第九百二十五話
「ふっ、遅いわっ!」
二十六階層、デンシカの雷撃を余裕で躱す素戔嗚命様。次の雷撃が来る前に接近して突きか蹴りの一撃で仕留めている。
実際手足はデンシカに届いておらず、纏った神気が触れた時点で魔石や角に変化していた。素戔嗚命様は躱すという動作が入っただけでも楽しめているようだ。
デンシカの角は需要がある。需要があるどころか増していく一方だ。これから皇居ダンジョンと大宮ダンジョンから産出される量が増えると思うが、数本でもあった方が有難い。
リザードマンは特筆する事もなくスルーされた。肉体派ではあるものの、力と耐久力はブロンズゴーレムに劣り、素早さはデンシカに劣る。素戔嗚命様としてはさして面白くない獲物だったようだ。
そして二十八階層。鉄カブトは素戔嗚命様の期待に応える働きを見せてくれた。何と、一撃とはいえ素戔嗚命様の神気に耐えてみせたのだ。
鉄カブトの角を左腕で受ける素戔嗚命様。これまでのモンスターならばこの時点で魔石に変化していたのだが、鉄カブトはその姿を保っていた。
しかし素戔嗚命様の右回し蹴りには耐える事が出来ず、呆気なく魔石に変化した。それでも一撃に耐えたのは称賛に値する快挙だと思う。
「モンスターは階層を進めば本当に強くなっているのだな。これならば・・・ダメであったか」
「素戔嗚命様、鉄カブトも辛うじて耐えられたに過ぎませぬ。制御を緩めればこうなるのは自明の理かと」
自身の神気に触れても即座に倒れなかった鉄カブトに気を良くした素戔嗚命様は、神気の抑制を少しだけ緩められたのだ。ギリギリ耐えられていた鉄カブトがそれに耐えられる筈もなく、次に現れた鉄カブトは素戔嗚命様に触れただけで魔石に変化した。
「折角のダンジョンなのだ。何の制限も無しに暴れてみたいではないか」
「素戔嗚命様が本気で神気を発せられますと、この身も危なくなってしまうのですが・・・」
素戔嗚命様に反論するなど畏れ多い所業だが、掛け値無しで生死に直結する問題なので言上させてもらった。
「・・・善処する故心配いたすな」
心配するなと言われましても、心配しか無いのですが!などと言える筈もなく、鉄カブトを見つけては突進していく素戔嗚命様を追いかけつつ転がっている魔石を拾っていく。
鉄カブトを殲滅した素戔嗚命様は笑顔で二十九階層に進んで行く。二十八階層中を走り回った為、ご自分で二十九階層への渦は発見なされていた。
実は階層全体を回った為、幾つかの宝箱を発見していたりする。しかし素戔嗚命様は鉄カブト退治に夢中で宝箱など眼中に無いのだ。
続く俺は宝箱を開けていたら素戔嗚命様に置いていかれてしまう為、これまたスルーするしかなかったのである。
尚、途中夕食の時間になっていたがテンションアゲアゲの素戔嗚命様がそれを気にする筈もない。俺も夕食抜きで走っている。
ついでに言うと、現在時刻は地上では真夜中と言っていい時間になっている。しかしダンジョンに夜はない為素戔嗚命様は止まらない。
次のモンスターは朱カブト。素戔嗚命様のテンションは上がったままになりそうだ。徹夜はほぼ確定だが、まあ何とかなるかな。




