いて、嫉妬するなんて勝手だと思えた。


「あの連れて来た令嬢は……」

「レーガッ!!何してるのよ!」


こちらに猛烈な勢いで近寄ってきたのはフィオナだ。ドレス姿とは思えないほどの速さだった。


「ちょっとあなた!私の元婚約者と何してるのよ!」

「フィオナ!」


レーガが慌てて彼女を止めた。


「元婚約者?」

「あなたは知らないでしょうけれど、殿下があなたをレーガの婚約者に指名しなければ、私は今頃、レーガと結婚していたのよ!」

「え……?」

「ティニー、違うんだこれは!」


レーガが明らかに焦った表情を見せた。


「レーガ、なんで隠すのよ!本当のことでしょ!?」

「あれは事情があってのことだろう……」


彼らの言い合いに、自分の知らないなにかがあったのだろうと思った。


「……あの、何だか知りませんが、私との婚約は乗り気ではなかったということですよね。殿下の命だから仕方なかったと」

「殿下の命ではあったのは間違いないが……」

「もう聞きたくないです。わかってますから。失礼します!」


“殿下の命であった”その言葉だけで充分だった。ティニーは踵を返すと、訓練場を駆け出した。


(私はなにを期待したんだろう……)


自分好みの男性に少し良くされて浮かれた自分に腹が立った。


きっと、レーガはドラゴン退治の任務で領地に戻り、フィオナに再会してふと我に返ったのだろう。


“なんで犠牲にならなくてはいけないのだ”と。


(私だって、このままの自分でいいという人と結婚したいよ……!)


ティニーは外廊下を駆けながら痛む胸を抑えた。


「ティニー……?なんで、泣いてる?」

「……ギンス」


誰かにぶつかったと思ったら、ギンスだった。


彼と目が合ったティニーは涙がポロポロとこぼれた。

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