第九百二十三話
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁぁ!」
皆さんこんにちは。現在、ダンジョンのモンスターに心から同情するという奇妙奇天烈な感覚を味わっている玉藻です。
「牛で少しは歯応えが出たかと思ったが、また軟弱な奴ばかりではないか!」
現在十四階層。昼食後の十一階層で突撃牛の突進を受け止めた素戔嗚命様は嬉しそうにしていた。それまでのモンスターに無い攻撃力を気に入られたようだった。
突撃を受け止めた時点で神気により消滅してしまうのだが、角を掴んだ素戔嗚命様に突進の衝撃を伝播させるという偉業を成し遂げたのである。
素戔嗚命様にとっては取るに足らない小さな振動。しかし、ここに来て初めてモンスターが素戔嗚命様に影響を与えたのだ。その事実に対して素戔嗚命様が抱いた期待は大きかったようだ。
だがその後は火鷹にコボルド、跳び百足と攻撃力や体力よりも魔力や素早さによる攻撃を行うモンスターが続いた。
跳び百足は身体も大きいしフィジカルも悪くないのだが、主戦法は巻き付きであり素戔嗚命様がお気に召す戦い方とは外れている。
その為か素戔嗚命様は少々苛立っているご様子で、神気の抑えが少々甘くなっているようだった。強くなった神気により跳び百足は触れる事なく消滅する羽目になっている。
それがまた素戔嗚命様の勘気に触れたようで、素戔嗚命様は跳び百足を探して走り回り只管狩りまくるという事に。
跳び百足君には何の過失もない。しかし、巡り合わせが悪かったのだ。俺には素戔嗚命様を止める手立てなど持ち合わせていないのだよ。
「玉藻殿、もう少しやり甲斐のあるモンスターは出て来ぬのか?」
「十七階層のゴーレムならばこ奴らよりはかなりマシかと思われます」
「よし、十七階層まで進むぞ。先導を頼む」
かつて八咫烏は神武天皇を熊野から大和まで導いたが、俺は素戔嗚命様を十四階層から十七階層まで導くお役目を頂いた。これ、後に伝説や神話になったりしないよね。
「これまでよりはマシじゃが、ちと物足りぬ。もう少し何とかならぬのか?」
「ダンジョンはまだ半ばにも達しておりませぬ。二十階層にはこのゴーレムの上位種も居ります故、歯応えが出るのはこれからかと存じます」
「そうか、それは楽しみだ。ならば遊ぶのは進んでからの方が良かろうな」
ゴーレムの正拳突きを掌で止めた素戔嗚命様は、また御不満のご様子であった。なので二十階層に上位種が居る事実を奏上したのだが、ブロンズゴーレムでも素戔嗚命様様のお眼鏡に叶うかどうか。
まあ、最悪でもストーンゴーレムや岩山亀ならば素戔嗚命様も満足されると思うけど・・・それでも不足と仰られたらどうしようかね。
「何をしておる玉藻殿、次の階層まで案内せい」
「はっ、失礼を致しました。あちらに御座います」
今は思考に耽っている場合ではない。素戔嗚命様を案内する事に集中しないとね。おっと、魔石も忘れずに回収せねば。お仕事、お仕事。




