第九百二十一話
「ダンジョンに潜っている者はおらぬのじゃな?」
「はっ、誰も潜っておりませぬ」
ダンジョンの入り口を固めていた先輩方に念の為確認した。万が一情報部の目を掻い潜って潜入している者が居た場合、そいつの今世はここで終わるだろう。
それだけではなく、そいつには未来永劫来世はやって来ない。そうなっても違法に侵入した報いなので諦めてもらおう。
「ではギルドの入り口まで退避するのじゃ。皇居ダンジョンや大宮ダンジョンで神々が顕現なされた時は地上に影響は無かったようじゃが、あれはダンジョンの最奥じゃった。この一階層で顕現なされた場合の影響は予測出来ぬ」
それに舞やアーシャといった人間が迷い家に居たので神気を抑えてくれていた筈だ。今回は俺以外居ないと伝えているのでそんな配慮はなさらないと思う。
先輩方の敬礼に見送られダンジョンに入る。念の為二階層への渦近くまで行ってから迷い家を開く。そのまま社に向かい宇迦之御魂神様に報告する。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。準備が整いまして御座います」
『始終は見ておった故構わぬ。あのマスコミという連中、少々無礼が過ぎるのではないかえ?』
「あの者たちは自分達を特権階級だと信じています故」
報道の自由があるから、臣民の知る権利を守らねばならないから。そう大義名分を掲げて他者の権利を阻害し侵す。
『ふむ、父上の実験の結果次第じゃが、試してみたき事がある。そなたにも協力してほしいのじゃが』
「妾に否やはありませぬ。宇迦之御魂神様の御心のままに」
宇迦之御魂神様が何を試したいのかは知らないが、俺は御意に従うまでだ。
『して、儂は何時まで待たされるのだ?』
『済まなんだ父上。あれは流石に黙っておれぬ態度であったでな』
『そこは同感じゃな。では参る』
宇迦之御魂神様の所で待っていたらしい素戔嗚命様が痺れを切らして催促してきた。次の瞬間、大宮氷川神社の神域で感じていた強い神気が俺を襲う。
「迷い家の外はダンジョンなのじゃな」
「御意、水中村ダンジョンの一階層に御座います。二階層への渦のすぐ近くになります」
「それは重畳。では早速戦い・・・いや、検証をするとしようぞ」
嬉しそうに迷い家の出口に向かう素戔嗚命様。俺もそれに従いついて行く。初っ端から戦意を隠せていないけど、神気全開で暴れてダンジョン崩壊させたりしないですよね?
一応崩壊しても大丈夫なように手は打ってあるけど、出来ればダンジョンは残しておいてほしい。
「弱い、弱すぎるぞ!」
「素戔嗚命様、モンスターとはいえ所詮は一階層雑魚に御座います。深い階層まで潜れば強き者もおります故に」
嬉々として付近の突撃豚を倒しまくる素戔嗚命様。神気がダダ漏れだけど、外に影響出てなければ良いな。
「玉藻殿、こいつらではつまらぬ。次に行くぞ!」
「はっ、すぐに参りまする」
すぐに倒れてしまう突撃豚に不満げの素戔嗚命様。ゴーレムとかの体力自慢でも瞬殺されるだろうし、暫く素戔嗚命様の欲求不満は続きそうだな。




