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婚約破棄なんて簡単に言うな!ホントは嬉しいけど、復讐させてもらいます!─女騎士になったとある令嬢の物語─  作者: 大井町 鶴(おおいまち つる)
✦ 第2章 騎士たちの恋心、揺れる想いとすれ違いの予感

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14/22

勝手に暴露したギンスと、忖度ナシの一本勝負

サラシを巻き直し、急いで宮殿に戻ったティニーの髪は走ったせいですっかり乾いていた。


「まずいまずい……」


お茶会の部屋に辿り着くと、すでにヘンリーニとナリオーネが席について和やかなお茶タイムを楽しんでいた。


「すみません!遅れました!」


頭を勢いよく下げると、ヘンリーニが嫌味を言った。


「遅れるなら、来なくていいのだがな」

「そんな意地悪なことを言わないでくださいませ。ティニーは汗を流してから来てくれたのよね?」


ナリオーネがフォローしてくれた。


彼女にニッコリと微笑むと、ヘンリーニに睨まれた。


「お前の席は無いぞ。遅れたのだからな」

「そんなのダメ!」


ヘンリーニたちが言い合っていると、窓際で控えていたギンスが口を開いた。


「恐れながら……彼女は大事なことを忘れていたがために、かなり遅れたのです」

「なんだそれは?」

「それは……彼女の身だしなみですね」

「身だしなみ?わからん。ハッキリと言え」

「……彼女はサラシを忘れて戻ってきたのです」


ヘンリーニは思わずティニーの胸元を見た。


ティニーは自分の胸に視線を感じて、気まずくなり思わず視線を逸らす。


「……コホン。ならば仕方ない」

「ヘンリーニ様ったら配慮がないですわね」


ナリオーネはプンプンしながら彼の甲をつねった。


「痛いっ」

「女性の胸を見たのですもの、当然ですわ」

「すまない。そういうつもりじゃないんだ」

「ぷんぷん」

「ナリオーネ~」


お茶会はヘンリーニがナリオーネの機嫌をひたすらとる時間となった。


結局、ヘンリーニがナリオーネのために新しいドレスを贈ることでようやく機嫌が直り、お茶会もお開きとなった。


当番制の護衛を務めるギンスもヘンリーニたちについて部屋を出ようとしたところで、ティニーはギンスに密かに蹴りを入れた。


(このっ、勝手にサラシのことを話すなんてひどいぞ)


ギンスは一瞬、顔をしかめたが何事もなかったようにすまして出て行った。


――翌日、ティニーはメイと訓練場で模擬の剣と槍を使った稽古をしていた。


「ダリャアッ~!!」

「もっとふんばってから切り込む!」


熱血指導をしていると、ギンスが近づいて来た。


「ティニー」

「なんだよ?私は今、忙しいんだ」

「話したいことがあるんだ」

「なにを?」


ギンスが突然頭を下げたので、ティニーだけでなく周囲の女性騎士たちも目を見開いた。


「昨日は勝手にあんなことを話してすまない。お前が理不尽に怒られていたからつい……配慮が足りなかった」

「……ああ、そのことか。お前のスネを蹴ってやったしもういいさ。お前は私を庇ってくれたのだし」


ティニーが笑顔を見せると、ギンスもほっとした表情を浮かべた。


「……あのさ、お前、完全復活したオレと戦いたいって言ったよな?怪我が治ったから対戦してみないか?」

「お。忖度してわざと負けるのはナシだぞ?」


ティニーが壁に立てかけてあった模擬用の槍を手に取ると、周囲の騎士たちが期待と興奮の声をあげた。


「ティニー様!ギンス様なんかやっつけちゃって!」

「いつも生意気なことばかり言ってるんですから、今こそ懲らしめるチャンスです!」

「ギンス、負けるなよ~。男の意地を見せてやれ!」


女性騎士たちの黄色い声援が響くと同時に、男性騎士たちはヤジを飛ばしている。


ティニーが槍を構えると、ギンスも剣を縦に構えた。


一瞬、睨み合う。


先に攻撃に出たのはギンスだった。


剣を柄で振り払うと、剣を斜めに構えたギンスが次の一手を繰り出してきた。


(確かに、いつもより動きが早いかも)


ティニーは再び突っ込んで来たギンスを前に、とっさに地面を蹴った。


姑息だが、舞い上がった砂でギンスの視界を奪う。


ギンスが足を止めた。


(今だ!)


ティニーは一気に距離を詰めると、槍でギンスを突き倒した。


そのまま馬乗りになって、槍の柄でギンスの首もとを締め上げた。


「どうだ?負けを認めろよ」

「ぐぅ……」


ギリギリと槍の柄で締め上げると、ギンスが苦しそうに呻く。


「負けるのは別に恥ずかしいことじゃ……」


ギンスが槍の柄を掴むと体を反転させた。形勢逆転だ。ティニーの上にギンスが覆い被さるかたちになった。


「勝ったと思って油断したな!」

「うぅ……」

「お前こそ負けを認めろよ」

「……いやだね」


そうは言ったものの、両手も抑えられてしまって万事休すだ。


「認めろって」


ギンスの赤茶色のカールした髪の毛が顔に触れてくる。ティニーは頭突きしようとしたが、彼はヒョイと避けた。


「お前は女だよ。男のオレに力では勝てない」

「は?」


(なんで、わざわざそんなことを言うんだ?)


追い詰められながらもティニーの頭に疑問が浮かんだ。


その時、ティニーは視線を感じた。


「そこまでだ!いつまでそうしている!」


訓練場の入り口には、険しい表情のレーガが立っていた。

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